海をたずねて -地球とわたしたち-

第20回 「ちきゅう」が初の掘削試験

2006年のJAMSTEC

2006年JAMSTECは、深海の地下深くで、北極で、海底火山で、海と地球についてさまざまな研究をしてきました。掘削試験が始まった地球深部探査船「ちきゅう」を中心に、活動をふり返ってみましょう。

(※このページの内容は、2006年12月28日に朝日小学生新聞に掲載されものです。内容は、掲載当時のものであり、現在の状況とは異なる場合もありますので、あらかじめご了承ください。)

基本性能を確認 目的はほぼ達成

○2006年のちきゅう

「ちきゅう」は、初の掘削(ほって穴をあけること)試験を行いました。8月上旬〜10月中旬にかけて、青森県・下北半島東方沖(水深約1200メートル)で、海底下約2200メートルをめざし、作業は進められました。

ほり進んでいる途中に嵐におそわれ、掘削は海底下647メートルまででストップしました。しかし、秒速30メートルをこえる風の中、海上で「ちきゅう」の位置をたもつシステムが十分に役割をはたすなどして基本性能が確認され、試験の目的はおおむね達成できました。

その後「ちきゅう」は、掘削の経験をつむために日本をはなれました。約一か月かけてアフリカ・ケニア沖に到着し、現在は掘削試験のさなかにあります。

地球深部探査船「ちきゅう」

青森県・下北半島沖で掘削のテストをしました

掘削試験開始

船体の中央にある海への開口部(幅12メートル、長さ22メートル)を通って、掘削装置などが海底に向かいます。

海底下からコアを採取

海底下をほり進み、全長365メートル分のコアを採取しました。もっとも深い部分は、約65万年前のものと推定


○2006年のJAMSTEC

▽1月 新種の生物を採集 
相模湾の水深約900メートルにしずめられたマッコウクジラの骨に、新種のゴカイの仲間が大量にくっついていることが、無人探査機「ハイパードルフィン」の調査でわかりました。また、2月に、硫化鉄のうろこを持った巻き貝「スケーリーフット」を、有人潜水調査船「しんかい6500」によってインド洋の深海底から持ち帰り、水槽飼育することに成功しました。

▽4月 北極海で世界初のリアルタイム観測 
北極点付近の多年氷域(夏でも氷のとけない地域)に、新しい氷海用観測システムを設置し、いつでも観測データがえられるようになりました。

▽7月 泥火山の噴出口の画像化に成功 
深海巡航探査機「うらしま」で三重県沖の海底の泥火山(水深約2000メートル)を調査し、噴出口付近の状況が細かいところまでわかりました。

▽10月 インド洋のダイポールモード現象を予測 
インド洋の海水温の異常により、干ばつあるいは洪水をもたらす「インド洋ダイポールモード現象」が、2005年11月の時点で、2006年秋に発生すると予測。10月に入り、人工衛星の観測で海水温の異常などがとらえられ、予測が的中したことがわかりました。

相模湾で発見された新種の生物

ゾンビワームと呼ばれるゴカイの仲間。クジラの骨にくっついてくらしています(JAMSTECの藤原義弘さん撮影)

スケイリーフット

インド洋の深海から持ち帰りました。硫化鉄のうろこを持つ生物です


「ちきゅう」が、掘削試験を開始。2007年は、南海トラフの掘削調査にいどみ、地球内部の構造などを明らかにしようとする統合国際深海掘削計画(IODP)に、日本代表として参加します。

2006年は研究をつづけてきた成果が実ることも多く、このほかにも、太平洋西部のマリアナ海底火山の噴火の確認や、沖縄の深海で二酸化炭素のプールを発見したことなどを発表しました。

二酸化炭素プール

沖縄の海で二酸化炭素がわきだしているのが発見されました(矢印の部分)。海底表層に液体の二酸化炭素がプールのように存在していることもわかりました。温室効果ガスである二酸化炭素を、海の中に保存する研究に役立てられそうです。

泥火山

深海巡航探査機「うらしま」=写真下=がとらえました。中央に噴出孔らしきものが見えます。「うらしま」は、あらかじめ設定されたコースを自動で進む無人探査機で危険な場所でも調査することができます。


海のモンスター・ダイオウイカ

 深海にすむ巨大な生物、イカ類最大級のダイオウイカを釣り上げ、ビデオ撮影に成功したと、国立科学博物館の研究者、窪寺恒己さんが発表しました。12月4日、小笠原諸島近海で仕掛け針をしずめたところ、水深640メートルの深海でダイオウイカがかかりました。引きあげようとすると、海面で抵抗してあばれました。そのようすを撮影しました。
 ダイオウイカについては情報が少なく、これまでにわかっているところでは、日本やアメリカ、ノルウェーなど世界の海にすみ、大きさは頭から足の先まで18メートルにもなり、体重は1トン近くです。目はとても大きく長径25センチもあり、動物界で最大の目といわれています。大きいだけでなく視力もすぐれ、発光生物の微妙な光が見つけられます。頭も良く、高度な行動がとれるようです。

ダイオウイカの模型
 イカですので腕が8本、そして2本の触手があります。触手には吸盤がついていて、のびちぢみして上手に餌をとります。
 窪寺さんは、生きているダイオウイカを、深海で初めて撮影したことでも知られます。2004年9月下旬、小笠原諸島沖、水深900メートルに、イカとすりつぶしたエビ入りのバッグをつり下げたところ、全長8メートルのダイオウイカがかかりました。このようすを自動カメラで撮影しました。
 深海にいる自然の姿のダイオウイカの撮影は、それまで長い間、アメリカのスミソニアン研究所をはじめ世界中の研究者やテレビ局などがねらっていました。ついに窪寺さんが成功したことで、日本の研究者は世界中から高く評価されました。

※このページの内容は、2006年12月28日に朝日小学生新聞に掲載された記事の抜粋です。内容は、掲載当時のものであり、現在の状況とは異なる場合もありますので、あらかじめご了承ください。