炭化水素資源の起源・生成プロセスの研究

石油の起源生物シアノバクテリアと当時の環境との関連性、メタン生成場の環境条件、メタン以外の炭化水素の生成などに焦点を当て、新たな研究法を開発することによって知見を生み出し、炭化水素エネルギー資源の起源と生成プロセスに関する全体像の理解を目指します。

メタンハイドレートが日本近海に多量に分布していることは明らかになってきていますが、実は、微生物によるメタン生成については、地下のどこで、どれくらい行われているのか、ほとんど分かっていません。そこで資源地球化学研究グループでは、メタン生成菌が利用しているある種の酵素(F430)を極めて微量でも検出できる手法を開発し、海底コアにおけるその酵素の分布と濃度から、メタン生成の深度と生成量を明らかにしようとしています。

石油の起源にシアノバクテリアが関わってきた

白亜紀などにおいて汎世界的に起きた海洋無酸素事変時に海底に堆積した黒色頁岩は、石油の主たる根源岩であることは長らく知られてきました。この石油の根源岩に含まれているクロロフィル由来の有機化合物ポルフィリンの組成や窒素安定同位体比を初めて詳しく測定した結果から、シアノバクテリアが石油の主たる起源生物である可能性が示唆されています。また、当時の微量金属の同位体比の結果は、海洋無酸素事変の開始と同時性をもってマントル物質が大量に地球表層環境へもたらされたことを示しています。このような証拠から、巨大火成岩区と呼ばれるマントル深部にその起源をもつ大規模な火成活動が、海洋無酸素事変の究極的な引き金になったことが明らかになりました。こういった作業仮説をもとにして、石油の成因について新しい見方を提案します。

石油の起源

巨大火成岩区の形成という大規模な火山活動によって大気-海洋系に大量に放出された大量の火山ガスが、気候温暖化を引き起こし、それが海洋を停滞させた。つまり、石油を生み出したイベントとは、単に海洋が成層化した地球環境イベントではなく、地球深部から地球表層環境までを貫くきわめてダイナミックな地球の営みによる究極の産物と見なすことができます。

メタン菌によるメタン生成に関わる酵素が鍵

メタン菌によって有機物の嫌気的分解が行われる時、二酸化炭素が還元されてメタンが生成します。メタン菌のエネルギー代謝の結果として生成されるこのメタンは、その代謝経路の最後の部分で、メチル補酵素Mレダクターゼ(Methyl-coenzyme M Reductase)という酵素を利用してメタンが生成されます(下図)。

メチル補酵素Mレダクターゼは補酵素F430を二つ含んでいます。資源地球化学グループではメタン菌によるメタン生成の鍵となる酵素F430に着目し、堆積物コアに含まれるF430の分析法を確立して、メタン生成の現場を解明しようとしています。

メチル補酵素M