トピックス

平成24年5月23日
独立行政法人海洋研究開発機構
海底資源研究プロジェクト

海洋研究開発機構が産業技術総合研究所と共同研究契約を締結
~重元素安定同位体比分析法の確立等、海底資源調査研究に関して連携~

1.概要

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下『海洋機構』という)と独立行政法人産業技術総合研究所(理事長 野間口 有、以下『産総研』という)は、相互の発展と海洋科学技術の水準の向上に資することを目的として締結した連携・協力に関する包括的協力協定(平成20年3月7日既報)に基づいて、高い社会的ニーズを背景とした海底資源の調査研究において、その効率的・効果的研究を推進するための共同研究契約を締結しました。

海底資源に関わる調査研究においては、探査・調査の分野と利用するための技術構築の分野があり、これが密接かつ効果的に連携することによって、有意な海底資源の効果的な活用が可能になります。

産総研においては大陸棚調査等を通じて日本周辺海域の構造発達史の研究に取り組んでおり、海洋機構は陸上・海底で採取された試料に含まれる微量の白金族元素濃度測定や同位体比を用いた鉱床構築年代測定研究を進めていることから、2機関の共同研究により、日本周辺海域における広域な資源調査研究の合理的促進が可能となります。

また、本共同研究に関して、コバルトリッチ・マンガンクラストの組成変動、生成環境、元素濃集メカニズムの調査・解明、レアアースに富む資源泥の採取・分析のため海洋機構の船舶等を用いた調査航海を行います。今後は、これらの研究を出発点として、調査研究の合理的な効率化に資するため、広範な分野での共同研究に取り組んでいくこととしております。

2.背景

レアメタル資源の権益確保をめぐる問題が近年顕在化しています。この問題の有効な解決策として、世界第6位の広大な面積を持つ、我が国の排他的経済水域(EEZ)に賦存する海底資源の開発があげられます。したがって、EEZ内に賦存する海底資源の産状ならびに分布の把握、それらの成因の解明などの調査研究を推進することは、我が国における喫緊の課題として位置づけられます。

海底資源とは、一般にマンガン団塊、マンガンクラスト、熱水性金属硫化物、レアアースに富む資源泥、メタンハイドレート等の炭化水素を指します。これら海底資源のうち、炭化水素以外の資源に関しては、我が国のEEZ内の詳細な分布が未だ把握できておらず、資源賦存状況を明らかにするための調査・研究が求められています。

3.共同研究の内容

海洋底の構造変化や海底環境の変化は、資源の形成と保存に重要な役割を果たします。そこで、海底資源の成因を解明する上で必要不可欠な、海底資源賦存域周辺の海洋底構造発達史を、資源の形成と保存という視点で明らかにする計画です。それとともに、様々な海底資源の形成開始年代を決定し、資源への成長プロセスを明らかにする手法を確立します。そのため、本来分析が困難な微量のオスミウム(白金族元素のひとつ)同位体分析法に関し、海洋機構で開発した手法をさらに発展させ、海底資源のオスミウム同位体層序を明らかにします。それと同時に、鉄・銅などについての重元素安定同位体比分析法の確立を行い、堆積物に埋もれている資源を探査する手法を確立します。

これら鉱床学では新しい同位体を用いた手法によって得られる知見を用いて、海底構造の発達史、および海洋環境の変動と、海底資源の形成と発達や保存との関係を明らかにし、それを新たな調査指標として、今後の海底資源の調査研究に資することを目指します。

なお、本共同研究の契約期間は、平成24年4月1日から平成25年3月31日です。

4.期待される成果

本共同研究では、海底資源が存在する有望海域のテクトニクスをレビューするとともに、また、すでに双方の持っている未公開の地形データも利用し、ターゲットとしている海域の構造発達史をまとめます。その知見を利用することによって、海底資源が存在すべき海底の地質や構造が明らかになることが期待できます。また、今後の調査航海に資する有効な知見が得られます。

本共同研究で重点的に進める、日本のEEZ内のマンガンクラストの研究においては、採取試料のオスミウム同位体比を分析によって、成長速度と海域や水深との関係を解明するための基礎データの取得が見込まれます。また、これまで分析例がほとんどない、海底資源の鉄・クロムなどの遷移金属の安定同位体を資源研究に利用するための分析方法の開発と、天然資源試料の予備的な分析を進め、これらの同位体の利用のための基礎を築くことが期待されます。