海洋研究開発機構

1)スマトラ島沖地震が起きた場所とは?


 今回のスマトラ島沖地震は、海底の複数の活断層が交差する場所の近傍で発生した。 地震は地殻の破壊が生じることで引き起こされる。最初の破壊が起きたのは、イン ドネシア・スマトラ島の北端部に位置するナングル・アチェ・ダルサラム州の南東沖に位置するシムルエ島北東数十kmの海底とされている(米国地質調査所発表)。その後、地震を起こした地殻の破壊は、北側のニコバル諸島やアンダマン諸島へと伝搬し、最終的には全長1000kmにもおよぶ大きな破壊を形成した。

 ではこのような地震を引き起こした地下はどうなっているのであろうか?

  地震が起こったスマトラ島周辺は、北西−南東方向に伸びるスンダ海溝に平行してスマトラ島の海岸線が、また内陸に平行して火山フロントが、それぞれ直線上に分布する。また、スマトラ島の海側には、ニアス島をはじめとするメンタワイ諸島がこれも海溝軸と平行して分布している。

 スンダ海溝では、インド・オーストラリアプレートが年間約75〜80 mmの速度で、スマトラ島が位置するユーラシアプレートの下に沈み込んでいる。インド・オーストラリアプレートの移動方向は北北東方向で、上に述べた北北西に伸びるスンダ海溝軸と斜交しており、スマトラ島周辺では沈み込むプレートは斜めに沈み込むことになる。このような幾何学的特徴によって、沈み込まれる側のスマトラ島の地殻(プレート上盤側の地殻)には、沈み込むプレートによって斜め方向の力がかかる(図1参照)。このときの力によって、上盤側の地殻では、海溝と平行な方向や海溝と直行する方向に変形が集中する傾向がみられる。海溝と平行な方向としては、スマトラ断層や海溝側に位置するメンタワイ断層が相当する。これらはすべて右横ずれ断層であり、海溝軸に並走して発達する。一方、海溝と直交する方向の変形は、海溝に直交する力で押されて潰された、褶曲した地層の変形構造に現れている。以上をまとめると、図2に示すように、スマトラ断層とその海側に位置するメンタワイ断層の二つの断層と、メンタワイ断層よりさらに海側に位置する付加体と呼ばれる褶曲帯から成り立っているというのがスマトラ島沖の基本的な構造である。

 しかし、ニアス島周辺では、このような基本構造が崩れている。それは、スマトラ断層から斜めに分枝する断層(バティー断層)が海側へ張り出しており、その影響によって沖合のメンタワイ断層までもが変位させられている。このような枝分かれ断層の変位の影響によって、ニアス島やその北側に位置するバンヤック島で地殻の圧縮が生じ、その逆断層を挟んでニアス島の北東側では地殻の引っぱりによってニアス海盆と呼ばれる凹地ができている(図1)。

 今回の震源域は、このニアス島よりさらに北に位置するシムルエ島の北東数十kmのところに位置し、ここでは、西アンダマン断層が海溝軸にほぼ平行して走っている。この西アンダマン断層はニコバル諸島の東縁に沿って北側へと連続するが、その変位速度等は未だわかっていない。いずれにせよ西アンダマン断層は右横ずれ断層であって、その北縁はビルマ沖のアンダマン島の北の火山島周辺で消滅する。

 一方、陸上にはスマトラ島の中央部を海溝軸と平行してスマトラ断層が走っている。スマトラ断層の変位速度は、南から北に向かって年間6 mmから23 mmと変位量が増大する傾向がみられ、アンダマン海に至る北限では年間40〜60 mmの速度で変位している。

 このような構造の特徴から、右横ずれの西アンダマン断層(海底部)とスマトラ断層(陸上部)に挟まれた部位の地下で破壊された地殻がその震源域となっている。その延長にあたるアンダマン海中央部では海洋底の拡大が引き起こされている。




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