「しんかい6500」研究航海 YK15-11 レポート
今年度1回目の外航はマリアナ海溝調査
2015/6/29 - 7/17
【航海情報】
『今年のマリアナ海溝調査』
6月29日、「よこすか」と「しんかい6500」は大勢の関係者に見送られてJAMSTEC横須賀本部の専用桟橋から今年初めての外航調査に出港しました。調査海域は東京湾から南に約2、600kmのマリアナ海溝、Shinkai Seep Fieldです。この場所では水深5,800m付近で湧水起源のチムニーやシロウリガイコロニーが確認されており、本格的な調査は今年で3回目となります。昨年まではチムニーやシロウリガイコロニーの分布状況など全体的な概要の調査を行いました。今年はShinkai Seep Filedで湧水採取や周辺の岩石採取を集中的に行い、この場所がどのようにしてできたかを解明することと、新たな湧水の発見を目的としています。
『今年も台風が発生』
グアム島の南西側に位置する調査海域周辺は海水温度が29度前後と高く、特にこの時期は発生した熱帯低気圧が、台風に発達して調査に影響を及ぼす場合があります。今年も、出航3日目の7月1日には台風9号が調査海域の東側に発生しました。この台風はゆっくりと西に進んでいたのですが、「よこすか」が調査海域に到着した7月3日には、すでに海域に留まることも難しいほどの影響がありました。このため、調査開始を遅らせて約300海里(約555km)南下して海況が回復するのを待ちました。この待機中、7月4日には台風9号の東側の熱帯低気圧が発達し台風11号となり、9号の跡を追うようにゆっくりと西に進みだしました。7月5日、台風9号が西に移動したことで影響が弱まり海況回復が見込めたので調査海域に移動したのですが、現場には大きなうねりが残っていて、本格的に調査を開始できたのは7月8日の深海曳航調査システム「よこすかディープ・トウ」(YKDT)曳航調査からとなりました。
『マリアナ海溝での潜航』
マリアナ海溝での潜航調査は、台風9号、11号が調査海域の北側を通過したため、航海期間を通して海域にはその影響があり、大きなうねりのなかでの着水、揚収作業をともなった潜航となりました。海面では大きなうねりのため、船体の動揺が非常に激しく耐圧殻の中では姿勢を保持するのも大変な状況でしたが、潜航を開始して水深30mを過ぎると、動揺もすっかり収まり平穏ないつもどおりの下降状態となります。この海域は透明度が高く、普段は10m前後の海底の視程も10mを越えているため、調査中は目標物の捜索や海底の様子が確認しやすく移動速度も上げられたので、非常に効率が良い潜航を行えました。毎潜航、深度差で500m以上、水平移動距離で1海里(約1,850m)以上の距離を移動し、Shinkai Seep Fieldでの調査では、昨年度調査した場所を短時間で再訪することができ、チムニーや湧水の採取、長期観測装置の設置を行うことができました。
- 6月29日
- 横須賀港、出港
マリアナ海溝向け、回航 - 6月30日
- 回航(鳥島東方)
- 7月1日
- 回航(南硫黄島北東方)
船内セミナー - 7月2日
- 回航(マリアナ諸島北西方)
- 7月3日
- マリアナ海溝調査海域、到着
台風避航(グアム島南西方) - 7月4日
- 台風避航(西カロリン諸島)
- 7月5日
- 台風避航(西カロリン諸島)
調査海域向け発航 - 7月6日
- 事前調査、荒天のため潜航中止
広域サーベイ - 7月7日
- 荒天のため潜航中止
広域サーベイ - 7月8日
- 「YKDT」曳航調査(第169回)
夜間、海域移動 - 7月9日
- 事前調査、「しんかい6500」調査潜航(第1429回)
夜間、広域サーベイ - 7月10日
- 「YKDT」曳航調査(第170回、第171回)
夜間、広域サーベイ - 7月11日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1430回)
夜間、海域移動 - 7月12日
- 「YKDT」曳航調査(第172回)
夜間、広域サーベイ - 7月13日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1431回)
夜間、広域サーベイ - 7月14日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1432回)
夜間、広域サーベイ - 7月15日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1433回)
