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「しんかい6500」研究航海 YK13-09 レポート

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赤道付近海域での調査を終えスバ港(フィジー)入港

2013/09/25 - 10/02

【No.1368DIVE 着水直前】
【ゼノフィオフォアの一種】
【船内見学中:ハッチ上面より】
【入港準備】
【海図】
【リーフ】
【フィジーの国旗です】
【パイロット乗船】

前回の調査潜航で設置した各培養器の中ではどんな変化が起きているのか、興味を抱きつつ今航海2回目の調査潜航が行われました。少ない潜航回数でも最大限の成果を期待し、「しんかい6500」のサンプルバスケットには入りきらない程のペイロードが取り付けられています。潜航作業は順調に進み間もなく海底に到着するころ、先日設置した発信機からの信号を捕らえました。通信状況は良好です。「しんかい6500」は迷うことなく研究機材の設置ポイントへ向かい、各機材の回収と新たな設置作業を行いました。実はここでの調査は11月に再度行われる予定となっています。今回設置した各培養器は、その頃どのようになっているのか気になるところです。海底での滞在時間は限られているため手際良く作業を行ってきましたが、沢山のペイロードを使用したサンプリングを終えると残り時間はわずかです。この場を離れ周辺を観察したのち浮上を開始しました。この日の調査はこれで終了です。

ところで、「ゼノフィオフォア」って御存知でしょうか?この海域では海底に点々とあり、今回行った2回の潜航調査で各々異なったタイプの物をサンプリングしてきました。乗船中の研究者に伺ってみたところ、原生生物で有孔虫の仲間だそうです。有孔虫というと星砂のように1ミリメートル程の物を連想しがちですが、ここで見かけたものはどれも大人の拳大の物ばかりでした。さらに変わっているのは、「ゼノフィオフォア」本体の細胞の成分には鉛やバリウム等の金属が濃集されていることです。なぜ生物に有害と考えられるこれらの物を好んで取り込み平気でいられるのかは分かっていません。不思議です。

この海域での調査を終え「よこすか」は次の寄港地であるスバ港(フィジー)へ向けて数日間の回航です。回航を開始して直ぐに赤道を越えました。いよいよ南半球に突入です。この辺りは南東貿易風帯と呼ばれ、その名の通り南東の風が安定して強く吹き続けます。「よこすか」の周囲には白波がたち、波頭は強風によってスプレー状に吹き飛ばされていきます。次航の調査海域はほぼ同緯度ながらもっと東側になるので、大丈夫だと信じたいのですが・・・

今は「しんかい6500」に沢山取り付けられていたペイロードも全て取り外され、主動力源であるメインバッテリーの放電作業も済みました。次航海までちょっとお休みです。

この間に船内では研究者によるセミナーを行って頂きました。同じ船に乗っていても乗組員には各々自分の持ち場があるので、どんな研究を行っているかは断片的にしか見ることはできません。そのため、このような機会にどんな目的でどんな研究をしていて、それを調べるためにどんな作業を行い、結果どんな成果が期待できるといった説明をして頂くとよく分かります。

10月2日、早朝に港外の珊瑚でできた浅瀬を避け「よこすか」はスバ港(フィジー)へ入港しました。常夏の国というイメージから強烈な暑さを覚悟していましたが、今は乾季のため湿度が低くすごし易いです。

これで本航海のレポートを終了しますが、航海はまだまだ続きます。


    9月26日 No.1368DIVE
  • 潜航海域:赤道付近海域
  • 観察者:野牧 秀隆(JAMSTEC)
  • 船長:松本 恵太
  • 船長補佐:大西 琢磨

【航海情報】
9月22日
「よこすか」船内時刻改正(JST+2h)
9月26日
「しんかい6500」潜航調査(第1368回)
スバ港(フィジー)向け回航
9月27日
赤道通過(00:57)
9月29日
操練(防火・退船)
「よこすか」船内時刻改正(JST+3h)
10月2日
スバ港(フィジー)入港 09:00
研究者下船

