2013年7月29日~8月2日の5日間にわたって、横浜高校の皆さんと地震波探査実習と地質学実習を行いました。講義、見学、演習、野外実習をとおして、日本列島の成り立ちや地震のメカニズムについて学んだ5日間の様子をフォトレポートでお届けします。

開催日 

2013年7月29日(月)~8月2日(金)

実施校

横浜高等学校 生徒18人、ほか理科教員の皆様

講師

 仲西理子(地球内部ダイナミクス領域)
 桑野修(地球内部ダイナミクス領域)
 柳澤孝寿(地球内部ダイナミクス領域)
 藤江剛(地球内部ダイナミクス領域)
 山下幹也(地球内部ダイナミクス領域)
 木村純一(地球内部ダイナミクス領域)
 田中聡 (地球内部ダイナミクス領域)
 小俣珠乃(地球深部探査センター)

レポート

※ 備考  本実習は、横浜高等学校サイエンスパートナープログラム(SPP)事業として行われました。


1日目 (2013年7月29日)地震波探査実習@JAMSTEC横浜研究所

演習風景動画

この映像の著作権はJAMSTECに帰属します。許可なく複製・転載、その他営業目的で使用することを禁止します。

長い実習の始まりです。まずはみんなで自己紹介。「家族旅行の予定を変更してきた!」という生徒さんもいれば、「先生に言われて・・」という人も。参加の動機はさまざまです。

初日はJAMSTEC横浜研究所での地震波探査実習。まずは、講師の小俣先生から5日間の実習全体について説明します。

いよいよ地震波探査実習スタート。地震波探査は、地球の内部を知るために使われる手法です。講師の桑野先生から地震波の説明、そして、寒天を使った演習について説明します。この寒天の意味は!?

寒天は地殻を模擬したものでした。寒天は透明なので、光弾性を使うと弾性波が伝わる様子が目に見えるのです。
右の写真を見ると寒天の色が上下で違いますね。この寒天模擬地殻の一層目と二層目は濃度が異なる寒天でできています。色の濃い方が固い地層を表しています。

グループごとに寒天の模擬地殻を叩いて、高速度カメラで撮影。波形データを採ります。出てきたデータから一層目と二層目の弾性波の速度を計算。そして、そこから寒天模擬地殻の1層目の厚さを導き出します。
これは、実際の地震波探査で行われているのと、同じ手法なんだそう。データを読み取り、手で計算します。慣れない作業にみんな一苦労。

演習が終わり、最後に講師の仲西先生から、実際に船と海底地震計を使った地震波探査がどのように行われているかを説明します。もちろん手では計算しません。コンピューターのプログラムで計算しています。いいなぁとみんな苦笑い。 明日は、JAMSTEC横須賀本部に本物の海底地震計を見に行きます!


2日目 2013年7月30日)地震波探査実習と施設見学@JAMSTEC横須賀本部

今日は講義からスタート。まずは「日本列島の形成地震と火山の起源を探る」と題して、木村先生から講義がありました。日本の地下構造はどうなっているのか、どのようにしてできあがったのか、そして地震や火山とどのような関係があるのかなどについて話がありました。

続いて仲西先生から、JAMSTECで行われている海溝型地震の研究についての講義がありました。プレート境界型地震の仕組みや実際にJAMSTECで行っている東北地方太平洋沖地震の調査や南海トラフの構造探査についてお話を聞きました。

休憩時間中には、地震計の仕組みについて説明を受けました。地震計には振り子の原理が使われているんですね。

お昼休憩のあとは、JAMSTEC横須賀本部の見学に。ブタメンを使った水圧実験もありました。

そして、初日の講義から名前だけは何度もでてきたOBS(海底地震計)と、いよいよご対面。ずらーっと並んだ風景は壮観です。

現場で活躍する技術者の方からも説明を受けました。


3日目 (2013年7月31日)地質学野外実習@丹沢

野外実習動画

この映像の著作権はJAMSTECに帰属します。許可なく複製・転載、その他営業目的で使用することを禁止します。

今日は野外実習を行います。朝8時に横浜高校に集合。バスで丹沢方面に向かいます。
天気は曇り。連日猛暑だったので、少し涼しく感じられます。

松田山に到着。まずは、自分たちがどこにいるのか地図で確認します。

この高台からは、国府津-松田断層によってできた平野と山の境界がよく見えるハズなのですが、残念ながら、今日は曇っていて、あまりよく見えません。

もう少しだけ下側に移動。今度は見えるかな?

山北町に移動。ここからは山歩きをしながら地層を観察します。まず最初のポイント。砂っぽい中に岩がゴロゴロと入っています。これはレキ岩です。地形図で今いる場所を確認して、「レキ岩」と書き込みます。

道を少し登って、また地層を見ましょう。あれ、さっきとはだいぶ様子が違います。これは凝灰岩です。地形図を取り出し、さきほどの「レキ岩」とは違う色でマークをつけます。

地層を確かめながら、登って行きます。どうやら、ずっと凝灰岩です。

ここが神縄断層です。スマートフォンにダウンロードしたクリノメーターで、断層の走行傾斜を測ります。そして、地形図にデータを書き込み。「疲れてても、後じゃなくて、今、書くこと!後だと忘れちゃうからね。」、講師の小俣先生の声が飛びます。

坂を上りきると茶畑が広がっていました。茶畑を横目にもう一つ坂を上り、さらに地層を観察。
と、あれ、いつの間にかレキ岩になっています。いったい、どこに境界があったのでしょうか。

