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海をたずねて -地球とわたしたち-

第24回 海底下6000メートルへ本番間近

「ちきゅう」への期待(1)

地球深部探査船「ちきゅう」の活動は2007年秋から、いよいよ本番をむかえます。数か月かけて、海底下約6000メートルまでほり進む航海です。この間、乗組員はどんな生活を送るのでしょうか。乗船が決まっているJAMSTECのふたりに、仕事のようすや「ちきゅう」にかける期待を聞きました。


すべて英語のミーティング

難波康広(なんばやすひろ)さん 地球深部探査センター

難波康広さんは船の専門家として、2006年8月上旬から10月下旬まで青森県・下北半島沖で行われた試験掘削に立ち会いました。試験では、機器がきちんと動くか、海底下をほり進むのに必要な作業ができるか、などが確認されました。

機器の動作の確認

機器の取り外し作業現場(写真中央が難波さん)


「乗組員は、ノルウェー、オランダ、イギリスなど、いろんな国の人がいました。その日の作業の確認など、1日に何度もミーティングをしますが、すべて英語を使います。これがたいへんでしたね」と難波さん。

試験のとちゅう、秒速30メートルをこえる暴風にあいました。掘削をやめていったん避難しましたが、海底までのびている掘削装置を切りはなす必要があり、担当の技術者は、船の動きをみながら慎重にタイミングをはかっていたそうです。

そんな航海中の楽しみのひとつは、食事だったといいます。好きなものをとって食べるバイキング形式。食材は定期的に補充されたそうです。また「ちきゅう」には、スポーツジムや映画室もあり、乗組員は休み時間を楽しみました。

食事

仕事の合間の楽しみのひとつ。「ちきゅう」はふだんほとんどゆれがないため、人形などもかざれます(写真は難波さん)


ミーティング

ヘリコプターデッキのそばの部屋でのミーティング。乗組員はいろんな国の人がいます。


難波さんは、2007年9月からの航海にも参加します。「海底の下は深くなればなるほど、圧力や温度が高くなり条件がきびしくなるので、ほるのも大変です。1日に数十メートルしか進まなくなります」とむずかしさを話します。それを乗りこえ、ほった穴を利用した地震観測のシステムなど、「ちきゅう」ならではの成果に期待しているといいます。

「ちきゅう」の計画

日本とアメリカが中心となって進める「統合国際深海掘削計画(IODP)」は、地球環境のうつりかわりや地球の内部構造、海底深くにすむ生物などを調査するものです。
「ちきゅう」は、この計画のひとつとして、2007年9月から紀伊半島沖の海底をほり進み、巨大地震発生のしくみを明らかにしようとしています


断層がすべる仕組みを探る

氏家恒太郎(うじいえこうたろう)さん 地球内部変動研究センター

「ちきゅう」への乗船が決まった氏家恒太郎さんは、巨大地震発生時に、断層がすべるしくみを明らかにしたいと考えています。「地震が放出するエネルギーは、地震波として遠くまでつたわるもの、地層内部で岩石を破壊するもの、熱にかわるものなどに分けられ、ほとんどは熱にかわると考えられています」。熱で地層にふくまれる水が温められてふくらみ、その水の上にのっている断層がういたかたちになってすべったり、熱により地層がとけることですべったりするのではと予想しているそうです。

氏家さんは7年前、アメリカの「ジョイデス・レゾリューション号」に乗って、四国沖の掘削計画に参加したことがあります。約2か月の航海中、もっとも深いもので海底下1000メートル弱まで地層をほり出したそうです。研究者は個人の研究目標を持って乗船しますが、掘削してほり出した地層(コア)が、どういう石でできているか、すき間はどれくらいか、熱のつたわり具合はなど、役割分担して記録をのこすそうです。「六地点でコアがとれましたが、一地点掘削が終わるごとに報告会があり、研究者たちが発表し合いました」

研究者の仕事(1)

掘り出した地層(コア)のデータを記録する氏家さん(写真右)

研究者の仕事(2)

研究者は各自でテーマを持って乗船します。そのテーマにあった部分をコアから切り出し、持ち帰って研究します


いろんな国の研究者が参加していました。コアを対象に研究するといっても、地震だったり微生物だったりと専門分野はそれぞれちがいます。「外国人や、専門分野のちがう人とアイデアをぶつけ合うと、いろんな見方があるんだなと、視野が広がってくるのがいいところです」と氏家さん。長い友だちになった人もいるそうで、そういった経験からも「ちきゅう」への乗船を楽しみにしているといいます。

今回「ちきゅう」がめざす海底下6000メートルは、地震がよく発生する「地震が生きている世界」。氏家さんは「いままさに地震が起こっているという地帯を調べることで、また見方もかわるのではないでしょうか」。

試験掘削中に嵐が

「ちきゅう」中央部の掘削装置が通る海への開口部。普段の海(写真上)と、嵐の海(写真下)では水面の様子がまるでちがいます。

コアの保存

コアは堀り出したときは円柱形です。それを半分にわって片方は研究につかい、もう片方は保存しておきます(写真は高知コアセンター内のコア冷蔵保管庫)


※このページの内容は、2007年2月22日に朝日小学生新聞に掲載された記事の抜粋です。内容は、掲載当時のものであり、現在の状況とは異なる場合もありますので、あらかじめご了承ください。