|
1.はじめに 独立行政法人海洋研究開発機構では、1996年度より「しんかい2000」、1998年度より「しんかい6500」にγ線センサ(NaI(Tl)シンチレーションスペクトルメータを常時装着し、各潜航に対して定常的にデータを収録している。 さらに、1997年度より無人潜水機「ドルフィン-3K」による計測も開始された。取得したデータの解析により、全計数率、K-, U-系列, Th-系列の放射性核種の濃度が計算される。筆者らは、基本的な海洋データとして、 日本周辺海底のγ線計測を行っているが、そのうち特に興味のあるデータを取得できた海域では、重点的な解析を行っている。それらは、南方諸島、南西諸島海域等の熱水噴出域と相模湾、駿河湾、南海トラフ、南西諸島等の沈み込み帯の冷湧水湧出域である。また。「しんかい6500」では、MODE'98の潜航調査の際に、大西洋中央海嶺、南西インド洋海嶺3重点等で、1999年にはハワイ周辺海域での計測を行っている。 |
| 陸上での放射能調査は、地下水井戸での長期的なラドン測定、活断層付近でのラドンやγ線測定等が地殻活動のモニタリング、地質構造調査等の目的で行われている。1995年の兵庫県南部地震の直前の地下水井戸でのラドンの増加は結果的に地震の発生を予知している(Igarashi et al, 1995)。また神奈川県、 三浦半島での活断層トレンチでの計測例を示す。 |
|
| 2.海洋環境放射線測定システム
2-1.システムの概要 「しんかい2000」のγ線測定システムの概要を示す。 「しんかい2000」の場合、潜水船の脚(ソリ)部に放射線検出器として使用している直径、長さ共に76.3mmのNaI(TI)シンチレータと、信号波高値を処理してデジタルコード化するインターフェースを設置し、データ収録は耐圧殻内で行っている。データは、シンチレータの出力信号の波高値を実時間でそれぞれデジタル化し、収録用8mmVTRの音声部に収録するとともに、映像信号としてエネルギスペクトルの収録も行っている。なお潜水船内でもモニタ映像処理インターフェースを用いることにより、放射線強度・測定エネルギスペクトルをモニタすることができる。 |
| 「ドルフィン-3K」のγ線測定システムの概要を示す。 「ドルフィン-3K」での測定結果は、「しんかい2000」と同様に8mmVTRに記録されるが、船上でパソコンのHDに記録し、リアルタイムで表示できる。「しんかい6500」の測定システム の設置状況を示す。「しんかい6500」の測定結果は、「ドルフィン-3K」と同様に記録、表示可能である。 |
| 2-2.データ収録・解析・処理
測定したデータは、8mmビデオテープのステレオ音声収録部に収録されている。収録データは、2チャンネル音声に13ビットのシリアル記録で、R、Lチャンネルにビット開始を同時信号、これに続く信号ビットはR、Lチャンネルのいずれかに”1”,”0”の信号を入れコード化している。したがって信号波高値はすべてのテープの音声部に収録されている。再生は、収録したシリアル信号をパラレルとし、電算機による処理の際に要求される時間集積のエネルギスペクトル(1k,2k, 3k)とし、パーソナルコンピュータにより希望するファイル(HDまたはFD等)に保存している。 |
| 保存されたデータファイルの内容の解析は、目的に応じて行われるが、現在標準的な解析は科学技術庁放射能測定法シリーズ(空間γ線スペクトル測定法)を参考として行っている。この解析法は、エネルギスペクトルの着目放射性核種のγ線ピーク解析と、天然放射性物質であるカリウムおよびウラン、トリウム系列のエネルギ領域(ODP:LOGGINGの解析方法)の解析との組み合わせになっている。 なおこの解析を行うソフトの一部は市販されている。 |
