研究内容

深海・海洋生物に固有の生存戦略や技術体系に基づいた飛躍的な「知」の創造を図ります

産業革命以降の二酸化炭素放出量の増加によってもたらされた地球温暖化が明白に示すように、化石燃料や希少元素などに頼って築き上げてきた人間の技術体系は限界を迎えつつあります。今後、人間社会が持続可能な成長を達成するには、これまでとは根本的に異なるパラダイムに基づいた技術体系が必要です。その一方で生物は、炭素、酸素、窒素などごくありふれた元素を利用して、数億年に渡って豊かな多様性を維持してきました。生物の多様性は進化と適応の結果です。深海や砂漠、寒冷地など多様な環境で持続可能性を維持してきた生存戦略の背景には、人間の技術体系とは異なる「生物の技術体系」が存在しており、そこには持続可能性を達成するのに必要な技術開発のヒントが数多く隠されていると考えられます。

海洋生命理工学研究開発センターでは海洋・深海生物が陸上とは大きく異なる環境に適応する過程で獲得した独自の生存戦略や技術体系に着目し、それらを解明することによって新たな「知」を創造します。さらに産業界や大学、各種研究機関と密に連携しながら、これらの「知」に基づくイノベーションの創出を図り、温暖化、資源の枯渇、エネルギー問題など、持続可能性に向けた社会的課題の解決へと結びつけていきます。

生命機能研究グループ

“代謝”研究を中心に環境から深海生物まで、多様な研究課題に取り組みます

私たちは、深海微生物の未知代謝、深海生物の進化、そして深海の窒素・炭素循環に関わる微生物生態と、一見何の繫がりが見えないものの、実は(微)生物の代謝というキーワードで繋がる多様な研究課題に取り組んでいます。

深海微生物の代謝研究では、難培養微生物へも利用可能な新規メタボローム解析技術の開発の他、未知の炭素、アミノ酸代謝を明らかにし、有用物質生産等に繋がる合成生物学への活用を目指します。

深海生物の進化研究では、深海生物として世界で初めて樹立したホネクイハナムシの継代飼育系を活かし、共生細菌の感染もが関与する特異な身体構造の発生過程と、宿主−共生菌相互作用の解明を目指します。共生菌を受け容れる免疫系の仕組みや、骨を溶かし吸収する仕組みの解明は、生命科学だけでなく生体工学等への応用展開に繋がると期待しています。

そして、深海の物質循環研究は、深海微生物と物質循環の関係を明かすことで、地球温暖化や海底資源採掘など海洋環境撹乱要員に対する海洋物質循環変動予測の高精度化に貢献することを目指します。

新機能開拓研究グループ

海洋・深海生物の構造や機能、深海の極限環境における物理・化学過程を解明すると共に、それらの工学利用に関する研究開発を行っています

JAMSTEC内外の研究者と積極的な連携を図り、物理学や化学の視点を取り入れた学際的なアプローチによって、海洋・深海生物の構造や機能、深海の極限環境における物理・化学過程を解明すると共に、それらの工学利用に関する研究開発を行っています。

  1. バイオミメティクス
  2. 生物を模倣した技術開発(バイオミメティクス)は産業革命に匹敵するイノベーションとも言われ、2025年には30兆円規模の巨大市場を創出すると予測されています。我々は海洋や深海に生息する生物が持つ独自の構造機能に着目し、機能性材料、構造設計、センサー、ロボティックスなどへの応用に向けた研究開発を行っています。

  3. 極限環境下でのソフトマテリアル生成
  4. 深海の極限環境、特に熱水噴出孔に存在する高温・高圧環境では、油が水と混ざり合うなど常識では考えられない現象が起こります。このような極限環境に特有の物理化学的性質を利用して、ナノエマルションやポリマーなど、ソフトマテリアルの創成に役立つ新規プロセスを開発しています。

  5. ナノバイオテクノロジー
  6. ナノテクノロジーとバイオテクノロジーを融合した技術開発(ナノバイオテクノロジー)が盛んに行われていますが、その用途はドラッグデリバリーや再生医療などのメディカル分野に限られています。我々は超高感度センシング技術の開発などを通してナノバイオテクノロジーを海洋・深海生物研究へと応用し、これら生物資源の新たな有用性を創出するための研究開発を行っています。

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    深海(微)生物から新規有用機能を見出し、産業利用へ繋げるための研究開発を進めています

    私たちは深海(微)生物が有す新規有用機能(機能性蛋白質・脂質・糖質・遺伝子・低分子化合物など)や、それら機能によって生み出される新規化合物を探索し、産業利用へ繋げるべく研究開発に取り組んでいます。

    現在の主要な研究開発課題は、セルロースやリグニンなどの有効利用に資する深海(微)生物機能に関する研究開発です。いずれも地球上に豊富に存在するバイオマスでありながら、未だ十分に利活用が進んでいない未利用資源として着目されています。我々は深海堆積物等からこれらの基質を利用する微生物等を見出し、その機能を担う代謝経路や酵素の探索・研究開発を実施しています。また外部研究者と協同で分解産物の利用に関する研究開発も推進しています。

    深海バイオ・オープンイノベーションプラットフォーム

    オープンイノベーション体制による深海バイオ資源の利活用を進めます

    JAMSTECが過去20年以上にわたって進めてきた深海微生物機能の産業応用を目指した研究開発は、深海微生物から見出した新規耐熱性アガラーゼが遺伝子解析用試薬として商品化されるなどの成果をあげてきました。2014年からはオープンイノベーション体制を構築して深海生物資源のさらなる有効利用を図るべく、海洋生命理工学研究開発センターが中心となってJAMSTECが保有する深海堆積物試料の外部機関への試験提供を行うなどの準備を進めてきました。

    その成果を基にして2017年9月に設立された本プラットフォームでは、有用微生物探索に用いる深海堆積物、これまでにJAMSTECにおいて単離されたスクリーニング用菌株、遺伝子資源としての深海試料や、深海試料・生物等から得た環境ゲノム情報等を国内民間企業および大学等研究機関に広く提供するための体制構築を進めるとともに、試験的な試料提供を実施しています。