海洋研究開発機構
海洋調査船「なつしま」によるインドネシア・スマトラ島沖緊急調査の状況について
(本文中の注釈がない日時は「なつしま」現地時間)

2月2日(水)

プレスリリース件名 「なつしま」出航のお知らせ(鹿児島港) 1月28日発表

 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)の「なつしま」は、インドネシア・スマトラ島沖で発生した巨大地震の震央海域を中心とした緊急調査を実施するため、関係者の見送りの中、平成17年2月2日10時に鹿児島市 谷山港を出港した。


鹿児島県谷山港出航時の様子
鹿児島県谷山港出航時の様子


2月15日(火)

 12時(現地時間)に「なつしま」は、シンガポール港にて日本側研究者およびテクニカルスタッフの他、インドネシア側3名、ドイツ側1名と、3名の報道関係者、さらにインドネシア海軍セキュリティオフィサー1名を乗船させ、調査海域に向け出航した。また、出港後はじめての科学者ミーティングを終え、調査海域での調査についての優先順位等、はじめての議論がなされた。


シンガポール港出航時の様子
シンガポール港出航時の様子
船上での科学者ミーティング風景
船上での科学者ミーティング風景


2月16日(水)

 「なつしま」はマラッカ海峡を北上。特に異常なし。


2月17日(木)

 「なつしま」は、マラッカ海峡のもっとも危ない場所を抜け、インド洋へ航行。特に異常なし。


調査の成功と航海の安全を
金比羅様に祈願


2月18日(金)(調査航海開始)

プレスリリース件名 「なつしま」によるインドネシア・スマトラ島沖緊急調査の状況について 2月18日発表


 天候は曇り、海はなぎ。
 「なつしま」は、平成17年2月18日(金)午前0時00分 (現地時間)、マラッカ海峡を無事通過し、スマトラ島沖の調査海域に到着した。
引き続き、以下の調査作業を行った。
午前4時00分、マルチナロービーム(音響測深機)により海底地形の調査を開始。
午前6時30分、犠牲者の追悼のため、全員で献花と黙祷を行う。
午前7時00分、海底地震計(OBS)を投入し設置作業を開始。
作業開始以降、海底地形調査とともに、順次計17台のOBSを投入、設置している。


ROV 「ハイパードルフィン」の前での研究者全員の集合写真
ROV 「ハイパードルフィン」の前での
研究者全員の集合写真


2月19日(土)(調査航海第2日目)

 天候は薄曇り、海はなぎ。昨日に比べ若干うねりが増したが、調査に支障なし。予定通り、マルチナロービーム(音響測深機)による海域の地形調査を実施し、また海底地震計(OBS)17台の投入を終えた。全員元気。


2月20日(日)(調査航海第3日目)

 天候は薄曇り、海況はなぎ。昨日に比べ風が弱い。調査には特に問題なし。 現在シングルチャネル音波探査装置(SCS)を使い海底表層を探査している。これまでに外側隆起帯を横切るデータを取得した。データから予想以上に海底表面の地形が起伏に富むことが判明した。一方、海底深部からの反射が少ない。

外縁隆起帯:プレートが沈み込む海溝軸の陸側斜面には、小規模な隆起構造や堆積盆が発達している。そのもっとも陸側の隆起帯が外縁部隆起帯であり、そのさらに陸側には前弧海盆による平坦な地形が見られる。隆起帯は、巨大地震による断層が繰り返し活動することで形成される場合がある。


2月21日(月)(調査航海第4日目)

 天候は薄曇り、海況はなぎ。
現在、外縁隆起帯の二番目の斜面(高低差900m)に沿い、等深線に沿った測線に従ってマルチナロービーム音響測深機を使った海底調査を行い、この地域の地形図を作成した。11時00分に終了した。
 終了後直ちに無人探査機ハイパードルフィンを潜航させ第二斜面上部域(水深3000m付近)の観察調査を行った。
外縁隆起帯の海側斜面は、大規模斜面崩壊が生じており、急峻な崖地形を呈していた。可能性としてスラスト断層(今回の地震を起こしたものかどうかは不明)ができていると思われる場所である。
 3000m付近から潜航調査を開始したが、2730m付近まで海底付近の海水は濁っており、視界が1mという状態であった。
原因として、海底で地滑りや土石流といったものが生じていた可能性がある。現在この濁りが先の地震で生じた地滑り等に起因するのかを判別するために海水温の異常等を調べて解析中。(潜航の間3つの堆積物試料、2つの海水試料を採取)
 また、海底は切りたっており、基本的には泥質堆積物が露出する。ただし、現在の表層には生物や生物跡がみられない。
ただし、決定的な断層面を示すようなものは発見できなかった。
 明日は本日よりさらに浅い部分(水深2600m前後より2100m前後まで)での観察を行う予定である。