揚収後、サイパン島向け回航 - 7月16日
- 回航(グアム島南西方)
- 7月17日
- サイパン島サイパン・ハーバー入港
『今年のマリアナ海溝調査』
6月29日、「よこすか」と「しんかい6500」は大勢の関係者に見送られてJAMSTEC横須賀本部の専用桟橋から今年初めての外航調査に出港しました。調査海域は東京湾から南に約2、600kmのマリアナ海溝、Shinkai Seep Fieldです。この場所では水深5,800m付近で湧水起源のチムニーやシロウリガイコロニーが確認されており、本格的な調査は今年で3回目となります。昨年まではチムニーやシロウリガイコロニーの分布状況など全体的な概要の調査を行いました。今年はShinkai Seep Filedで湧水採取や周辺の岩石採取を集中的に行い、この場所がどのようにしてできたかを解明することと、新たな湧水の発見を目的としています。
『今年も台風が発生』
グアム島の南西側に位置する調査海域周辺は海水温度が29度前後と高く、特にこの時期は発生した熱帯低気圧が、台風に発達して調査に影響を及ぼす場合があります。今年も、出航3日目の7月1日には台風9号が調査海域の東側に発生しました。この台風はゆっくりと西に進んでいたのですが、「よこすか」が調査海域に到着した7月3日には、すでに海域に留まることも難しいほどの影響がありました。このため、調査開始を遅らせて約300海里(約555km)南下して海況が回復するのを待ちました。この待機中、7月4日には台風9号の東側の熱帯低気圧が発達し台風11号となり、9号の跡を追うようにゆっくりと西に進みだしました。7月5日、台風9号が西に移動したことで影響が弱まり海況回復が見込めたので調査海域に移動したのですが、現場には大きなうねりが残っていて、本格的に調査を開始できたのは7月8日の深海曳航調査システム「よこすかディープ・トウ」(YKDT)曳航調査からとなりました。
『マリアナ海溝での潜航』
マリアナ海溝での潜航調査は、台風9号、11号が調査海域の北側を通過したため、航海期間を通して海域にはその影響があり、大きなうねりのなかでの着水、揚収作業をともなった潜航となりました。海面では大きなうねりのため、船体の動揺が非常に激しく耐圧殻の中では姿勢を保持するのも大変な状況でしたが、潜航を開始して水深30mを過ぎると、動揺もすっかり収まり平穏ないつもどおりの下降状態となります。この海域は透明度が高く、普段は10m前後の海底の視程も10mを越えているため、調査中は目標物の捜索や海底の様子が確認しやすく移動速度も上げられたので、非常に効率が良い潜航を行えました。毎潜航、深度差で500m以上、水平移動距離で1海里(約1,850m)以上の距離を移動し、Shinkai Seep Fieldでの調査では、昨年度調査した場所を短時間で再訪することができ、チムニーや湧水の採取、長期観測装置の設置を行うことができました。
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7月9日 No.1429DIVE
- 潜航海域:マリアナ海溝西端部
- 観察者:石井 輝秋(深田地質研究所)
- 船長:齋藤 文誉
- 船長補佐:田山 雄大
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7月11日 No.1430DIVE
- 潜航海域:マリアナ海溝西端部
- 観察者:小原 泰彦(海上保安庁海洋情報部)
- 船長:大西 琢磨
- 船長補佐:小椋 徹也
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7月13日 No.1431DIVE
- 潜航海域:南部マリアナ前弧
- 観察者:矢吹 彬憲(JAMSTEC)
- 船長:佐々木 義高
- 船長補佐:田山 雄大
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7月14日 No.1432DIVE
- 潜航海域:南部マリアナ前弧
- 観察者:川口 慎介(JAMSTEC)
- 船長:齋藤 文誉
- 船長補佐:鈴木 啓吾
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7月15日 No.1433DIVE
- 潜航海域:南部マリアナ前弧 Shinkai Seep Field
- 観察者:奥村 知世(JAMSTEC)
- 船長:大西 琢磨
- 船長補佐:植木 博文
佐々木 義高(運航チーム副司令)