世話人:渡部裕美・山本啓之
| 13:00- | このセミナーの趣旨説明(山本啓之)「科学と現場を結びつけたい」というメッセージ |
| 13:05- | 熱水生態系の講義「熱水活動に関する既往知見から導かれる概念的理解と伊平屋北掘削事後調査による実践的理解の必然的一致が突きつける環境影響評価の本質的課題」(川口慎介) 「概念的理解」を確立することは,個別の対象(事象・現象)の理解・解釈につながる。たとえば一般的に「熱水生態系」と呼ばれる大型生物群集を伴う狭義の熱水生態系は、海底面での熱水の希釈率がだいたい3-300倍であるところに形成される。熱水生態系の分布や規模は、熱水の熱源・噴出量・噴出様式の3つのパラメターで概念的に理解することができる。一方,実際に行った伊平屋北熱水掘削事後調査では、熱水の噴出量が増え、その噴出様式が拡散的で,生態系が大きくなった(熱源を冷やすスピードが早くなったかは不明)。これら伊平屋北での「実践的理解」はすべて既往知見の蓄積が導いた「概念的理解」と一致する。つまり現状の「概念的理解」には,すでに,海底での人為操作(開発など)で熱水生態系に起こることを予測するだけの威力があると判断できる。一方,開発が及ぼす環境影響の空間的な広がりについては,知見の集積が乏しく理解が不足している。伊平屋北掘削では,物理・化学環境の変化に対し生態系が素早く(二年以内)応答していることが判明したため,生態系自体のモニタリング以上に,低層流や物質移動などの物理・化学環境を把握しておくことが重要と思われる。これを調べるために,熱水噴出域における化学トレーサー散布と時間分布のモニタリングの実施を提案する。 会場からの質問・コメント:生命の生息限界について質問。生物が増えるということだけでなく、どのような変化があったかの重要性について。概念的理解という部分での説明が判りにくい。 |
| 13:55-14:00 | 休憩 |
| 14:00- | 環境調査の講義「熱水活動域での環境調査の実際」(三輪哲也) 環境影響評価の行政的な手法について、海洋での事例として、中部国際空港での事業を紹介。また東京湾の多様性評価(東邦大・風呂田先生)、河川の堤防を作るための生態系評価(北大・中村先生)の例を紹介。伊平屋北の科学掘削の事後調査(モザイク写真の紹介)では、マッピングにより掘削孔から12-15mでの影響調査の例など。また保全策での遺伝的解析の重要性、伊是名海穴でのJOGMECの取り組みを紹介(2012.7金属資源レポート、2011中間評価報告書)。 JAMSTECのfacilityの紹介では、低価格で多数供給できるDrifterや係留系の活用、VPR 、AUVs、CO2モニタリング、小規模なLander system(Max Plankの例)、JAMSTECが開発している「つくよみ」という水中glider、OBSの中身を物理化学センサーにして観測する提案、江戸っ子1号(開発費2000万円以内)などの紹介。小型で比較的安価なシステムを短時間で多数展開してたくさんのデータを取得することを提案。 会場からの質問:国際的な熱水鉱床開発の情報収集も必要。Lander systemは国内でも利用できるか、JAMSTECからの技術は提供の可能性はあるのか。 |
| 14:50-15:00 | 休憩 |
| 15:00- | 議論「熱水生態学を基礎にした環境影響評価を考える」(山本啓之) ある環境を開発した場合に、人々の不安の解消と環境の活用のために環境アセスメントがある。戦略的環境アセスメントの強化とアセスメント法の改正(平成25年施行予定)により、専門家の役割と責任(関与の透明性)が大きくなる。都市部の近くでは住民や自治体との対話から合意を得るが、外洋・深海では誰と対話すべきかがあいまいになる。ミレニアム生態系評価と生態系サービス、保全の目安としてのresilienceやtipping pointという評価の基準を考える。調査解析技術として海洋でのGISや数理統計の活用が必要。熱水生態学を主題として5月の終わりにシンポジウムを予定しており、今回の議論も継続する。 会場からの質問と議論:深海の資源開発でもstakeholderは微生物やカニではなく、人間ではないか。NautilusがPNGに出した報告書が唯一の熱水鉱床の環境影響評価の例である。評価する人間がstakeholderになるが、それでも許されるのか?>科学者として恥ずべきことはしないということ。 Deep-water horizonの環境影響評価は?>すでに評価委員会が組織されている。行政での専門家委員会が機能不足に落ち込んでいたことがDeep-water horizonの原因のひとつとの指摘もある。事後調査では石油成分が深海にも拡散したことが判明。 沿岸域などで開発された手法をそのまま用いるだけで良いのか?横の連携を強めるべきなのでは?>深海や外洋はアクセスの問題から制限が生じている。特性に応じた方法で対処するべき。 アセスメント法改正で出てきた「生態系を場として捉える」について。>今までの環境アセスメントよりも事業者に負担のかからない方法を模索した結果のようで、新しい概念が導入されたものではない。 |
本セミナーが今後どのような点に配慮していくべきかを検討するために、参加者を対象にアンケートを依頼した。
アンケートの回答数は17で、そのほとんど(14名)が民間企業に所属する方によるものであった。セミナー開催の情報を得た方法は分散していたが、メーリングリストや知り合いからの紹介が半数以上を占めており、参加者は限られていた。実際、芳名録から確認したJAMSTEC以外に所属する参加者のほとんど(16名)が、熱水鉱床開発にかかる環境影響評価に実際に関わっている方々でお互いの面識もあった。一方で、世話人等とこれまでほとんど関わりがなかった参加者は4名に限られた。将来、具体的にどのような方法で環境影響評価を行うのかといった議論を行う場合には、セミナーの周知の方法を変えていく必要がある。セミナーの内容に対して難しいと感じた参加者はなかったとみられ、セミナーの構成については大きな問題はなかったものと考える。今回のような科学研究と現場(産業)を結びつける場を引き続き設けていき、二者の間にあるギャップを埋めていくことは、双方の進展にとって重要である。
アンケートにはセミナーの開催に対して好意的な意見が多く、今後もこのような取り組みを続けていきたい。