「インド洋中央海嶺にて新熱水サイトを2つも発見、さらに白いスケーリーフットも発見っ」(2010)

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2009年10月に行われたYK09-13 Leg1航海 (首席・玉木賢策 (東京大学))においてインド洋中央海嶺の南緯18°から20°を「しんかい6500」および「ディープ・トゥ」にて調査した結果、2つの熱水サイトを発見した。海況が悪い状況、しかも実質6潜航しかできなかった悪状況の中で為し得たことでした。
2つのサイトはモーリシャス島およびロドリゲス島において、人間による乱獲が原因で絶滅してしまった鳥「DODO」および「Solitaire」から、生物多様性の保護を願って、それぞれ「DODO(ドードー)フィールド」、「Solitaire(ソリティア)フィールド」と名付けられました。

Nakamura, K., Watanabe, H., Miyazaki, J., Takai, K., Kawagucci, S., Noguchi, T., Nemoto, S., Watsuji, T., Matsuzaki, T., Shibuya, T., Okamura, K., Mochizuki, M., Orihashi, Y., Ura, T., Asada, A., Marie, D., Koonjul, M., Singh, M., Beedessee, G., Bhikajee, M., & Tamaki, K.
Discovery of new hydrothermal activity and chemosynthetic fauna on the central Indian ridge at 18°-20°s.
PLoS ONE (2012) 7:e32965.


左がDODOフィールドのつくし-2チムニー(356°C)、右がSolitaireフィールドのとうこん3チムニー(296°C)

そしてソリティアフィールドでは今まで同じインド洋中央海嶺の「かいれいフィールド」でしか発見されていなかったうろこをもつ巻き貝「スケーリーフット」が発見されました。しかし、「かいれいフィールド」の「硫化鉄の黒いうろこ」をもつ「黒いスケーリーフット」ではなく、「白いうろこ」をもつスケーリーフットでした。陸上にて、鱗の元素分分析を行った結果、白いスケーリーフットの白いうろこには鉄および硫黄がほとんどなく、明らかに違う性質のうろこをもつことが明らかとなっています。今回の硫化鉄をまとわない白いスケーリーフット発見は、黒いスケーリーフットがなぜ硫化鉄のうろこをもつことができるかという研究に対して、絶好の対照となることが期待されます。


左がソリティアフィールドで観察された「白いスケーリーフット」。
右がかいれいフィールドで確認されている「黒いスケーリーフット」


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「太古代アルカリ性熱水仮説の提唱」(2010)

35億年前の地質記録に基づき、初期太古代の海底の至る所から噴出していた高温熱水が、現在の地球の深海に見られるような酸性のブラックスモーカーではなく、アルカリ性のホワイトスモーカーであったことを提唱した。アルカリ性熱水環境は生命の誕生・初期進化に有利であるだけでなく、この仮説はこれまで謎に包まれていた縞状鉄鋼層やチャートの成因を簡単に説明することができる。

Shibuya, T., Komiya, T., Nakamura, K., Takai, K. & Maruyama, S.
Highly alkaline, high-temperature hydrothermal fluids in the early Archean ocean. Precambrian Res., (2010) 182:230-238


左上図 熱水の炭酸濃度とpHの関係を示したグラフ。熱水の炭酸濃度が高くなるにつれてpHが高くなる。
右図 現在と太古代初期の熱水フィールドを比較した模式図。 (a) 現在は硫化物(主に硫化鉄)のチムニーから酸性で黒い熱水が噴出し、熱水孔の周りには硫化物、もしくはそれが海水によって酸化された酸化物が堆積している。熱水孔から離れたところでは、生物起源(放散虫や珪藻)のシリカ粒子がゆっくりと沈殿している。(b) 太古代初期ではシリカからなるチムニーからアルカリ性で白い熱水が噴出していた。熱水と海水の混合域では海水中の鉄イオンがアルカリ性熱水により酸化されていた。熱水孔の近くでは熱水から直接沈殿した白いシリカが堆積し、熱水孔から離れたところでは鉄酸化物が堆積していた。
左下図 32億年前の縞状鉄鋼層 主に白い層(シリカ)と赤黒い層(酸化鉄)の互層から成っている。

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「実験室内「岩石ー水」高温高圧反応実験装置の構築とUltraH3 Linakgeの実験的検証の成功」(2009)

