現在、深海を観察するための潜水調査船や無人探査機は、日本に4隻、世界的にみても十数隻しかありませんが、フル稼働しています。しかし、これまでに行われた深海の観察は海底域が中心で、全海洋の90%以上を占める中・深層域の観察は極めてわずかです。
 近年、中・深層域に生息する生物は、「食う- 食われる」の関係や自らの鉛直移動を通して、海洋表層と深海底の間の物質輸送に密接に係わっていることが少しづつ知られるようになってきました。また、海洋調査船からネットやカメラ等を吊り降ろす調査が繰り返され、中・深層に非常に多様な、且つ、膨大な量の生物が生息していることが少しづつ明かになってきました。
 中・深層生物の研究は、米国のモンテレー湾水族館研究所とハーバーブランチ海洋研究所が中心になって進めていますが、独立行政法人海洋研究開発機構も、潜水調査船「しんかい2000」、「しんかい6500」や無人探査機「ドルフィン-3K」による中・深層生物研究に着手しました。そして、1997年5月から6月にかけて相模湾(水深1200m)、日本海溝(水深6500m)および小笠原水曜海山(1400m)海域で調査を実施しました。その結果、新種と思われる多くの生物を観察し、その生態ビデオ映像として記録しました。また、特別な採集装置を用い、海上からのネットによる採集では壊れてしまうような新種生物の採集に成功しました。これらの調査を通じて、日本周辺の中・深層にも想像以上に多量な、且つ、多様な生物が生息していることが明かになってきました。これらは、深海を自在に移動することができる潜水調査船や無人探査機でしか成し得ない成果なのです。



多毛類の新種。ガラス管のような脚で水を漕ぎながら踊るように進む。日本海溝の深海約6500mで今年の6月3日に「しんかい6500」の潜航で撮影。



サメハダホウズキイカ類。このイカはクラゲと同じように透明な体をしています。体内の塩化アンモニウムの量を調節することによって自分の比重を適切な値に変え、鰭を動かさずに静かに浮くことができます。小笠原諸島の水曜海山600-1400mで今年の6月9日に「しんかい2000」の潜航で観察されました。

 中・深層の生物研究に潜水調査船や無人探査機を用いることにより、従来、全く知られていなかった生物やそれらの生態が次々に明かにされています。このような研究の積み重ねが、地球温暖化を引き起こす二酸化炭素のミッシングリンクの解明のために極めて重要なのです。




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