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海をたずねて -地球とわたしたち-

第16回 海水温の変化が大気に影響

異常気象

大雨や強風などによって、人々のくらしが大ダメージを受けることがあります。これらの異常気象は、海水温の異常が原因のひとつです。気象災害の影響をなるべく小さくするため、異常気象のしくみを知り、予測する取り組みがつづけられています。

発生の仕組み解明 予測への努力続く

大雨や強風のほか、干ばつや冷夏など、ふつうとは大きくちがう現象のことを、異常気象とよんでいます。人が、一生で数回しか経験しないほどめずらしい現象をいい、気象庁では、「ある場所(地域)で30年に1回程度発生する現象」としています。

異常気象は、どんな原因で起こるのでしょうか。地球をてらす太陽活動の変化、火山噴火の煙で地球がおおわれる日傘効果、人間活動による温室効果などとともに、海水温の異常による大気の変化も原因のひとつにあげられています。

世界のおもな気象災害分布

(1998~2004年)大雨・台風・ハリケーン(緑)、干ばつ・森林火災(黄)、熱波(赤)、寒波(青)でしめています。報道などの情報をもとに気象庁が作成しました。(図を拡大


この海水温の異常で、よく知られているのがエルニーニョ現象です。南アメリカ・ペルー沖の熱帯太平洋を中心とする海の水温が高くなります。

エルニーニョが発生すると、雲のできやすい場所の位置がかわるなど大気の流れにずれができ、そのずれがつたわって地球上の大気の流れがかわることで、世界中あちこちで異常気象になってしまいます。日本では梅雨明けがおそくなったり、豪雨がふったり、冷夏や暖冬になったりします。1997~98年の20世紀最大のエルニーニョ現象のときは、インドネシアやオーストラリアで雨が少なく、一方、北アメリカには大雨をふらせました。

エルニーニョの発生を予測するために、JAMSTECは熱帯太平洋を観測しています。「トライトンブイ」という装置を海にうかべ、海上の気象と海水温などのデータをとっています。このデータは人工衛星を通じて世界中の研究者たちに送られるしくみです。こうした取り組みで、エルニーニョの予測ができるようになってきました。

ふだんの年

東からふく貿易風によって、赤道上のあたたかい海水がたまります。(暖水プール)

 

エルニーニョ発生時

貿易風が弱まると、西側にたまっていた暖水が東向きに動き出して東太平洋の水温がふだんの年より高くなります。(図を拡大


ところが、熱帯太平洋の観測だけでは、日本の異常気象を予測できないことがわかりました。

94年夏、日本をふくむ東アジアはたいへんな猛暑となりました。このとき、熱帯太平洋はふだんの年とかわりはありませんでした。

原因は何か、研究を進めるうちに、インド洋の西部で海水温が異常に高くなっていることがわかりました。これは「ダイポールモード現象」とよばれ、インド洋東部では干ばつ、インドからアフリカ東部では雨をたくさんふらせるなど、エルニーニョ現象と同じように、世界各地の気候に大きな影響をおよぼすこともわかりました。

JAMSTECはトライトンブイをインド洋にも設置し、ダイポールモード現象のしくみを解明しようとしています。2006年、世界で初めて、この現象の予測に成功しました。

トライトンブイ

風速、気温、湿度などの海上の気象と、海水温、塩分濃度、海流の流向・流速などを観測します。海洋地球研究船「みらい」 =写真奥=によって設置され、4トンのおもりで海底からつなぎとめられています(写真を拡大


エルニーニョやダイポールモードの予測で、猛暑や冷夏などの予報が正確になります。また、農業がさかんな国にとっては、降水量予測は農業政策を決める上でたいへん参考になります。そうした国際貢献も、海を知ることで可能になるかもしれません。

ダイポールモード現象 予測成功

 インド洋の東部の海水がつめたく、西部があたたかくなるダイポールモード現象の予測に、JAMSTECの研究チームが世界で初めて成功しました。スーパーコンピューター「地球シミュレータ」を使い、2005年11月の時点で、2006年夏に発生すると予測し、的中させました=図。
 
 ダイポールモード現象は、インド洋東部で南東の風が強まるのをきっかけに起こります。表面のあたたかい海水が、風で西によせられます。JAMSTECが1999年に発見しました。西日本や朝鮮半島で猛暑、中国や東アフリカで洪水をもたらすことが明らかになっています。5~6月に発生、10月ごろにはっきりとあらわれ、冬にはおさまります。60年からこれまで、10回起きました。
 研究チームは2005年11月、人工衛星ではかった海水温のデータをもとに計算し、インド洋の東西の海水の温度差が、2006年5月からふえ始め、10月には1度をこえるなどと予測。実際の観測で、2006年春から、この現象がみられました。2006年の夏は西日本で猛暑でしたが、その原因のひとつでもあると考えられます。

※このページの内容は、2006年11月2日に朝日小学生新聞に掲載された記事の抜粋です。内容は、掲載当時のものであり、現在の状況とは異なる場合もありますので、あらかじめご了承ください。