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大陸が考慮されたマントル対流の数値シミュレーション



■はじめに

地球内部の進化やダイナミクスにおける未解決問題を解明しようとするとき、 数値シミュレーションは、地質学・地球物理学的観測、岩石の物性実験、 地球化学実験、理論などに並ぶ重要な研究手法の一つである。 特に、マントルの内部構造の進化、ひいては地球の進化に多大な影響を 及ぼしてきたと考えられるマントル対流と表層運動(大陸・海洋リソスフェアの運動) との熱的・力学的相互作用の歴史(時間変化)の解明には、 数値シミュレーションが非常に有効な手段である。

地球表層を「漂う」大陸(大陸リソスフェア)は離合集散を繰り返しながら 約4〜7億年周期で超大陸を形成する。 地質学的証拠から少なくとも過去に3回、 超大陸(3.5億年前のパンゲア超大陸、9億年前のロディニア超大陸、18億年前のヌーナ(コロンビア)超大陸)が 形成されたことが分かっている。6.5億年前のパノティア(ゴンドワナ)超大陸は比較的小規模の超大陸である。 このような大陸の離合集散(超大陸サイクル)は ウィルソンサイクル(Wilson, 1966)が繰り返されて起こり、 マントルの内部構造の進化に大きな影響を及ぼしてきたと考えられる。

図の説明: 時間と超大陸形成の関係。 緑色で示された期間はそれぞれの超大陸が形成され 分裂が開始するまでの時間を表す。

■これまでの大陸モデル

大陸、あるいは超大陸が考慮されたマントル対流の数値計算研究は、 1988年に発表されたガーニスの二次元矩形モデル(Gurnis, 1988)を筆頭に、 1990年代の計算機性能の向上を経て、1999年に発表された我々の三次元球殻モデル以降、 世界の幾つかのグループによって研究が進められている。 これらの研究から得られた主な結論は次の通りである。 (1)超大陸による熱遮蔽効果(Anderson, 1982)によって、 超大陸直下のマントルの温度が上昇し、やがてマントルに全球規模の 流れを引き起こし、degree-1温度構造(超大陸下に上昇流、 海洋側に下降流が卓越する構造)が形成される。 その結果、CMBから大規模な上昇流が数億年の時間スケールで超大陸下に発生する (Yoshida et al., 1999; Yoshida, 2010a)。 (2)超大陸縁辺での海洋プレートの沈み込みによる補償流(CMBからの上昇流) によっても、超大陸直下の温度上昇が起きる(Zhong et al., 2007)。 (3)超大陸下の熱遮蔽効果に伴うマントルのdegree-1構造の形成(結論(1))は 大陸の周期的な離合集散を導く。特にコアからの加熱の割合が大きい場合には、 積極的な上昇プルームの発生により、その周期が実際の大陸の離合集散のよう に不定期間隔になる(Phillips and Bunge, 2005; 2007)−などである。

図の説明: 超大陸を変形のしない剛体的な「蓋」(橙色)と仮定し、 発達した下降流の上に設置した場合のマントル対流の時間変化。 時間が経過するにつれて、 超大陸下のコア・マントル境界から上昇流が発達する。

■新しい大陸モデル

しかしながら、これらの研究では、大陸は剛体的な(変形のしない)高粘性の「板(あるいは蓋)」と モデル化されてきた。大陸は本来、地球史を通じてマントル物質の融解と化学分化により生成されるものの、 その存在はマントル対流システムとは力学的にほぼ独立した領域(物理的には、 物質拡散がほぼゼロの流体の集合体)だからである。そのため、 マントル対流計算で用いられる通常の計算手法の枠組みでは計算精度の問題により、 大陸をモデル化することが非常に困難であった。 そこで、私は最近、粒子法と呼ばれる手法を発展させることで、大陸自体の変形とその移動が可能な 独自の三次元マントル対流モデルを発表した(Yoshida, 2010b)。 マントルと大陸のレオロジーや物性に関して現実的なパラメータを 用いて予備的な計算を行ったところ、超大陸の自発的な分裂、 超大陸下の熱遮蔽効果、大陸縁辺での海洋プレートの沈み込み、 約5億年後の大陸同士の衝突、大陸の衝突帯の形成−など、 ウィルソンサイクルの大部分を再現する計算結果が得られた。 また、地球の「拡散プレート境界」を模した大陸縁辺の低粘性帯の存在が、 地質学的時間規模での大陸クラトンの安定性に寄与することが分かった。

図の説明: 変形と移動が可能な大陸が考慮されたマントル対流の数値シミュレーション。 矢印に沿って時間が進む。 紫色はマントル上昇流、水色はマントル下降流(沈み込むプレート)、 茶色は大陸の位置を表す。

■参考文献


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