文部科学省
RR2002「人・自然・地球共生プロジェクト」

課題5「広域水循環予測及び対策技術の高度化」
1. 研究目的
 全地球的課題である広域水循環の予測技術とその対策技術の高度化を目的に、6つのサブテーマの実施により、
地球シミュレータによる全球的気候変動予測、高精度な領域/局所モデルの開発と、
それを用いたアジア・モンスーン水循環の高精度把握を進めると共に、
それら理学的な研究と、工学/農学/社会科学を総合的に結合し、新たな水循環対策手法の開発を進める。
2. 研究概要
  1. 海洋性砂漠の成因とその変動の解明と予測に関する研究
    (独立行政法人海洋研究開発機構横浜研究所 リーダ:山形 俊男)


    全球的気候研究への貢献も視野に入れつつ、人間の社会的活動により直接的に結び付いた領域的気候研究を
    現代の重要課題である水循環を切り口にして戦略的に展開する。
    具体的には、中東、インド洋を含む領域を中心とした広域水循環変動の主要因となる気候変動のメカニズムを研究し、
    当該領域内に存在する海洋性砂漠の成因とその変動要因に焦点をあわせ、
    実データ解析と高解像度気候モデル(大気海洋結合モデル)及び領域気象モデルによるシミュレーションを
    研究の両輪とする統合的研究プロジェクトを進める。

  2. 東アジア域の大気・陸域・海洋水循環変動に伴う災害予測に関する研究
    (独立行政法人防災科学技術研究所 リーダ:松浦 知徳)


    高解像大気海洋結合モデル、広域水収支モデル、東アジア域の局所大気モデルを地球シミュレータ上にて結合し、
    広域の水循環変動に伴う東アジア域の水災害の今後の変化の予測と評価を行う。

  3. 領域水循環統合モデルの開発とそれを用いた海洋性砂漠の水文・水循環と
    その変動の解明と予測に関する研究(京都大学防災研究所 リーダ:植田 洋匡)


    全球的水循環研究を、工学的な集水技術開発、農学的な砂漠緑化対策へ繋ぐ為に、
    大気/海洋/陸域/植生の相互作用を精緻化し、領域(〜数10km)から局所(数100m)域を
    統一的に扱える水循環統合モデルを構築し、西アジア域の水循環メカニズムの解明と、
    砂漠緑化が及ぼす影響を予測と評価を行う。

  4. 水資源確保に関する研究(三菱重工業株式会社技術本部長崎研究所 リーダ:大場 良二)

    再生可能な自然エネルギーを可能な限り利用し、臨海部に位置する海洋性砂漠を対象として、
    永続的な水資源確保技術の基礎検討を行う。

  5. 水循環型緑化・居住空間創生・生物生産システムの開発(鳥取大学乾燥地研究センター リーダ:稲永 忍)

    高効率集水技術で得られる水資源を集中的に投入することで快適な生活が営め、
    かつ、生物生産性が高い「水循環型オアシス」を創生するための技術開発を目標とする基礎研究を行うと共に、
    オアシス創生が地下水系や周辺陸上環境などへ及ぼす影響の評価手法を確立する。

  6. 海洋性砂漠の環境改善がもたらす環境影響評価及び人間社会への影響評価に関する研究
    (上智大学法学部 リーダ:岡村 尭)


    西アジアの水循環変動、気候変動、局地的な降水制御、砂漠化がもたらす環境に与える影響、
    西アジア地域の人間活動の予測シナリオ作成及び人間社会への影響、及び温暖化メカニズムと連動した
    法学、国際関係、及び、国際経済の面での影響を社会科学的に分析・評価する。

3. 年次計画
人・自然・社会の共生に向けた研究