赤道付近海域での調査

2013/09/18 - 09/24

「よこすか」は9月18日、予定よりも10分早い09:50にグアム島アプラ港を出港しました。寄港中は「しんかい6500」の整備のみではなく、「よこすか」の機器の整備や、次航海に備えて燃料・清水(水道水)の補給等も行われました。特に機関部は航海中には行う事の出来ない、メインエンジンの整備のため忙しかった様子です。また一等航海士によると、今回積み込んだ清水は日本の清水に比べて塩素の濃度が高く、約10倍となっているようです。こんな時には日本で積んだ清水は飲料水として温存し、グアムで積んだ清水は雑用水として洗濯や入浴用に使用されます。実際、入浴中や洗濯物の一部を居室で干していると、ちょっと薬臭いです。

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今回はグアムからフィジーまでの間の比較的に平坦な海底で、そこにいる深海生物とその環境を調査する航海です。グアムからフィジーまでは約3100マイルあり、これを15日間かけて調査しながら移動していきます。この間「しんかい6500」による潜航調査は2回(2日)のみの予定のため、グアム寄港中にしんかいチームメンバー数名が下船しました。そのため通常の2/3の人員でしかない、少ない選抜メンバーでオペレーションします。「しんかい6500」を使用する航海は今年で25年目になりますが、こんなに少人数でのオペレーションは初めての試みです。

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先航海では鏡のような穏やかな海面に驚かされましたが、今航海では出港後すぐに時化られました。出港日にはブリッジに乗員が集まり、皆で航海の安全を祈願し金刀比羅参拝をしましたが、効力が発揮されるまでに少々時間が掛かる模様です。

グアム出港から7日目、ようやく調査海域に到着しました。海況も回復し穏やかになりました。9月24日海底地形や天気図を見極め、いよいよ「しんかい6500」による潜航調査が開始されました。水深は約4300m、海底は予想通り堆積物(泥)に覆われた平坦な地形をしています。生物も所々に見られ、ゆっくりとした潮流がありました。海底に「しんかい6500」を着底させると早速調査開始です。堆積物(泥)のサンプリングにはコアと呼ばれる物を用います。長さ30cm程の樹脂製のパイプの片端にマニピュレータで掴むことのできるハンドルを取り付け、パイプ開口部側から突き刺し、引き抜くと円柱状に堆積物(泥)をサンプリングできます。この潜航では通常タイプのコアを11本と、試薬を注入し培養器として使用出来る様にハンドルを加工したコアを11本、それ以外にアクリル製の箱型培養器2個を使用、このうち約半分の培養器は時間経過による環境の変化を調べるために海底へ設置してきました。また運悪く出会ってしまった2匹のナマコもトラップで捕らえ付近に置いてきました。こちらも研究者からのオーダーで時間経過による変化を観察することが目的です。最後に前回の航海レポートで御紹介しましたマーカーブイを設置し、さらに今回は平坦で特徴のない海底のため、約300メートル四方ならほぼ確実に受信可能な発信機も設置しました。これで再訪のための準備は万端です。このあと離底予定時刻まで生物の分布状況を観察しながら航走し浮上しました。

夕方「しんかい6500」を揚収した「よこすか」の船上は一気に慌ただしくなります。約9時間ぶりに外気を吸い込んだのもつかの間、パイロット達は潜航中に得られた1日分のデータの処理を行います、並行して「よこすか」の格納庫へ戻された「しんかい6500」はチームメンバーにより、各機器が正常に作動することをチェックし、メインバッテリーへの充電も開始されます。研究者は持ち帰ったサンプルの処理を行います。扱うサンプルにもよりますが、時には深夜や翌朝近くまで処理に掛かる物もあるようです。


【グアム島アプラ港を出港】
【フローティングドック】
【ポンペイ島:POHNPEI】
【ポンペイ島:POHNPEI】
    9月25日 No.1367DIVE
  • 潜航海域:赤道付近海域
  • 観察者:布浦 拓郎(JAMSTEC)
  • 船長:飯嶋 一樹
  • 船長補佐:田山 雄大

【航海情報】
9月18日
グアム島アプラ港 出港
調査海域向け回航 金刀比羅 祈願
9月22日
調査海域向け回航中
カロライン諸島ポンペイ(ポナペ)島近海通過
9月24日
「しんかい6500」潜航調査(第1367回)
MBES広域地形調査