少し戻って、凝灰岩とレキ岩の境界を探します。
ここです! 夏草が茂ってしまって、ちょっと見えにくくなっていますね。

バスに乗って、今度は酒匂川の河原に向かいます。

河原の岩を観察すると、カキの殻の入っている岩が!
ここは昔、海だったことがあるということが分かります。

河原で石拾い。
種類の違ういくつかの石を集めます。

石集めが終わったら、バスに乗って中川温泉に移動。
川が澄んでとてもきれいです。

河原には変成した凝灰岩が見られます。

 

そして、ここからはSand for Sudentsのお楽しみ!椀掛けに挑戦です。
椀掛けした砂と、しない砂を採取するので、二つのビニール袋を用意します。

まず小俣先生がお手本を示します。
そして、みんなも恐る恐る始めます。コツがつかめてくると、みんな没頭。だんだんと比重の重い鉱物だけになっていきます。

二人一組で、椀に残った砂をビニール袋に入れていきます。

椀掛けのあとは、もうひとがんばり。川沿いを、河原の岩を上から観察しながら歩いていきます。

道を少し外れて山の中へ。凝灰岩と深成岩の地層の境界です。

最後は、バスに乗って西丹沢自然教室へ。河原にある深成岩を観察して、今日の野外実習は終わり。みんなで記念写真を撮ります。長い一日、本当にがんばりました。今日は、ゆっくり休んで、明日に備えましょう。

 


4日目 (2013年8月1日)地質学実習@横浜高校

今日は、横浜高校で実習です。甲子園出場を決めたばかりとあって、駅には神奈川大会優勝を祝う横断幕が掲げられていました。

まずは昨日の野外実習のおさらいをします。Google Earthで場所を確認、そして、採取した石をみんなで確認します。

昨日、地図に書き込んだ情報を整理して、実習場所の地質図を作成してみます。 午前はこれで終了。

午後は、椀掛けした試料の観察です。
まずは小皿に、名前と「椀掛けあり、なし」を書きます。
そして、ビニール袋から上手に試料を取り出します。

試料を乾燥室に入れて乾かしている間、昨日、採取した石を実体顕微鏡で観察。

乾いた「椀掛けなし」試料で鉱物の観察。
石英、長石、雲母、角閃石の拾いだしに挑戦します。細かい作業に、みんな集中しています。4種類を拾いだしたら、他の鉱物に挑戦。ガーネットも見つかりました。

次に「椀掛け」試料の観察をしました。椀掛けしたほうの試料には、磁鉄鉱が多いので、磁石で磁鉄鉱を分けます。そしてジルコン探しに挑戦。 先生たちも顕微鏡を覗いて黙々と鉱物探し。

ここで、ちょっとサプライズ。小俣先生が、本物の深海コアを持ってきてくれました。ちょっと見ただけではのっぺりと一様に見えますが、よく見ると周辺と様子が違う場所がありますね。

最後に2つの試料で、火山灰と微化石を観察しました。自分が拾い出しした試料にテープを貼って、実習は終了!丹沢の成り立ちについて、小俣先生からまとめがありました。
4日間の実習、本当にお疲れさまでした。

 


5日目 (2013年8月2日)発表会@横浜高校

最終日は、各班からの発表です。学校の宿泊施設に泊まり夜中までがんばったそうです。
素晴らしい発表内容に、横浜高校の辻井先生も講師の小俣先生も感激。

今回の実習は5日間の盛りだくさんの内容で、体力的にも厳しかったかもしれません。でも日を追うごとに、皆の目つきが真剣に、そして、好奇心に満ちたきらきらしたものに変わっていくのを見て、皆が何かを感じとってくれているのが分かりました。
アンケートでは、「今まであまり興味がなかったけれど、これからは自分でも地震や地質のことを勉強してみたい。」という感想が数多くみられました。この暑い夏の経験が、少しでも将来を考えるきっかけになったのならうれしいです。

 

文章:今村仙子(研究支援部)

講師コメント

今回は地震探査と地質調査と2つの実習を行い、参加者にとっても結構ハードな内容でしたが、それほど心配もなく1週間こなす事ができ、改めて高校生の知力と体力を実感しました。実習でもお互いに力を合わせながら課題をこなしている様子から、普段の充実した高校生活がかいま見られました。 私達にとっても新たな試みを盛り込んだ実習でしたが、実習内容を受け入れて下さり、また、学内外の調整を尽力くださった先生方にも感謝いたします。(小俣珠乃)

JAMSTECの地震発生帯の研究の成果を中高生をはじめとする次世代の皆さんに、わかりやすく伝えたいという思いで、私たちは今回の実習に取り組みました。おかげさまで私たちにとっても今後の活動に参考になる貴重な機会となりましたこと、心から感謝致します。盛りだくさんの内容だったと思いますが、最後の発表まで頑張ってこなして下さった高校生の皆さん、先生方、おつかれさまでした。今回の経験を通じて、少しでも壮大なスケールの地下の構造がわかるまでの調査、解析、原理などを身近に感じ、何かの折に思い出してもらえれば、と願っています。(仲西理子)

地震の断層がずれ動く様子や放出された地震波が伝わる様子は目では見えにくいものです。 このような現象を動的なイメージとともに知り、さらに研究者が地球物理学的手法を駆使してどのように地震の研究をしているかを知ってもらいたいということで今回の実習を行いました。地球という大きなスケールの対象に挑むのにも実験室で見た現象の基本的な物理・数理を利用していること、その取り組みの困難さ面白さを少しでも理解してもらえたのなら嬉しいです。 (桑野修)