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海をたずねて -地球とわたしたち-

第15回 暮らしの目で黒潮を観測

海流予測

海水は、決まった方向に流れています。これを海流といい、海沿いの気候や漁業などに影響をおよぼします。どんなしくみで水の流れが起こるのでしょう? また、海流を知り予測できるようになると、わたしたちの生活に、どう役立つのでしょうか。今回は、海流について見てみましょう。

まわりの海水よりも高温の暖流は沿岸をあたため、水温がひくい寒流は沿岸をひやします(図を拡大
イラスト・たなかさゆり


繰り返される「大蛇行」 気候や漁業などに影響

海水の流れには二種類あります。海の浅いところ(表層)で風の力で起こるものと、深いところ(深層)で水温と塩分の割合によって水がわきあがったりしずみこんだりするものです。ここでは表層の流れを見ていきます。

表層の流れのひとつに、日本列島の太平洋側を流れる黒潮があります。この黒潮は、北太平洋を時計回りに回る流れ(亜熱帯循環)の西側の一部です。偏西風の影響を受けて太平洋北側で西から東に流れ、南側では貿易風の影響で東から西に流れています。この風の力と、地球の自転の力(コリオリの力)が働き、楕円形(つぶれた円形)の循環ができるのです。

海流のしくみ

北太平洋の北側の偏西風、南側の貿易風の影響で海水は中央の集まろうとします。中央の海水は外側に流れ出そうとしますが、地球の自転の力「コリオリの力」に直角に曲げられ、大きな時計回りの循環になります。 (図を拡大

コリオリの力(北半球の場合)

回転している円盤上にいる人が、A地点にまっすぐ行こうとしても、回転によって実際にはB地点についてしまいます。A地点からB地点の方に、進行方向右向きにそらす力が働いたようにも見え、この力をコリオリの力といいます。


この黒潮は2004年、春に直進していた流れが夏には大きく南に蛇行しました。「黒潮大蛇行」は以前からくり返していると考えられ、約150年前に初めて観測されました。黒潮は蛇行しやすい時期と、しにくい時期が、約20年の周期で交互にやってくると考えられています。

2004年の黒潮大蛇行

西から東へと、南への蛇行をしめす半円形が異動していきます(黒:1月、黄:3月、オレンジ:5月、紫:8月、赤:10月)(図を拡大



大蛇行が起こると海水の流れがかわるため、水位が上昇し、満潮時に浸水被害にあう地域が出てきたり、魚の種類によってはとれる量が大きく変化したりするなど、人々の暮らしに大きくかかわってきます。

そのため01年から、黒潮の流れを予測する実験が始まっています。予測は、海がどう変化し、どんな現象を起こすかといった法則をもとにしたプログラムに、海のさまざまな観測データを入れて計算します。人工衛星の発達や、「アルゴフロート」という観測装置を用いた国際的なプロジェクトなどで観測データがそろってきたこと、コンピューターの進歩でたくさんのデータを処理できるようになったことなどで、海流予測が可能になりました。

現在、黒潮を2か月先まで予測できます。また、海流予測で、黄海で発見されたエチゼンクラゲのむれが日本海に到着する時期や、沿岸に流れ着く流木の出身地などの目安をつけられるようになりました。今後はより正確な予測、また、漁業や海運業、レジャーへの応用など、より生活に役に立つ予測をめざし、研究が進められています。

海流予測例

2004年の黒潮大蛇行を予測した例です。6月時点で約50日後を予測したところ、実際の観測値とおおむね同じ結果をえました(図を拡大



エチゼンクラゲの漂流予測

2006年7月にエチゼンクラゲを黄海で発見。1ヶ月後にはどこまできているか予測しました(中央水産庁の小松幸生研究員提供)。クラゲが多いと思われる順に紺、青、緑、赤であらわしています(紺がもっとも多い)(図を拡大


エチゼンクラゲ

かさの直径が2メートルにもなる大型のクラゲ。魚網(ぎょもう)に入りこんで網をやぶったり魚の体を傷つけたりします。大発生して、日本海沿岸の漁業に大きな被害をおよぼすことがあります。

アルゴフロート

水温、塩分濃度、圧力センサーを搭載しています。 水深2000メートルまでしずみ、10日~2週間おきに、データを集めながら自動的に浮上し、データを人工衛星に送ったらまたしずみます


※このページの内容は、2006年10月19日に朝日小学生新聞に掲載された記事の抜粋です。内容は、掲載当時のものであり、現在の状況とは異なる場合もありますので、あらかじめご了承ください。