JAMSTEC北極航海ブログ

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海の中の「よそもの」

記事更新日:
2010年9月23日

copepoda.jpg

海の中には植物プランクトンなどの肉眼では見えないものから、魚やクジラなど大きな生き物まで様々な海洋生物が生存しています。その中でも私が研究している動物プランクトンは、植物プランクトンを摂餌し魚などに食べられることによって、植物プランクトンが光合成によって作り出したエネルギーを魚などへの高次捕食者へと受け渡す役割を持っています。その動物プランクトンバイオマス (生物量) の中で優占するのが、カイアシ類 (Copepoda) です。

写真はバロー渓谷で採集した太平洋産種の大型カイアシ類Neocalanus cristatus C5です。C5というのは発育段階 (copepodid stage) のことで、彼らは脱皮をする度に遊泳肢 (swimming leg) の数や腹部 (urosome) の節の数が増えます。写真の個体は、遊泳肢が5本で腹部の節が4つあることからcopepodid stage 5だということが判別できます。この種は北太平洋の亜寒帯域からベーリング海に分布し、当該海域の動物プランクトンバイオマスに優占します。つまり、北極海では「よそもの」です。

写真の個体は、ベーリング海から北極海に流れてきたものを私がプランクトンネットで採集し、顕微鏡下で撮影したものです。新鮮なので色素の分布がよく分かります。また、体内にある透明な液体は油 (ワックスエステル) です。彼らは春から夏に体内に油を蓄積した後に深海へ潜り、秋から冬にかけてそのエネルギーを使って休眠し、そこで成熟し産卵します。

私が注目しているのは、彼らがこのまま北極海で生き続け、子孫を残していくことができるかどうかです。勿論、北極海にも同じようなカイアシ類が分布していますので、流されてきた「よそもの」が北極海産のカイアシ類と競合関係にあると考えられます。温暖化によって海氷面積が激減した今、彼らの運命は変わりつつあるのかもしれません。

(文責:北海道大学 浮遊生物学研究室 松野)

追記:9月26日に正確を期するために一部表現を改めました

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