CO2センサー開発と観測基盤構築 ENGLISH
背景 開発実施計画 二酸化炭素センサー測定原理 二酸化炭素センサー 生物付着防止対策 計測データなど データ標準化法・観測基盤構築
背景
独立行政法人海洋研究開発機構むつ研究所では、気候変動と変化の理解、評価、予測、軽減及び適応のため、海洋表層二酸化炭素センサーを製作する研究を始めました。
近年、温暖化や環境破壊などに国際社会の注目が集まる中で、地球環境の変動を広範囲にわたって継続的に把握する取り組みの重要性が高まっています。このため、平成15年のエビアンG8サミットでの小泉総理の提唱によって地球観測システムの検討が開始され、平成17年に全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画が策定されました。

GEOSSにおける「全球地球観測システム」とは、気候、大気、海洋、災害、生態系、沿岸などに関する現場観測と、各種の観測機器を搭載した地球観測衛星による衛星観測を統合したシステムです。衛星観測は広い範囲のデータを連続的に取得することができますが、現場観測データと比較して校正を行うことでさらに精度が向上します。1つの観測対象に対して現場観測と衛星観測の両方を行ってデータを統合化し、モデルによって時空間的隙間を埋めていくことが技術的な課題となっています。

観測項目の中でも二酸化炭素(CO
2)については、その増加に伴う温暖化が地球の気候変動の要因である可能性が指摘されて以降、大気中の濃度が多くの定点で観測されています。大気海洋間の二酸化炭素輸送についてはTakahashiらによる図(図1)が用いられますが、海水中のCO2観測は十分とはいえず、大気中CO2増加量の見積もりに比べ、海洋によるCO2吸収量の見積もりの誤差は大きいのが現状です。海洋において、時空間的に密な観測を行うためには、船舶による観測には限界があるので、全球に展開可能な表層漂流ブイに取り付ける海洋表層二酸化炭素センサーの開発が必要とされています。

独立行政法人海洋研究開発機構むつ研究所では、気候変動と変化の理解、評価、予測、軽減及び適応のため、海洋の二酸化炭素吸収量を推定する継続的な海洋表層の全球観測にかかる観測システムを構築するための機器開発し、実用化するという目的を掲げ、文部科学省からの受託研究として、海洋表層二酸化炭素センサーを製作する研究を始めました。本研究は、センサー開発のほか、開発機器から得られる観測値の評価と観測機器が国際的に使用されるための基盤を作ります。


【注釈】
本研究は文部科学省の「地球観測システム構築推進プラン」の一課題として、独立行政法人海洋研究開発機構が実施している「海洋二酸化炭素センサー開発と観測基盤構築」の研究概要を紹介するものです。
図1 二酸化炭素年間輸送量(Takahashi, 2002)