| データ処理に関するソフトについては、市販のソフトのほか独自に開発したものがある。データ自体は、一定時間毎(通常1分毎)の測定スペクトル(1024チャンネル)であり、最も単純な内容としては指定チャンネル領域の計数率の時系列である。 また着目した測定時刻の加算スペクトルを作成するソフトが利用できる。これら測定スペクトルは、スペクトル毎にエネルギ更正を行い、エネルギスペクトルとして処理が行われる。現在これら一連の処理はパーソナルコンピュータによる自動化が進んでおり、測定データの処理に役立っている。 ここまでの解析・処理はDOS及びWINDOWS95ベースのパーソナルコンピュータで行い、この後のカリウム、ウラン、トリウム等のエネルギ領域のグラフ化や図化(等高線図等)の処理はマッキントッシュで行っている。
|
| 3.解析結果
これまでに判った日本周辺海底のγ線全計数率(強度)を示す。 |
| 3-1.日本周辺の海底γ線全計数率(強度)と放射性核種濃度
「しんかい2000」、「ドルフィン-3K」、「しんかい6500」の1999年度およびそれ以前の潜航における計測により日本周辺の海底のγ線全計数率の分布状況の概要が判ってきた。図に示すように、全計数率の高い海域は、熱水湧出海域である。特に南西諸島海域の伊是名海穴、北部伊平屋海嶺群及び鹿児島湾の”たぎり”の海域で高い値を示す。伊是名海穴では、全計数率10000cps以上と陸上の通常環境における約200CPSの50倍の値を示した。 また、1999年には、先島群島域の鳩間海丘、石垣海丘群で高強度の海域が見つかった。七島・硫黄島海嶺の明神海丘でも1299CPSを示す地点が見つかった。以下日本周辺海域での全体的な傾向を述べる。 |
| 1)日本海は全般的に着底したときの最低値が80-100cpsと高い値を示す。また最高値も冷湧水等が確認されていないのに140-190cpsと高い値を示す。特に富山沖では、ウラン、トリウム系列の濃度の高いことから後背地の地質を反映した堆積物の組成によるものと考えられるが、最高値は地下水の湧出等の湧水の存在を示唆しているのか、単に堆積物のふるい分けによるものか今の所不明である。男鹿半島沖では、ウラン-系列濃度1.2
- 1.8 ppm, トリウム-系列濃度4.2 - 4.5ppm、強度は、123 - 145CPSで冷湧水環境の存在を示唆する。 礼文島沖、忍路海山も同様に冷湧水環境の存在を示差する。なお、渡島大島から奥尻海嶺でも冷湧水湧出海域の特徴を持っている。
2)相模湾は、最低が30-50CPS、湧水地点での最大で82CPSと低く、東部南海トラフは、最低が35-50CPS、最大が115-235CPSと相模トラフと比較して高い。特にEnshu FaultやTokai Thrust等の活断層域で高く、Th-系列の放射性同位元素の濃度も高い。活断層や地辷り地帯に伴ってTh-系列の放射性同位元素の濃度が高い事は、極めて特徴的で、地層の圧縮に伴うマイクロクラックの発達や地辷り堆積物による地層の圧迫が、堆積物中の放射性同位元素を周辺の間隙水中に絞り出し、冷湧水に伴って湧出する事が黒島海丘やパプアニューギニアのシッサノラグーン沖等で認められている。 3)南西諸島海域では、独立栄養動物群集を伴う冷湧水湧出環境は、 西表島、喜界島沖、黒島海丘等である。特に黒島海丘は、膨大な量のシロウリガイ類の死殻群集と、炭酸塩類のチムニーの存在、地辷り地形の分布で注目されている。これまでの海底γ線調査の蓄積により最近に活動した、活断層や地辷り地帯ではTh-系列の放射性同位元素の濃度が高いことが判ってきて、良い指標となりそうである。 4)熱水噴出海域では、南西諸島海域の鹿児島湾、北部伊平屋海嶺群、伊是名海穴、石垣海丘群、鳩間海丘、南方諸島海域の、七島ー硫黄島海嶺の水曜海山、明神海丘、マリアナ海域の南硫黄島南方、第2春日海山、第3春日海山等が現在注目している海域である。 5)「しんかい6500」により大西洋中央海嶺域、 南西インド洋海嶺3重会合点 (以上MODE'98による)、 1999年にはハワイ沖等で計測が行われた。南西インド洋海嶺3重会合点では、トリウム系列の放射性核種が多いことが極めて特徴的である。
(PLEASE DON'T USE THIS DATA BASE UNLESS PERMISSION OF THE WRITER OF THIS HOME PAGE BECAUSE UNDER CONSTRUCTION)
このHome Pageに関するお問い合わせは hattorim@jamstec.go.jpまで |