気候の季節予測に基づくマラリア発生予測

南部アフリカにおける気候予測モデルをもとにした感染症流行の早期警戒システムの構築

近年、世界各地で感染症による健康被害が増えています。感染症の1つであるマラリアは、91の国と地域で確認されており(WHO 2017)、マラリア原虫を保有するハマダラカ属の蚊がヒトから吸血することで感染します。マラリアの媒介蚊のライフサイクル(繁殖率、活動など)には、生息地の環境が大きく作用し、特に、気温や降水量の影響が大きいと考えられています。そのため、気候変動や地球温暖化によって気温や降水量が大きく変動・変化すると、これまで報告されていない国や地域で感染症が広く流行する可能性があります。アプリケーションラボではこれまで、JAMSTECのスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を使って世界の気候変動を数ヶ月以上前から予測する「季節予測システムSINTEX-F」を開発してきました。特に、南アフリカでは、気温や降水量の変動に熱帯太平洋の気候変動現象であるラニーニャ現象や南インド洋の亜熱帯ダイポール現象が関わっており、これらの現象を予測することで、数ヶ月前に南部アフリカの降水量や気温を高分解能(水平10km程)に予測するシステムを開発してきました。この予測情報を用いて、機械学習をベースとしたマラリア発生率の予測モデルを開発し、南アフリカ・リンポポ州におけるマラリア発生率がいつ、どこで、どの程度増えるかを予測するシステムを現地に導入し試験運用を実施しています。また、インドの沿岸域におけるコレラの発生など、同様に気候変動の予測情報を他の感染症の予測に繋げるための研究も展開しています。

マラリアの発生と気候変動の関係を表す模式図。
南アフリカ・リンポポ州における過去のマラリアの発生予測例。

付加価値情報創生部門 アプリケーションラボ