「しんかい6500」世界一周航海「QUELLE2013」南太平洋 YK13-11
レポート
ルイビル海山列、ケルマディック島弧での潜航調査
2013/10/13 - 21
【航海情報】
『ヌクアロファ港(トンガ)を出港、調査開始』
ヌクアロファ港(トンガ)での特別公開等を終えて10月24日に次の調査海域に向けて出港。次の調査海域はトンガ王国とニュージーランドの間にある、ケルマディック島弧とルイビル海山列です。ルイビル海山列は、太平洋南極海嶺から東北東に延び、長さ4,300kmに渡り70以上もの海山が連なり、その末端はケルマディック海溝へと沈み込んでいます。もう一方のケルマディック島弧は、ケルマディック海溝の西側にあり80以上もの海山が連なっていて、そのなかには活発な熱水活動をともなう海底活火山が存在しています。
今回の調査は、ルイビル海山列では最北端の「Osbourne海山」とその隣の「Canopus 海山」において、生物分布や岩石の組成等の調査を目的に、「しんかい6500」では「Canopus 海山」の水深2,250m付近から水深1,300m付近まで、「ディープ・トウ」では「Osbourne海山」の水深3,300m付近から水深1,900m付近まで調査しました。
ケルマディック島弧では、島弧北端にある海底火山「Hinepuia Volcano」において熱水噴出域の捜索を目的に「しんかい6500」で2回の潜航調査を行いました。
『浅い水深での潜航調査』
ケルマディック島弧北端にある海底火山「Hinepuia Volcano」は事前調査の結果、山頂部水深が320m、熱水噴出域は過去の調査結果から水深450m付近と推測されていて、「しんかい6500」でこの海底火山を調査するためには二つの問題を解決する必要がありました。
一つ目は「しんかい6500」の重量・浮量の問題です。「しんかい6500」はその名前の通り水深6,500mの海水中で本来の性能を発揮するように作られています。潜航深度が浅いと海水比重が小さいため船体の浮量が少なくなります。船体の浮量が減るとペイロード搭載重量も少なくなり、深い所に調査に行くのと同じ量の調査器材が搭載出来ません。
二つ目は、安全面の問題です。「しんかい6500」の潜航中は母船の「よこすか」は「しんかい6500」のほぼ真上で通信・測位を行っています。水深が深い場合には、潜水船にトラブルが発生して緊急浮上を開始しても上昇する速度は毎分40m前後なので、「よこすか」が「しんかい6500」と衝突しないよう準備を行う十分な時間があります。今回の水深では「しんかい6500」が緊急浮上を開始すると海底から海面まで約10分で浮上してしまうため、「よこすか」が真上で通信・測位を行っていると退避する時間、安全の確保に不安があります。初めから安全な距離を離して潜水船の監視を行えば良いのですが、通信・測位システムは潜水船と母船の水平距離が水深分以上離れると極端に通信状況が悪くなり安全に調査を行えません。
この二つの問題の対応方法として次の対策を実施しました。一つ目については、船体に係留系用浮力材ブイを取り付け、調査機材の搭載に必要な浮量の不足分を追加する。二つ目については、水深500m以上の場所から潜航を開始し、潜水船の緊急浮上に備える事が出来て、通信・測位が正常に行える距離を確認しながら追尾を行う。以上の対策を行って安全に調査を実施しました。結果については研究者チームから報告されると思いますが、これまでの「しんかい6500」の潜航記録でも一番浅い水深での調査になる事でしょう。
『オークランド港(ニュージーランド)に入港』
11月2日にオークランド港(ニュージーランド)に入港しました。この港は「シティ・オブ・セイルズ」とも呼ばれ港を中心に近代的な市街地が発達している便利な港です。「よこすか」と「しんかい6500」は2004年に初めて寄港し、今回は9年ぶりの2回目の入港となります。入港中はニュージーランド政府関係者や、オークランド日本国総領事館関係者への特別公開が予定されています。また、ここが航海最後の寄港地となるため、清水、燃料、食糧の補給を行います。
- 10月24日
- ヌクアロファ港(トンガ)出港
ルイビル海山列向け回航開始 - 10月25日
- ルイビル海山列到着
事前調査、MBES広域地形調査 - 10月26日
- 「しんかい6500」潜航調査(第1372回)
夜間、ケルマディック島弧海域へ移動 - 10月27日
- 「しんかい6500」潜航調査(第1373回)
夜間、ルイビル海山列海域へ移動 - 10月28日
- 海況不良の為、潜航中止
MBES広域地形調査 - 10月29日
- 「YKDT」潜航調査(第158回)
夜間、ケルマディック島弧海域へ移動 - 10月30日
- 「しんかい6500」潜航調査(第1374回)
オークランド港(ニュージーランド)向け回航開始 - 10月31日
- オークランド港向け回航
船長主催、打上げBBQパーティー - 11月1日
- オークランド港向け回航
- 11月2日
- オークランド港(ニュージーランド)入港
『ヌクアロファ港(トンガ)を出港、調査開始』
