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海をたずねて -地球とわたしたち-

第25回 将来の有効活用めざす

「ちきゅう」への期待(2)

地球深部探査船「ちきゅう」が海底下からほり出す地層(コア)は、地震以外の分野でも研究の対象になっています。また、コアではなく、ほった穴の方を防災などに利用する取り組みもあります。今回は、将来に向け「ちきゅう」に期待されている活用法を紹介します。

プレート沈みこみ帯での物質循環

(図を拡大)


微生物の役割を探る

「ちきゅう」は、海底下7000メートルの深さまでほる能力が注目されますが、海底からガスがふき出しているような場所でもほれるのも大きな長所です。こうした特徴から微生物の研究分野でも期待されています。

微生物は、陸地の下や海底の下に、たくさんいるといわれています。ただし、活発に活動している場所は限定されていて、「ものの流れがある場所」と考えられています。

微生物は何らかのエネルギーを利用しています。そのエネルギーが絶えずやってくるような場所でないと活動できません。「流れ」のない場所では、そこにあるエネルギーを使い切ってしまったら、もうおしまいというわけです。

そういった「流れ」のある場所は、海底火山だったり、プレート(地球表面の岩盤)がマントルにしずみこんでいたり、熱水がふき出したりしているような地域です。これまでの掘削船では、高圧のガスや水のふき出す場所をほるのは危険とされていました。

ブラックスモーカー

黒い熱水がふきだすようすです。こういった地域の海底下で微生物が活発に活動していると考えられています。


酸素がきらい?

ほり出したコアの中にいる微生物は、大気にふれると死んでしまうことがあります。そのためグローブボックス(写真)という酸素のない装置の中で調査などをします。


微生物は二酸化炭素からメタンを作るなど、地球全体の物質循環の中で役割を果たしています。新エネルギーとして注目されるメタンハイドレートも微生物が作っているという説もあります。微生物を研究することは、生命と地球がどうかかわっていまの環境ができているかを探る手がかりにもなります。

そのためJAMSTECは、「ちきゅう」で沖縄県沖の熱水活動域をほり進んでの微生物などの調査を「IODP(統合国際深海掘削計画)」に提案しています。

海底に新たな観測点

「ちきゅう」は、紀伊半島沖で海底下約6000メートルから「コア」をほり出すことを目指しています。このときほる穴を将来有効利用する計画があります。紀伊半島沖では、海底に20の観測点を設ける「海底ネットワークシステム」の整備計画がすでに始まっており、このネットワークに「ちきゅう」のほる穴を新たな観測点としてプラスできないかという案です。

海底ネットワークシステム

ひとつの観測点から4つのケーブル(黄)が伸び、地震計などのセンサーがつながります。観測点もケーブル(赤)でつながり、データが陸上局に送られます。写真は左から、水圧計、海底地震計、海底電位差磁力計。


「海底ネットワークシステム」は、この地域で巨大地震がくり返し何度も起こっていることから、JAMSTECが中心となって2006年度から4年計画で始めました。海底約100キロ四方に20か所ある観測点が海底ケーブルでつながれ、観測データは刻々と陸上にあるJAMSTECなどの研究機関に送られるしくみです。
(1)コンピューターで、より正確な地震発生予測モデルをつくる
(2)地震・津波発生の情報をすばやく伝えて防災などに役立てる
(3)海底のようすを観察し、地震に関連した現象を理解する
の三つが目的です。


海底ネットワークシステムの観測点

「ちきゅう」のほった穴に設置する観測装置のイメージ図


このネットワークは、2010年の春から20~30年間という長い間使われる予定のため、保守のしやすさも工夫され、こわれた機器の交換がしやすくなっています。また海底ケーブルが一部破損しても、観測データの大部分は地上に届くように、ケーブルのつなぎ方も考えられています。

「ちきゅう」でほった穴も観測点として利用するために、現在、高温・高圧の海底下7000メートルにたえられる観測装置の開発が続けられています。実現すれば、海底面付近と海底下深くで同時にデータが取れるため、より役立つ観測データを得られることが期待できます。

コアを分析 高知コアセンター

高知が生んだ偉大な科学者といえば、寺田寅彦(物理学者)と牧野富太郎(植物学者)が有名です。その高知でいま、新しい科学が始められようとしています。高知大学とJAMSTEC高知コア研究所は、共同で高知コアセンターを運営しています。

CTスキャナでコアの分析をしているようす
 ここには最先端の分析装置などがあり、ほり出した海底岩石の柱状試料(コア)を調べています。2007年の秋、地球深部探査船「ちきゅう」がほり出すコアも、高知コアセンターに送られる予定です。
 地下の地層には、地球の歴史が刻みこまれています。恐竜が生きていた時代、地上に植物が生え始めた時代、深海で最初の生命が誕生した時代、さらには巨大地震の発生した時代……、こうした過去の地球環境が、コアの研究で次第に明らかになってきます。

※このページの内容は、2007年3月8日に朝日小学生新聞に掲載された記事の抜粋です。内容は、掲載当時のものであり、現在の状況とは異なる場合もありますので、あらかじめご了承ください。