ODSが目指すもの
掘削科学という新たな学問を創出し地球の内部を解き明かす
海底下の地層を深部へと掘り進める掘削調査は、“地球の過去” を知る研究手段として発展してきました。
そして、掘削によって得られたデータが、海底資源や地震のメカニズムの解明などに生かされるようになったいま、掘削は“地球の未来” を築く科学として、さらなる進化を遂げようとしています。
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地震を起こした断層が目の前に
地球の表面を覆う十数枚のプレート。このプレート同士の衝突によって生じる摩擦が地震の原因となります。重いプレートが軽いプレートの下に潜り込んだ「沈み込み帯」を調査し、沈み込むプレートの形状、過去の地震で出来た断層の位置や形、岩盤の固さ、岩石の種類や構造、摩擦特性などを知ることは、地震を理解することにつながります。
「ちきゅう」は2012年4月から宮城沖で断層試料の採取や孔内温度の測定に挑み、2011年3月の東北地方太平洋沖地震で巨大津波を引き起こした断層すべりの原因を探りました。掘削で得たデータは、未来に起こりうる地震の予測、さらには地球の成り立ちの解明にとっても重要な手がかりとなるでしょう。
水没した第7大陸の謎を解き明かす
オーストラリア東方からニュージーランドにいたる海域には"Zealandia"と呼ばれる地球で7番目に大きな大陸が存在します。この薄く引き伸ばされた水没大陸には未だ解明されていない大陸分裂の謎が潜んでいます。我々は「ちきゅう」によるライザー掘削で"Zealandia"のリフト堆積盆(ロードハウライズ)を掘り抜き、白亜紀におけるゴンドワナ大陸東縁の分裂・沈降過程と火成活動、そして海洋環境変動を詳細に復元します。
大陸地殻はここで生まれていた!
伊豆・小笠原・マリアナ海域で弧状に連なる島々(島弧)の地下を音波で調べると、大陸地殻を形成する安山岩や花崗岩が生まれていました。プレートの沈み込みで島弧の地下のマントルが融解し、地表に上昇してくるマグマから大陸地殻が分化される過程に迫ります。
「マントルに手が届く」という人類の夢
地殻とマントルとの境目であるモホ面まで穴を貫こうとする「マントル掘削計画」は、マントル物質を直接採取する、モホ面の上下の岩石を調べる、海洋地殻の形成過程を探る、水循環の限界すなわち生命の限界を明らかにすることが狙い。マントルの深さと高温に耐える掘削技術の開発が進んでいます。
掘削と同時にリアルタイムでデータ計測
「ちきゅう」では、掘削パイプの先端に取り付けるドリルビットと各種センサーが一体化した計測装置、「掘削同時検層(LWD)」を用います。LWDは掘削と同時に孔壁イメージ、自然ガンマ線、電気抵抗、孔隙率、密度、音波速度など様々な物性データを取得することができます。これらとコア試料の分析データを統合することで、より高度な地下情報が得られます。また、高温・高圧などの過酷な環境に挑む掘削作業であっても、LWDによってリアルタイムに孔内状況を把握することで、安全かつ確実に掘削することができます。