マリンスノーをとらえるセディメントトラップ...再び
- 記事更新日:
- 2011年9月30日
2011.09.29
現在、カナダ北岸を航海しています。天気は曇りがちですが、波は穏やかな日が多いです。私(小野寺)は、珪藻や珪質鞭毛藻など珪質の殻を持つ植物プランクトンの沈降粒子(マリンスノー)や、海底堆積物に含まれる珪質殻の化石群集を研究で扱っています。
北極海には、北太平洋起源の海水がベーリング海峡から北極海へ流入していて、その多くはアラスカ北岸から現在私たちがいるカナダ北岸を沿うように流れてきています。1999年5月に北大西洋で、本来は北太平洋亜寒帯にのみ生息し大西洋側では生息していなかった珪藻の一種Neodenticula seminaeを、海外の研究者らが大量に発見しました。その研究者らの論文(Reid et al., 2007)によると、この珪藻が大西洋に出現したのは、この珪藻を含む太平洋水がベーリング海峡を通り、私たちが現在航海をしている北極海の北米沿岸を経由して大西洋側に到達したためです。1998年夏季は、北極海で海氷のない水域が北米大陸沿岸に連続して広がっており、夏季の海氷分布の変化がこの珪藻の進出に関係したようです。ほかの説として、船のバラスト水による人為的な輸送も考えられます。しかし論文によると、当時の北極海航路は輸送量が限られており、主要な亜熱帯経由の航路だと、亜熱帯域を移動する過程で問題の亜寒帯固有種は生き残れないとしています。
この種は北太平洋亜寒帯において、沈降粒子の一翼を担う代表的な珪藻種とされており、生物ポンプによる海洋中深層への粒状有機炭素の輸送を考える上で重要な種の一つとされています。このような種が今後北極海にも定着するかどうか、あるいは北極海や北大西洋において、珪藻をめぐる生態系や海洋中深層への粒状有機物輸送に変化が今後出てくるのかどうか個人的に興味を持っています。
過去の地質時代に目を向けると、グリーランド沖において、この珪藻種の出現が約125万年前から約84万年前にかけての間だけ見つかっています。この年代は、氷期‐間氷期サイクルがそれまでの4万年周期から10万年周期へと移り変わる地球表層環境の大きな遷移期にあたります。過去の変遷と現在から将来にかけて起きることは必ずしも同じではないと思いますが、北極海とその周辺海域における過去と現在の環境変動の両方について、これから少しずつ調べていければと思っています。今回のSir Wilfrid Laurier号乗船の目的は、昨年北極海の2箇所に沈めたセディメント・トラップ(沈降粒子を捕捉する装置; 写真)の回収と再設置です。なんとか成功すると良いのですが...。
小野寺

海洋地球研究船「みらい」より2010年に設置したセジメント・トラップ. このセジメン・トラップを今年はカナダ砕氷船ローリエ号で回収する(撮影: 筑波大学・佐藤真奈美)
現在、カナダ北岸を航海しています。天気は曇りがちですが、波は穏やかな日が多いです。私(小野寺)は、珪藻や珪質鞭毛藻など珪質の殻を持つ植物プランクトンの沈降粒子(マリンスノー)や、海底堆積物に含まれる珪質殻の化石群集を研究で扱っています。
北極海には、北太平洋起源の海水がベーリング海峡から北極海へ流入していて、その多くはアラスカ北岸から現在私たちがいるカナダ北岸を沿うように流れてきています。1999年5月に北大西洋で、本来は北太平洋亜寒帯にのみ生息し大西洋側では生息していなかった珪藻の一種Neodenticula seminaeを、海外の研究者らが大量に発見しました。その研究者らの論文(Reid et al., 2007)によると、この珪藻が大西洋に出現したのは、この珪藻を含む太平洋水がベーリング海峡を通り、私たちが現在航海をしている北極海の北米沿岸を経由して大西洋側に到達したためです。1998年夏季は、北極海で海氷のない水域が北米大陸沿岸に連続して広がっており、夏季の海氷分布の変化がこの珪藻の進出に関係したようです。ほかの説として、船のバラスト水による人為的な輸送も考えられます。しかし論文によると、当時の北極海航路は輸送量が限られており、主要な亜熱帯経由の航路だと、亜熱帯域を移動する過程で問題の亜寒帯固有種は生き残れないとしています。
この種は北太平洋亜寒帯において、沈降粒子の一翼を担う代表的な珪藻種とされており、生物ポンプによる海洋中深層への粒状有機炭素の輸送を考える上で重要な種の一つとされています。このような種が今後北極海にも定着するかどうか、あるいは北極海や北大西洋において、珪藻をめぐる生態系や海洋中深層への粒状有機物輸送に変化が今後出てくるのかどうか個人的に興味を持っています。
過去の地質時代に目を向けると、グリーランド沖において、この珪藻種の出現が約125万年前から約84万年前にかけての間だけ見つかっています。この年代は、氷期‐間氷期サイクルがそれまでの4万年周期から10万年周期へと移り変わる地球表層環境の大きな遷移期にあたります。過去の変遷と現在から将来にかけて起きることは必ずしも同じではないと思いますが、北極海とその周辺海域における過去と現在の環境変動の両方について、これから少しずつ調べていければと思っています。今回のSir Wilfrid Laurier号乗船の目的は、昨年北極海の2箇所に沈めたセディメント・トラップ(沈降粒子を捕捉する装置; 写真)の回収と再設置です。なんとか成功すると良いのですが...。
小野寺

海洋地球研究船「みらい」より2010年に設置したセジメント・トラップ. このセジメン・トラップを今年はカナダ砕氷船ローリエ号で回収する(撮影: 筑波大学・佐藤真奈美)















