私の研究 ~放散虫~
- 記事更新日:
- 2011年10月 3日
地球は、その表面の多く (70%) が海で占められていることはよく知られています。しかし、海の底の多くが海洋プランクトンの遺骸(いがい)で覆われていることは皆さんご存知でしょうか? なんと海底を覆う海洋プランクトンの遺骸の厚さは500 mを超えることも少なくないのです! その遺骸のほとんどは、珪藻、放散虫(レディオラリアあるいはラジオラリアとも言う)、有孔虫、ハプト藻などから成ります。その中で、今回は私 (池上)が研究対象としている放散虫についてお話したいと思います (参照: http://researchmap.jp/ikesun/)。
放散虫は外洋では、赤道海域から南大洋や北極海などの高緯度海域まで広く分布する単細胞の原生動物プランクトンです。海洋のごく表層から深海 (水深8000 mでも生きたものが確認されている)まで鉛直的にも幅広く多様な種が棲み分けしています。現在の海には約1,000種の放散虫がいますが、化石を含めると現在までに約1万5,000種が記載されています。
放散虫は非晶質シリカの内骨格を持つため、CCD以深 (炭酸塩が溶けてしまうような深度)の海洋堆積物中でも化石として保存されます。従って、様々な堆積環境下で採取することが可能なのです。放散虫の骨格の大きさは40 μm~400 μm (0.04~0.40 mm)と非常に小さく、顕微鏡観察が必要です。このような微小な化石のことを微化石 (びかせき)と呼びます。観察により得られた放散虫微化石の産出量や群集組成などから、地層が堆積した時代や、環境を推定することができます。そのため、放散虫は地質学の分野で大きな役割を果たしてきました。
これらの特徴に加え、放散虫の魅力を語る上で欠かせないのが、その形の美しさです。まるでシャンデリアやレース飾りのような美しい骨格は、時に美化石と呼ばれます。皆さん、ぜひインターネットなどで画像検索してみて下さい。きっとご興味を持たれるはずです。写真は、第11回九州大学総合研究博物館公開展示において、来場者に配布したポストカードの一部です。
私 (池上)は、海底地層を形成するもとになる、海洋沈降粒子 (海洋で生産されたプランクトンの遺骸や粘土鉱物などの一部) 中の現生放散虫の研究を行っています。海洋沈降粒子のフラックス (沈積流量)や組成の変動を調べることで、現代の海洋炭素循環や環境変動を知ることができます。
この海洋沈降粒子の変動を調べる上で欠かせないのが、セディメント・トラップという観測装置です。セディメント・トラップは海中に設置してから、約1年の間、2週間ごとに沈降粒子を自動捕集してくれます。セディメント・トラップを毎年設置することで、沈降粒子の季節変動のみでなく、経年変動も時系列で知ることができます。
今回の北極航海で、私は、JAMSTECの小野寺さんとともに、セディメント・トラップの回収と再設置に取り組みます。北極海でのセディメント・トラップの設置は去年が初めてで、今年が2年目となります。これから毎年北極海で設置を続けて行くことで、よりその重要性が増していくことでしょう。
池上(九州大学)


第11回九州大学総合研究博物館公開展示において、来場者に配布したポストカードの一部 (参照: http://researchmap.jp/muzw6srwr-59571/#_59571)。















