北太平洋の循環
 世界の海を巡る海洋大循環は,海水とともに熱や塩分,種々の溶存物質,浮遊生物などを運び,物質の循環や海域特有の水塊の形成に強く寄与し,地球の気候や環境に大きな影響を与えていることが判りはじめました。海洋大循環やわれわれ日本人には馴染み深い黒潮,北太平洋の循環,エルニーニョ現象の実態や気候変動等の関係についてその解明が待たれています。
 太平洋表層循環の主要部分である黒潮は,日本の気候や産業に直接影響を及ぼすだけでなく,膨大な熱の輸送を通 して世界の気候にも深い関わりを持っていますし,また,およそ2000m以深の深層での海洋循環は, 風によって駆動される黒潮等の表層循環とは違って, 高緯度域で冷やされ重くなった海水が 深く沈み込むことによって起きています。 大がかりな海水の沈降は, 大西洋の北極側のグリ−ンランド周辺と南極近くのウェッデル海で 生じており, 形成された深層水は南極周極流に乗って南極の周りを東向きに流れ, インド洋さらには太平洋に運ばれます。北太平洋に入った深層水は, 多くは北西海盆を経由して最終的に北東海盆に流入し, そこで湧昇して深層循環が終わります。 北太平洋北東海盆が深層循環の終着点なのです。
 また,海洋と接する大気は,たえず海洋とエネルギー,運動量,水をはじめとする物質の交換を行なっています。その結果 ,海洋上の大気中には,さまざまなスケールの擾乱が発生します。これらの現象は,乱流,降水,水の相変化,力学などの仮定が絡んだ非常に複雑で,興味深い研究対象であるばかりでなく,日々の天気変化や気象災害を通 して人間生活にも大きな影響を与えていることが予想されます。  したがって,これらのことから海洋大循環は地球を巡る血液であるということができます。この海洋大循環が地球規模の環境変動に大きな影響を与えているとともに,われわれ人間を含むすべての生命に大きな影響を与えていることが判ります。