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夏季の東シベリアの北方林(タイガ)蒸散水の大気混合過程

記事カテゴリ:
ニュース, 成果報告
記事更新日:
2012年11月16日

陸域環境変動研究チームの上田哲大客員研究員と、飯島慈裕主任研究員、矢吹裕伯チームリーダーらは、水蒸気の安定同位対比測定によって、夏季の東シベリアの北方林(タイガ)からの蒸散が水循環過程に果たす役割を明らかにしました。この結果は、水文学の国際学術誌Hydrological Processesに掲載されました。

観測の結果、夜明けから午前中にかけて気温の上昇と共に植物の蒸散や大気混合層の発達が開始し、特に植物の蒸散由来の水蒸気の流入が顕著であったことが示されました。その一方、午後は気温の上昇に伴い大気混合層の発達が著しくなり、混合層上方の乾燥した自由大気の取り込みが生じ、その水蒸気が混合層内に取り込まれたことが示唆されました。

これらの結果は、広大なタイガの蒸散由来の水蒸気が大気混合層での混合過程を通じて、どのように水循環として大気と相互作用をするかを明らかにする上で重要な知見となります。例えば、タイガで生じる対流性降水の形成過程等、陸域と大気間での水蒸気のやり取りを今後考察していく上で有用といえます。

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写真 東シベリア・ヤクーツクのタイガ(カラマツ林)(左)と、水蒸気サンプリングの様子(右)

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図.大気水蒸気同位体比の日変化の観測結果
【説明】大気水蒸気同位体比(δ18O)は-29.7~-18.4‰で変化し、その一方、植物体内水の同位体比(δ18O)は-17.9~-13.3‰と大気水蒸気よりも高い値を示しました。植物体内水の同位体比は植物の蒸散によって大気中に放出される水同位体比を反映します。また、晴天日では夜明け前から午前中にかけて気温・大気混合比の上昇と共に同位体比は1~5‰上昇し、午後は気温の上昇に伴い混合比は低下、また同位体比は2‰程低下しました。すなわち、森林内の蒸散由来の水が大気と混合していく中、自由大気の取り込みが顕著になる様子が示されています。

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