○伊豆小笠原諸島海域

伊豆小笠原諸島海域には、海底火山が数多く分布し水曜海山(水深1400m)、木曜海山(水深1400m)、海形海山(水深400〜800m)、日光海山(水深450m)などに熱水噴出孔生物群集があります。水曜海山では300℃以上の熱水が噴出するチムニーが林立し、シチヨウシンカイヒバリガイBathymodiolus septemdierum が密集しています。海形海山には、眼が退化したユノハナガニ類 Bythograeidae が優占して分布しており、このカニは実験室内でも飼育できるようになりました。

 

小笠原諸島海域の海形海山水深450mにある熱水噴出孔生物群集。熱水の湧き出し点にユノハナガニが密集する。



○鹿児島湾

鹿児島湾では、「たぎり」とよばれる火山性噴気現象が昔から知られており、高濃度の二酸化炭素やメタン、硫化水素を含むガスが海底から噴出しています。その付近でみられるサツマハオリムシ Lamellibrachia satsuma は、バイオマスが 9 kg/以上もある”世界最浅”のハオリムシです。圧力・温度変化の影響が少なく、深海研究部では世界で始めて長期飼育に成功、生理や生態についての研究をすすめています。

鹿児島湾の湾奥でみられる「たぎり」。桜島の火山活動の影響と考えられている。 「たぎり」付近でみられるサツマハオリムシのコロニー。岩に高密度で付着するため、まるでハオリムシの山(最大で高さ5m直径10m)のようにみえる。



○沖縄トラフ

沖縄トラフでは、南奄西海丘(水深650〜750m)、伊平屋海嶺(水深1000〜1400m)、伊是名海穴(水深1300〜1500m)などに熱水噴出孔生物群集が認められます。南奄西海丘には、チムニーが10本ほどあり、最高温度は270℃にも達っします。チムニーを取り囲むように優占的にシンカイヒバリガイ Bathymodiolus japonicus が密集しています。周辺の海底表面には白色の糸状バクテリアマットがあり、このようなバクテリアが基礎生産者になっています。

南奄西海丘の熱水噴出孔生物群集.シンカイヒバリガイが露頭一面に付着している. 南奄西海丘の粗粒砂堆積域に広がるバクテリアマット.



○マリアナ背弧海盆

マリアナ背弧海盆では、南部域(水深1450m)と、中部域(水深3600m)に熱水噴出孔生物群集があります。両地点ともに殻は毛で覆われ、鰓にバクテリアを共生させる腹足類アルビンガイ Alvinicorcha hessleriが分布しています。また、周辺にはアルビンガイの死殻が堆積しており、世代交代が早いと考えられます。

マリアナ背弧海盆水深1450mの熱水噴出孔生物群集。露頭表面はバクテリアマットで覆われ、噴出孔至近には、アルビンガイ Alviniconcha hessleri と熱水性のエビ Chorocaris vandoverae が集団を形成している。



○マヌス海盆

マヌス海盆(パプアニューギニア)にはDESMOS、PACMANUS、VIENNA WOODSなどの熱水噴出域があり、それぞれに特徴的な化学合成生物群集が存在します。DESMOSサイトの熱水はpHが非常に低いことが特徴で(pH 2程度)、熱水噴出孔周辺にはおびただしい数のハオリムシ類(チューブワーム)が生息しています。白い枯れ枝状の筒がハオリムシ類の棲管(住み家)で、赤い房が鰓です。ハオリムシ類はこの鰓から酸素やエネルギー源となる硫化水素などを取り込みます。

DESMOSサイト(水深)のハオリムシ類(チューブワーム)。






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