ヌクアロファ港(トンガ)での特別公開等を終えて10月24日に次の調査海域に向けて出港。次の調査海域はトンガ王国とニュージーランドの間にある、ケルマディック島弧とルイビル海山列です。ルイビル海山列は、太平洋南極海嶺から東北東に延び、長さ4,300kmに渡り70以上もの海山が連なり、その末端はケルマディック海溝へと沈み込んでいます。もう一方のケルマディック島弧は、ケルマディック海溝の西側にあり80以上もの海山が連なっていて、そのなかには活発な熱水活動をともなう海底活火山が存在しています。
今回の調査は、ルイビル海山列では最北端の「Osbourne海山」とその隣の「Canopus 海山」において、生物分布や岩石の組成等の調査を目的に、「しんかい6500」では「Canopus 海山」の水深2,250m付近から水深1,300m付近まで、「ディープ・トウ」では「Osbourne海山」の水深3,300m付近から水深1,900m付近まで調査しました。
ケルマディック島弧では、島弧北端にある海底火山「Hinepuia Volcano」において熱水噴出域の捜索を目的に「しんかい6500」で2回の潜航調査を行いました。
『浅い水深での潜航調査』
ケルマディック島弧北端にある海底火山「Hinepuia Volcano」は事前調査の結果、山頂部水深が320m、熱水噴出域は過去の調査結果から水深450m付近と推測されていて、「しんかい6500」でこの海底火山を調査するためには二つの問題を解決する必要がありました。
一つ目は「しんかい6500」の重量・浮量の問題です。「しんかい6500」はその名前の通り水深6,500mの海水中で本来の性能を発揮するように作られています。潜航深度が浅いと海水比重が小さいため船体の浮量が少なくなります。船体の浮量が減るとペイロード搭載重量も少なくなり、深い所に調査に行くのと同じ量の調査器材が搭載出来ません。
二つ目は、安全面の問題です。「しんかい6500」の潜航中は母船の「よこすか」は「しんかい6500」のほぼ真上で通信・測位を行っています。水深が深い場合には、潜水船にトラブルが発生して緊急浮上を開始しても上昇する速度は毎分40m前後なので、「よこすか」が「しんかい6500」と衝突しないよう準備を行う十分な時間があります。今回の水深では「しんかい6500」が緊急浮上を開始すると海底から海面まで約10分で浮上してしまうため、「よこすか」が真上で通信・測位を行っていると退避する時間、安全の確保に不安があります。初めから安全な距離を離して潜水船の監視を行えば良いのですが、通信・測位システムは潜水船と母船の水平距離が水深分以上離れると極端に通信状況が悪くなり安全に調査を行えません。
この二つの問題の対応方法として次の対策を実施しました。一つ目については、船体に係留系用浮力材ブイを取り付け、調査機材の搭載に必要な浮量の不足分を追加する。二つ目については、水深500m以上の場所から潜航を開始し、潜水船の緊急浮上に備える事が出来て、通信・測位が正常に行える距離を確認しながら追尾を行う。以上の対策を行って安全に調査を実施しました。結果については研究者チームから報告されると思いますが、これまでの「しんかい6500」の潜航記録でも一番浅い水深での調査になる事でしょう。
『オークランド港(ニュージーランド)に入港』
11月2日にオークランド港(ニュージーランド)に入港しました。この港は「シティ・オブ・セイルズ」とも呼ばれ港を中心に近代的な市街地が発達している便利な港です。「よこすか」と「しんかい6500」は2004年に初めて寄港し、今回は9年ぶりの2回目の入港となります。入港中はニュージーランド政府関係者や、オークランド日本国総領事館関係者への特別公開が予定されています。また、ここが航海最後の寄港地となるため、清水、燃料、食糧の補給を行います。
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10月26日 No.1372DIVE
- 潜航海域:ルイビル海山列 Canopus Seamount
- 観察者:Malcolm Clark (National Institute of Water & Atmospheric Research)
- 船長:植木 博文
- 船長補佐:鈴木 啓吾
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10月27日 No.1373DIVE
- 潜航海域:ケルマディック島弧北端 Hinepuia Volcano
- 観察者:土田 真二(JAMSTEC)
- 船長: 千葉 和宏
- 船長補佐:池田 瞳
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10月30日 No.1374DIVE
- 潜航海域:ケルマディック島弧北端 Hinepuia Volcano
- 観察者:Cornel de Ronde (Geological Nuclear Science)
- 船長:飯嶋 一樹
- 船長補佐:片桐 昌弥