プレカンブリアンエコシステムラボでは、500°C、600気圧で実験室内で深海熱水生成反応を再現するシステムを創り上げた。高温高圧条件での実験の困難さが次々に襲いかかったが、苦節4年、遂に「太古の岩石コマチアイトから、命の源である水素がハイパースライムを維持するのに十分なくらいバンバン生成される」結果が得られた。ウキィー。

Yoshizaki, M., Shibuya, T., Suzuki, K., Shimizu, K., Nakamura, K., Takai, K., Omori, S., & Maruyama, S.
H2 generation by experimental hydrothermal alteration of komatiitic glass at 300°C and 500 bars: A preliminary result from on-going experiment. Geochem. J. (Express Letter), (2009) 43:e17-e22.


左上図 600°C、600気圧の条件まで設定可能なバッチ式「岩石ー水」高温高圧反応実験装置。
右上図 水と岩石は300℃以上の高温で、500気圧の高圧下で金の容器内で煮込まれる。
左下図 コマチアイトと純水の反応によって生成した水素濃度のグラフ。最大で2.4mmol/kgの水素を確認した。
右下図 天然の熱水系で採取された熱水中の水素と、本研究で観測された水素を比較。世界の水素発生熱水活動域の熱水と同等の水素が今回の実験において生じることを示した。


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「生命の最高増殖温度の更新と同位体的に異常に重いメタン生成の発見」(2009)

宇宙における生命の存在条件を知る上で欠かせない地球における生命の存在可能条件(Limits of Life& Biosphere)を更新する超好熱メタン菌をインド洋かいれいフィールドから分離することに成功した。JAMSTECシュガープログラムとプレカンブリアンエコシステムラボが共同で高温高圧培養法(高井法)を開発し、122°Cでの増殖を確認した。また深海底と同じ条件でのメタン生成では、「微生物の作るメタンは軽いのだ。文句あっか。」というこれまでの地球化学の常識を覆す「本当は微生物もおもーいメタンをつくるんだよ」という革新的な成果を得た。本成果は地球におけるメタンの起源や火星におけるメタンの起源を探る上で重要な手がかりを与えるものである

Takai, K., Nakamura, K., Toki, T., Tsunogai, U., Miyazaki, M., Miyazaki, J., Hirayama, H., Nakagawa, S., Nunoura, T., & Horikoshi, K. (2008) Cell proliferation at 122°C and isotopically heavy CH4 production by a hyperthermophilic methanogen under high-pressure cultivation. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105:10949-10954.

図 過去50年にわたる生命の最高生育温度記録更新の歴史(中)と今回分離されたMethanopyrus kandleri 116株の電子顕微鏡写真(左)、及び有機地球化学の教科書に載っている自然環境中のメタンの安定炭素同位体比による分類表(右)。従来121°Cで、この世すべての生き物は抹殺できると考えられてきたが、本菌はその人間の思い上がりを打ち砕いた(中)。また「微生物の作るメタンは同位体的に軽いに決まっている」と格言のように唱えられてきた考えも再考を迫られることとなっちまった(右)。


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「インド洋における現世の地球のUltlaH3 Linkageの完全証明とそれが40億年前の冥王代型タイプであることを発見」(2009)

中央インド洋海嶺に存在する「かいれいフィールド」は、ハイパースライムが世界最初に発見されUltraH3 Linkage仮説提唱のきっかけとなった熱水活動域であった。しかしながら、その熱水活動に「本当に超マフィック岩が関与しているか?」について、プレカンブリアンエコシステムラボと米国のライバル研究者との間で激しい論争があった。我々は遂に、その完全な証拠を提示することに成功し、論争に勝利した。

Nakamura, K., Morishita, T., Bach, W., Klein, F., Hara, K., Okino, K., Takai K., & Kumagai, H. (2009) Serpentinized troctolites exposed near the Kairei Hydrothermal Field, Central Indian Ridge: Insights into the origin of the Kairei hydrothermal fluid supporting a unique microbial ecosystem. Earth and Planetary Science Letters 280:128-136.
Kumagai, H., Nakamura, K., Toki, T., Morishita, T., Okino, K., Ishibashi, J., Tsunogai, U., Kawagucci, S., Gamo, T., Shibuya, T., Sawaguchi, T., Neo, N., Joshima, M., Sato, T., & Takai K. (2008) Geological background of the Kairei and Edmond hydrothermal fields along the Central Indian Ridge: Implications of their vent fluids’ distinct chemistry. Geofluids 8:239-251.