ハイパードルフィンによる海底観察の様子 ハイパードルフィンによる海底観察の様子
ハイパードルフィンによる海底観察の様子


2月22日(火)(調査航海第5日目)

天候は晴れ。海は静か(小さなうねり)。
 昨日に引き続き、無人探査機ハイパードルフィンによる海底調査を行った。
本日の潜航調査(Dive No.383)は、前日に比べて視界がよく、海底表面もよく観察された。段差、割れ目などの変動地形が観察され、前日観察した海底よりも変化に富んでいた。特に、水深2184m付近の崖の上では、小規模な割れ目が観察された。また、岩石のサンプリングや熱流量測定も行った。岩石に微化石等が含まれていれば、形成年代を判定できると思われる。
 無人探査機の潜航終了後、船内で観察結果について検討を行い、それをもとに首席研究員から乗船取材者に対してプレスリリースを行った。


ROV 「ハイパードルフィン」
オペレーションの様子


プレスリリース件名 海洋調査船「なつしま」によるスマトラ地震の際に生じた急峻な地形とその地形による崩落や地滑り痕を発見 2月22日発表(現地時間)


2月23日(水)(調査航海第6日目)

現在の位置は調査海域の北部、外縁隆起帯(水深2000m)。
天候は薄曇り、海況はなぎ。1〜2mのうねり。

<昨日までの成果>
 昨日までの第二斜面(3400mの平坦面より2500mの平坦面まで)における2回の潜航調査によって、今回の地震によって斜面の崩落や地滑りが生じたことが示唆された。特に、斜面の直上の平坦面周辺での新鮮な開口型亀裂の存在、エッジの鋭い崩落境界、それより深い3000m以深では、海底より300m以上にも登って立ちこめる視界1mの濁った水の層の存在等、地震直後に崩落や地滑りが生じたことを思わせる証拠等を得た。潜航した場所では急峻な斜面をなしており、その表面を堆積物が覆っており、エビ等の底棲生物を始め、巣孔や貝等による這痕もみられなかった。

<本日の調査>
外縁隆起帯において、等高線方向の測線に従ってマルチナロービーム(音響測深器)を使った海底地形調査を終日行った。

<明日以降の予定>
現在の海底地形図作成海域でのマルチナロービーム(音響測深器)による調査を終えた後、シングルチャンネル音波探査装置(SCS)を予定。また、長期観測用OBS(海底地震計)の設置場所を検討し、24日以降に設置を検討する。


2月24日(木)(調査航海第7日目)

  現在の位置は調査海域の北部、外縁隆起帯(水深2000m)からスンダ海溝へ向かっている。天候は晴れ、海況は良好。2-4mのうねり。昨夜からの風でうねりが出始めた。

<昨日までの成果>
  外縁隆起帯の北東側に向かって海底地形調査を行い、地形図がカバーする範囲を広げた。同時に、外縁隆起帯でのマルチナロービーム(音響測深器)による音圧図の作成を行った。3000mより浅い場所では8ノットで、それより深い場所では速度を下げて行った。ここ数日行われた海底地形調査は、併せて45km x 33kmの長方形の形の海域(面積約1400km2)で行われ、水深的には3100mから1300mのレンジをカバーしている。場所としては、外縁隆起帯の海側斜面域の一部を占める。

<本日の調査>
  長期型OBS(海底地震計)を外縁隆起帯にある舟状海盆底(2038m)へ投入した。また、スンダ海溝底において、測線間隔を1マイル間隔にとり3本の平行測線でシングルチャネルサイスミック音波探査を行った。

<明日以降の予定>
  本日、夕刻以降、約2日間かけて、前回取られたスンダ海溝、外縁隆起帯、アチェ海盆を直行する測線と平行し、短期地震計の南東側の点を通る長測線でシングルチャネルサイスミック調査を行う。
  それ以降は、アチェ海盆南西境界域において地形と潜航調査等を行う予定である。また、残りの長期型海底地震計の投入を行う。投入場所については、スマトラ島陸上の地震計観測ステーションの状況等と連絡しながら行う。


「海底地震計(OBS)の整備」


2月25日(金)(調査航海第8日目)

   現在の位置は調査海域の北部、スンダ海溝軸部上。天候は晴れ、海況は良好。2mのうねり。

<昨日までの成果>
 スンダ海溝軸部周辺で見られる隆起地形について、調査地域北東部における隆起地形が海溝軸に平行な方向で凹凸を示していることについて地形と内部構造の検討を行った。

<本日の調査>
 海溝軸部に直行する方向で、スンダ海溝においてシングルチャネルサイスミック探査を行った後、海溝、外縁隆起帯、アチェ海盆を経る長測線での調査を行った。

<明日以降の予定>
 予定通り海溝軸部付近でのシングルチャネルサイスミック探査の測線を修了させ、前回取られたスンダ海溝、外縁隆起帯、アチェ海盆を直行する測線と平行し、短期地震計の南東側の点を通る長測線でシングルチャネルサイスミック調査を行う。
 それ以降は、昨日の報告と同様にアチェ海盆南西境界域において地形と潜航調査等を行う予定である。また、残りの長期型海底地震計の投入を行う。


