YK13-04 Leg1を終えて

YK13-04 Leg1首席研究者
北里 洋(海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域)
舩窪 舞(海洋研究開発機構 広報課)

4月13日から5月5日にかけて、大西洋を横断しブラジル沖の海底にそびえる2つの巨大な海山群を潜航ターゲットとして深海調査を行った、YK13-04 Leg1航海が終了しました。

この航海は悪天候で始まり、その後の潜航に影響があるのではないかと心配されましたが、終わってみれば「しんかい6500」7回の潜航と「YKDT」2回の作業が実施できました。数々のサンプルや深海の様子から、我々にもたらしてくれた成果は多大にあり、今後の研究に期待できます。

まずサンパウロ海嶺では、海山の麓から中腹、山頂にかけての調査が行われました。
海底は南極からの海流を思わせる漣痕を確認し、崖を登っていくと火山岩で構成される山は、全ての岩肌が黒色の鉄マンガンクラストで覆われていました。

リオグランデ海膨では、海山が大陸などの陸地を構成する花崗岩質であることが確認されました。今では海底に沈むリオグランデ海膨が数千万年以上前には陸地であった可能性を示唆しており、「伝説の大陸、アトランティス発見か?!」という報道が駆け巡りました。しかし、文明が存在したとされるアトランティス大陸とは年代がかけ離れており、残念ながら、その可能性はないといえるでしょう。ただ、大きな大陸のかけらが南大西洋の真ん中で発見されたことから、大西洋の地史を繙き直さねばならなくなった点で、新たなる「アトランティス伝説」のロマンを作り出したといえそうです。

南大西洋ブラジル沖は、海洋研究開発の手が入っていないフロンティアです。
生物が多様で豊かで、手つかずの深海環境が伺われ、未知の領域への手がかりを私たちにもたらしてくれました。
また、本航海を通じて研究メンバーは日本・ブラジルという国籍で隔たることなく、一つのチームとして機能し、数々の共同研究が生まれました。
科学技術分野における日伯連携を進める上で、重要な一歩となることは間違いないでしょう。


写真1:YK13-04 Leg1メンバー集合


南大西洋ブラジル沖リオグランデ海膨の海底にて大陸の痕跡と思われる花崗岩を確認