コアで何が分かるの?

海底下に広がる未知の世界「地下生命圏」

海の底のさらに下にはどのような世界が広がっているのでしょうか?

地球の表面の約70パーセントは海です。その海の底のさらに下にはどのような世界が広がっているでしょうか?

深い海の底には太陽の光は届きません。そのさらに下の海底下地層の中には、生命の星「地球」のなかでも最も生命活動の調査が行われていない未知の世界「地下生命圏」があると考えられています。

20世紀末まで、地下環境には、生物の存在しない「死の世界」が広がっていると考えられていました。1994年にイギリスのパークス博士によって、海底下800mぐらいまでの範囲に微生物が生息していることが報告され、海底下には地球表層(陸上や海水中)の生命体を遥かに上回る数の微生物が生息していることが分かってきました。

近年になり、海洋掘削による微生物学・生物地球化学の調査から、地下生命圏に棲む微生物の多くが、地球表層に棲む微生物とは異なる新しいタイプのもので、1ミクロン(1mmの1/1000)以下の非常に小さな細胞であることが明らかになりました。

ライナーに納められている南海トラフの「コア」


海底下に広がるアーキアワールドを発見

高知コア研究所の地下生命圏研究グループは、ドイツのブレーメン大学と共同で、世界各地の海底下から採取されたコアを用いて、そこに棲む微生物についての研究を行いました。地球深部探査船「ちきゅう」により青森県八戸沖で採取されたコアを含む、世界16カ所、深いところでは海底下約365mで採られたコアを使用し、その中に含まれる微生物の極性脂質とDNAの解析を行いました。その結果、海底下1m以上の深さではバクテリアが約13%、アーキアが約87%の割合で棲んでいることが明らかになりました。この成果は世界で初めての報告で、イギリスの科学雑誌「Nature」で発表されました。

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大海に浮かぶ地球深部探査船「ちきゅう」

大海に浮かぶ地球深部探査船「ちきゅう」

海底下微生物

海底下微生物

地球深部探査船「ちきゅう」により青森県八戸沖約80km、水深1,180mの海底下から採られたコアの中から発見された海底下微生物。体長:100分の1mm。

アーキアって何?

地球上の生命は大きく3つに分類されます。私たち人間やその他の動物、植物はユーカリア(真核生物)に、大腸菌や納豆菌などの微生物はバクテリア(真性細菌)に、超好熱菌や高度好塩菌などの極限環境微生物の多くはアーキア(古細菌)に分類されます。

生命を構成する3つの分類

アーキアは、身近なものでは、田んぼや牛の腸内などにもいる単細胞の微生物です。春に田んぼを見てみると、プクップクッと泡が出ているのが見えますが、これはアーキアが呼吸して出したメタンによるものです。アーキアは100度を超える高温のところ、塩分の高いところ、酸素がないところなど極端な環境のなかでも生息します。地下生命圏のような酸素も光もなく、地下深くなるにつれ高温になっていく環境で生息できるのはアーキアなのかもしれません。

角砂糖1個分にはなんと1億細胞を超える数の微生物が!!

高知コア研究所地下生命圏グループは、これまで肉眼の顕微鏡観察により行われていた微生物細胞の定量を、コンピュータによるイメージ分析により定量する手法を開発しました。この方法でコアの中に含まれる微生物細胞の定量を行った結果、角砂糖1個(1立方センチメートル程度のコア)には、平均して約1億細胞を超える数の微生物細胞が生息していることが明らかになりました。海底下の微生物細胞の数は、地球全体の生物量の約10%を占めるのではと考えられています。


角砂糖1個分にはなんと1億細胞を超える数の微生物が!!

地球と生命の進化の謎を解くために

火星などの地球外惑星を含めたすべての環境において生命が生き抜くためには、空間(居場所)・水・栄養(エネルギー)の3要素がバランス良く供給されていなければなりません。

海底下深くに微生物が存在し、何らかの手段で生き延びているということは、海底下の広大な空間の中で生命活動を支える栄養源が存在するということを示しています。一般的に非常にエネルギー供給の低い海底下では、海水や陸上から運ばれる栄養源だけでなく、地球内部のマントルやプレートの動きによってもたらされる無機物質や水の動きが重要であると指摘されています。

微生物は分裂(ひとつの細胞が二つに増えること)してその個体数を増やしていきます。例えば大腸菌の場合、最適な環境であれば20-30分ぐらいに1回分裂します。一方、海底下の微生物が1回分裂するのにかかる時間は、数百年から数千年とも言われています。このことからも、海底下に生息する微生物は海水や地質活動によって供給される栄養源を長い年月をかけて消費していると言えるでしょう。

また、海底下に棲む微生物の活動は、大陸沿岸におけるメタンの生成や消費にも極めて重要な役割をしていると考えられています。謎に満ちた海底下微生物の生態や機能を明らかにすることは広大な生命圏が果たす地球規模での元素循環への役割を解明することにもつながるのです。

海底下の微生物の数やDNAを調べる様子

海底下の微生物の数やDNAを調べる様子

海の底にも、いろんな生き物がいるんだね!

そうなんじゃよ、驚きじゃの〜。地球が誕生して間もない頃の世界には酸素はなかったんじゃよ。気温も今よりずっと高かったらしいぞ。そういう意味では、海の底の下の環境とよく似ておるんじゃよ。地下生命圏を解明することは、生命の歴史をひもとくきっかけになるかも知れんぞ!

楽しみだね〜!

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