25年の軌跡

2010年(第1177~1240潜航)

2010年3月20日~3月28日
南西諸島海溝にて試験潜航
HDTV(ハイビジョンカメラ)を試験的に搭載して1177,1178の2潜航において各種の試験を行ったが、ノイズやデータ通信上の不具合から調査潜航に耐えうるものではないと判断。新規カメラとしての搭載を見送り、従来の3CCDカメラへ装備を戻した。また不具合の調査改修を始めた。
2010年4月3日~4月16日
駿河湾土肥沖、相模湾初島沖にて訓練潜航
2010年4月25日~5月4日
フィリピン海北西部調査
フィリピン海北西部で通算1200回潜航達成(5月4日)
2010年5月20日~5月30日
南鳥島周辺海域調査
2010年8月5日~8月9日
熊野沖南海トラフ 湧水域調査
試験潜航において搭載したHDTVに関し、5月以降不具合点の改修を重ねた結果、運用できるまでに完成度があがり、この調査航海からHDTVカメラが正規装備された。
2010年8月23日~8月29日
マリアナトラフ 生物・地球科学調査
2010年9月4日~9月14日
南部マリアナトラフ 熱水域生物群集調査
2010年9月18日~9月25日
南部マリアナ前弧 地質学的調査
2010年10月4日~10月5日
マリアナトラフ 生物・地球科学調査
2010年10月11日~10月12日
伊豆小笠原大町海山 地質学的調査

2010年は「しんかい6500」運航チームと「しんかい6500」を利用する研究者が待ち望んだものがようやく実現した年となった。これまでの3CCDカメラに代わり、ハイビジョンカメラ(HDTV)が初めて搭載された年だからだ。
だが、HDTVカメラの搭載は“カメラを交換するだけ”という簡単な話では無かった。
「しんかい6500」は耐圧殻外部の機器と耐圧殻内の制御装置とを電線で接続することで様々な機器を動かしながら潜航を行うが、これらは全て耐圧殻に開けられた電線貫通孔を通過する「メタル線(銅線)」で繋いだものだった。「しんかい6500」の建造から時が進むにつれて科学技術は進歩した。それはカメラの世界も例外ではない。世の中でカメラのハイビジョン化が進むにつれて、乗船研究者からはより高精細な映像が望まれるようになってきたが、大容量のデータを発信する機器に対して「しんかい6500」に装備されている「メタル線」は対応できなくなってきていた。そこで耐圧殻内に光ファイバーケーブルを引きこむ計画が立ち上がり2009年に「光電気複合ケーブル」と呼ばれる電線とコネクターが製作された。耐水圧試験を始め様々な試験と検証によってその性能と安全性が確認されたことで、ついに2010年、耐圧殻外の機器と耐圧殻内部の機器が光ファイバーによって接続されることになった。
2009年末から2010年の2月頃までの期間で行われた検査工事に合わせ、出来上がったばかりの光電気複合ケーブルとハイビジョンカメラを搭載した「しんかい6500」は、3月20日から南西諸島海溝において試験潜航を行い、新型カメラの機能確認を行ったが、カメラにノイズやデータ通信上の不具合が発生、わずか2回の潜航で従来の3CCDカメラに戻さざるを得なくなってしまった。だがそれでは終れない。
試験・訓練潜航終了後の4月中旬から8月の熊野沖南海トラフでの潜航までの約4か月間半ほどの期間で、HDTVカメラシステムに対してさまざまな改修と試験を繰り返した結果、ようやく研究者へデータとして映像を提供できるまでに完成度が上がったことで、正式に「しんかい6500」の装備としてHDTVカメラが搭載されることになったのだ。

2010年の運航チーム(9月30日、マリアナトラフでの調査を終えて)

2010年の運航チーム(9月30日、マリアナトラフでの調査を終えて)

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熊野沖南海トラフにてHDTVを使った初の調査潜航 第1210潜航 20010年8月5日

熊野沖南海トラフにてHDTVを使った初の調査潜航
第1210潜航 2010年8月5日

船内に装備するため、机上テスト中のHDTV録画システム 2010年6月

船内に装備するため、机上テスト中の
HDTV録画システム
2010年6月

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