JAMSTEC  >  地球環境変動領域  >  地球温暖化予測研究プログラム  > 地球システム統合モデリング研究チーム

代表的濃度経路(RCP)における土地利用変化排出の整合性評価

 気候変動に関する政府間パネル第5次評価報告書(IPCC AR5)に向け、気候変動予測モデルの入力データとなるRepresentative Concentration Pathways (RCPs)シナリオが作成され公開されている。本チームは、4つのRCPsシナリオのうち 2100年に放射強制力6W/m2となるRCP6.0シナリオでの、土地利用変化(LUC)による正味炭素排出と植生火災によるエアロゾル排出シナリオの作成を担当した。本研究では、海外の研究機関が作成したシナリオも含め、LUCによる正味炭素排出量データの整合性を評価するため、詳細な陸域生態系モデルや地球システム統合モデルを用いて行った計算の結果を示す。なお本研究は、環境省の地球環境研究総合推進費による支援のもと行われた。
 まず本研究の手法を説明する。作成されたRCPでは予測されたLUCやCO2濃度がデータとして配布されている。それらを用い、陸域生態系モデルVISITを駆動して、LUCに起因する正味炭素放出量を評価する。一方、RCPシナリオ作成時に用いたモデルからもLUCによる正味炭素放出量は提出されており、標準データとして配布されている。この両者を比較することにより、標準データの整合性を評価する。
 その結果、両者のRCP6では一致の度合いが高いことが分かった。RCP6では標準データ作成時にもVISITが用いられているので、これは期待された結果と言える。一方、他のRCPシナリオでは今回の評価と標準データとの差が顕著に大きくなる時期が存在している。こうした違いの主な原因は、植生再成長による吸収と、伐採による排出の評価量がモデルに大きく依存することと考えられる。
 上記の評価ではCO2による施肥効果は考慮されているものの、温暖化が陸域生態系に与える影響までは考えられていなかった。そこで、温暖化予測のため開発された地球システムモデルの結果を解析することにより、温暖化が生態系を変化させることで、土地利用排出に生じる差異も評価した。図1にその結果を示す。評価はRCP6に基づいて行っている。2020年ころから以降、温暖化のシグナルが優位になるにつれて、土地利用排出の評価への温暖化の影響も大きくなり、最大3PgC/yr程度の差を生じうることが分かった。
図1:RCP6.0に基づいた将来の土地利用起源のCO2排出の予測。地球システムモデルを用いたもの(赤線)と、RCPの標準データ(黒線)、単体の陸域生態系モデルを用いて評価したもの(青線)。