大学院生日記(後編)〜青春を(カリブ海の)深海に賭けて(笑)〜

2013/07/30

矢萩 拓也(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)

中学生の頃に読んだ本で、初めて深海に息づく生命と有人潜水船「しんかい6500」に出会いました。それからというもの、授業中や、部活で野球をしているときでさえ、ふと「今頃、深海の生物達は何をしているんだろう?」と考えてワクワク、ニヤニヤすることがありました。

また、家族と山頂にある天文台に行き、宇宙を見ることも好きでした。「地球の外側に生物なんているのかな?」と、望遠鏡にしがみつく夜もありました。

あの日から10年近い月日が経ち、カリブ海までやってきた僕は、「しんかい6500」に乗り込んで生命の限界やその起源をひも解くという自然科学の疑問に真正面から立ち向かう研究者達に囲まれ、共に調査を行えたことに、心からの喜びを感じています。

無事に全ての潜航調査を終えて帰国した今、僕が初めて飛び込んだ船上での日々を思い返しています。


母船「よこすか」はカリブ海を後にし、パナマ運河を渡って太平洋を横断中です

○連日連戦の「しんかい6500」潜航調査 〜成功に導いた日々の準備〜
「しんかい6500」運航チーム(通称6Kチーム)や研究者の方々が、潜航前後の整備や搭載機器類の準備を徹底する姿から、ひとつひとつの仕事に手を抜かない大切さを学びました。野球の練習後、頬に土をつけながらグローブやスパイクを磨いていた"あの頃"の気持ちと重なる部分がありました。"ひとつひとつの仕事を大切にする姿勢"は、良い結果を生み出すための重要な要素であることを感じました。同時に、本調査に関わる全ての方々の協力があって初めて潜航が成功するという、調査の重みも強く感じました。

○研究者としての課題
航海中は、文字通りに朝から晩まで、ひとりの研究者としての在り方を学びました。お互いの研究を議論する中で、学生の僕が明らかに足りない部分、科学を行う上で理論が十分に構築できていなかったことや、そもそも基礎中の基礎の知識が不足していることを思い知らされました。
何より、いままでそんな自分に疑問を持たずに研究していた僕自身への悔しさと、未熟さを身にしみて感じました。悔しさゆえに、航海中に涙そうそうしたあの日の経験は僕の宝物です。心と心でぶつかってくださった先輩研究者の方々に心から感謝申し上げます。

「世界最深の熱水域に生息する動物群を相手に、生物相や極限環境への適応機構を明らかにすべく、日々議論を通し調査に取り組む!」という航海前の僕の意気込みは、これからも続いていきます。「しんかい6500」で採取された貴重なエビたちは8月にJAMSTEC横須賀本部に母船「よこすか」とともに帰ってきます。

生命の限界やその起源をひも解くという自然科学の疑問に真正面から立ち向かうために、しっかり研究していきます。

最後に、僕がこの航海で学んだ"研究に必要なチカラ"を100個ご紹介して、この大学院生日記〜青春を(カリブ海の)深海に賭けて〜と、QUELLEレポートカリブ海編を終わりにいたします。ご愛読をありがとうございました。

<QUELLE2013カリブ海編 〜研究者矢萩に必要な100のチカラ〜>
リーダー力、マネジメント力、情熱力、仕事力、パワー力、声かけ力、磁場力、仲間力、ホイホイ力、ノリ力、教育力、コミュ力、ホメ力、批判力、議論力、引き出し力、インプット力、アウトプット力、努力、カバー力、インテリジェンス力、ストーリー力、チャンストス力、天才力、アクセント力、自信力、共感力、心力、お見通し力、話力、展開力、朝力、効率力、教養力、伸ばし力、繊細力、研究力、厳力、ビジョン力、コツコツ力、不満力、執念力、優力、入口力、出口力、先取り力、問いかけ力、機会力、縁力、悩み力、基礎力、懐力、似力、考力、関東力、現実力、固定力、柔軟力、間力、底力、計画力、準備力、実験力、自立力、プロ力、集中力、執筆力、責任力、ブログ力、スマート力、広報力、理解力、注意力、タイミング力、風呂力、サポート力、対応力、実行力、精神力、祝福力、まとめ力、状況力、楽力、度肝力、攻撃力、反応力、組織力、整備力、信頼力、判断力、ここ力、指導力、エスコート力、安心力、紳士力、挑戦力、向上力、ガッツ力、一歩力、感謝力。

(おしまい。)