図 ハイパースライムが見つかったインド洋水深2450mにあるかいれいフィールド熱水活動とその周辺部の地形図。かいれいフィールドは海嶺軸東側の海丘に位置し、その周辺はどこもかしこも玄武岩に覆われている。そのためアメリカの研究グループは、「かいれいフィールド」熱水活動は通常の玄武岩に支えられた熱数活動であると主張してきた。一方、我々は、「かいれいフィールド」熱水に含まれる水素が異常に高濃度である点から、熱水循環のどこかに水素生成の原動力である超マフィック岩があると主張してきた。2006年の調査で「かいれいフィールド」の東側のUraniwa Hillsに、大量の超マフィック岩が存在することを突きとめた。それは、マントルかんらん岩ではなく、よりマグマに近い超マフィック岩、つまりよりコマチアイトに近い岩石だった。そして、その岩石の熱水変質によって「かいれいフィールド」の熱水組成がほぼ完璧に説明できることを明らかにした。さまあみろ。本研究はまさに冥王代のUltraH3 Linakgeのアナログがここに存在することを明らかにしたと言える。


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「最古の生態系を支える新しい地球ー生命相互作用UltraH3 Linkage仮説の提唱」(2006)

生命が深海熱水で誕生し、持続可能な生態系として原始海洋に伝播する過程を支える場として、「超マフィック岩ー熱水活動ー水素生成ーハイパースライム」のリンケージが存在したことを提唱した。またこのリンケージがマントルかんらん岩の露出によって現世の地球に再現される海底熱水系にのみハイパースライムが生き残っていることを予想し、かつ冥王代(約40億年前)の地球ではコマチアイトによって極めて普遍的に存在していたことを初めて理論化した。

Takai, K., Nakamura, K., Suzuki, K., Inagaki, F., Nealson, K. H., & Kumagai, H. (2006) Ultramafics-Hydrothermalism-Hydrogenesis-HyperSLiME (UltraH3) linkage: a key insight into early microbial ecosystem in the Archean deep-sea hydrothermal systems. Paleontological Res. 10:269-282.

左図 約40億年前と現世の地球の海洋ー地殻ーマントル構造と深海熱水活動の様式。初期地球では、マントルの温度が高かったために現世より深いところまでマントルが融けて、地殻が厚い。そのため、マントルの石が海洋底に露出することはない。一方、現世の海洋底では、地殻は地球初期よりは薄く、特に低速で拡大する海嶺ではマントルの石が露出する場合が存在する。
右図 約40億年前のコマチアイトに支えられた深海熱水活動のイメージ図


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「インド洋の海底熱水のさらに奥深くに地球最古の生態系の生き残りを発見」 (2004)

ハイパースライム(HyperSLiME)とは、Hyperthermophilic Subsurface Lithoautotrophic Microbial Ecosystemの略語であり、超好熱地殻内化学合成(岩石)独立栄養微生物生態系を示す。我々はこのハイパースライムと呼ばれる太陽のエネルギーとは無縁の地球を食べる超好熱生態系こそ地球最古の生態系と考えた。そこで世界各地の熱水活動域を探査し、インド洋中央海嶺の熱水活動域、かいれいフィールドのさらに奥深くに地球最古の生態系であるハイパースライムをついに見いだした。

Takai, K., Gamo, T., Tsunogai, U., Nakayama, N., Hirayama, H., Nealson, K. H., & Horikoshi, K. (2004) Geochemical and microbiological evidence for a hydrogen-based, hyperthermophilic subsurface lithoautotrophic microbial ecosystem (HyperSLiME) beneath an active deep-sea hydrothermal field. Extremophiles, 8:269-282.

左図 ハイパースライムが見つかったインド洋水深2450mにあるかいれいフィールド熱水活動域の写真。ハイパースライムを支える大量の水素が熱水に含まれていた。
右図 ハイパースライムの一次生産者である超好熱メタン菌Methanotorris formicicumの電子顕微鏡写真


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