2月26日(土)(調査航海第9日目)

 現在の位置は調査海域の北部、外縁隆起帯。天候は雨、海況は良好。1mのうねり。調査は予定通り進行中。

<昨日までの成果>
 調査地域北西に位置するスンダ海溝軸上で見つかった変形を伴う凹凸地形について検討を行った。具体的には、この構造と直行する、もしくは平行する幾つかのシングルチャンネルサイスミックの測線を切り、それぞれの比較検討を行った。その表面が凹凸を持つこのマウンドは、比高600mにも達するもので、頂上付近では乱反射構造が著しく、その結果内部構造がよく分からないでいる。既に北側で見つかっている海溝軸付近での変形構造との関係、南北の海溝軸に 沿った配置等について、PDR(垂直下の測深)の結果とも合わせ、現在解析が行われている。

<本日の調査予定>
 調査グリッドの外縁隆起帯スンダ海溝においてシングルチャネルサイスミック探査を行う。修了予定時刻は明日午前10時。前回取られた長測線と平行に取られた測線で、南東側に位置するOBSの直上を通過するとともに、外縁隆起帯とアチェ海盆の南西縁境界を通過する測線。外縁隆起帯を胴切りにするシングルチャネルサイスミック探査の測線に沿って走る測線上での地形探査を併せて行う。

<明日以降の予定>
 シングルチャネルサイスミック探査測線終了後、アチェ海盆南西境界域において潜航に必要な面的な地形調査とそれに基づく潜航調査等を行う予定である。これはこの南西縁境界で考えられる断層もしくは変動地形を把握することが目的。また、残りの長期型海底地震計の投入を行う。


2月27日(日)(調査航海第10日目)

 現在の位置はスマトラ島沖約15km。天候は快晴、海況はべた凪。スンダ海溝からはじめたシングルチャンネルサイスミック調査と地形調査の長測線の最終地点に来ている。

<昨日までの成果>
 スンダ海溝及び外縁隆起帯海溝側斜面における英国調査船SCOTTによる海底地形図と我々の地形等との対比を終えた。
 また、既に投入してある短期型OBSの幾つかと外縁隆起帯を越えアチェ海盆を横切る測線でのシングルチャンネルサイスミックの記録を得た。シングルチャンネルサイスミックの記録をみる限り、アチェ海盆では700m以上の厚さで堆積物が堆積しており、堆積層は東側から西縁側へ向かって幾分か傾いている。なお、長期観測型海底地震計(L-OBS 2)の投入位置を確定した。

<本日の調査予定>
 シングルチャンネルサイスミック探査は、予定の測線を10時半過ぎに終え、直ちにストリーマーとGIガンの回収をする。
 海底地形探査は、予定している潜航調査のため、アチェ海盆西縁境界部周辺の海底地形をメッシュで切りながら調査する。この海底地形の調査には2.5日を予定している。

<明日以降の予定>
 アチェ海盆西縁周辺の海底地形の面的な調査を明日、明後日(3月1日)まで行う。これは、3月2日、3日に予定されているアチェ海盆南西境界域での潜航に必要な地形調査である。この一連の調査では、アチェ海盆南西縁境界で考えられる断層(メンタワイ/西アンダマン断層)もしくは変動地形を把握し、今回の地震との関係を調査することが目的。また、3日の潜航調査後に回航し、残りの長期型海底地震計(l-OBS 2)の投入を行う。


SEABATデータ処理風景



2月28日(月)(調査航海第11日目)

 現在の位置はアチェ海盆の西縁域。天候は快晴、海況はべた凪。
現在、アチェ海盆の西縁域の地形図作成を目指しグリッドを切って探査中

<昨日までの成果>
 外縁隆起帯を越えアチェ海盆を横切る測線でのシングルチャネルサイスミックの記録の解析を行っている。

<本日の調査予定>
 昨夜より開始されたアチェ海盆西縁境界部周辺の海底地形のメッシュを切りながら調査する。

 解説:アチェ海盆の西縁に沿って、メンタワイ/西アンダマン断層(走向断層)がとおるとされている。このスマトラ島沖では、沈み込むインド・オーストラリアプレートはスンダ海溝軸に対して、直行にではなく、斜めに沈み込む。一方、今回の地震では、これまでの地震波の解析から、その変位がpure dip(断層面の傾斜方向すなわち海溝軸と直行する方向に変位)でしかなく、海溝軸と平行する方向での変位がみえない。そこで海溝軸と平行する成分の歪みが、未だ地殻内に蓄積されたままなのか、それとも走向断層が地震の起きる前から変位をし続けていたために、歪みを蓄積せずにいられたのか、を判断するためにこの場所の調査を行う。

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