古海洋環境研究チーム

はじめに

古海洋環境研究チームでは、北太平洋やその周辺の縁辺海(オホーツク海、ベーリング海など)を対象海域としており、環境データを過去に遡って採取し、急激に生じた地球規模の気候変動の実態や、伝播メカニズムを明らかにすることを目的としています。さらに、地球規模気候変動に対して海洋物質循環がどう応答して変化するのかを明らかにしたいと考えています。

過去の気候変動復元

海底堆積物や湖沼堆積物などに記録された各種代替指標(プロキシー)を分析し、観測データを過去に遡ることで1000年から数十年程度の周期性を持った気候変動の復元を行います。またセジメントトラップ実験を用いて、生物起源粒子を時系列に採取し、生物生産の季節変化や年変化を明らかにする研究も行っています。最近、特に力を入れているのは、北極海のセジメントトラップ係留系による生態系起源粒子の質・量変化と海氷激減の関係を明らかにする研究です。

図1:堆積物採取およびセジメントトラップ係留系設置海域

プロキシーデータと古気候モデルによる連携研究

気候変動の伝播メカニズムを明らかにするために古気候モデルと連携した研究を実施しています。現在はハワイ大学のLOVECLIM、東大大気海洋研究所のMIROCによる古気候モデルと連携し、融氷期(1万7500年前から1万1500年前)に繰り返された1000年スケール気候変動に応答して変化した北太平洋中・深層循環を明らかにする研究を行っています。さらに、炭素循環の変化についても実施中です。

図2: プロキシーデータと古気候モデルの連携研究結果の一例:
最終融氷期のハインリッヒイベント1(1万7500年前~1万4500年前)の時代に形成された北太平洋深層水。
左:西部北太平洋沿岸域の海底堆積物に記録された微化石の放射性炭素から見積もられた中・深層水の循環年齢。
右:古気候モデル(LOVECLIM)によって再現されたハインリッヒイベント1の時代の中・深層循環年齢(2万年前の最終氷期の時代との偏差)。

古気候モデルは実際の堆積物に記録された放射性炭素の結果をよく再現しており、この時代、両者の結果から約2500mの深さまで深層水が形成されていたことが明らかになった。

プロキシーの開発

より確度の高い過去の環境を復元するために、誰も出していないデータを出すためには従来のプロキシーの高精度化や新しいプロキシーの開発が不可欠です。当チームではそういう全く新しいプロキシーの開発も実施しています。

図3-1:1つぶの石英粒子を用いたカソードルミネッセンスによる風成塵の起源推定(岡山理科大学との共同研究)
図3-2:生物起源のオパール(SiO2)の酸素同位体比測定法の開発(東京大学との共同研究)
図4:上部:浮遊性有孔虫の飼育によって明らかになったチェンバーの成長と構造
下部:当チームで飼育中の浮遊性有孔虫Globigerinoides sacculifer (左)、and Neogloboquadrina dutertrei (右)

現在、飼育させた浮遊性有孔虫の炭酸塩を利用して海洋酸性化による炭酸塩溶解度を定量化するための指標開発に挑戦中である。