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海と地球を学んじゃうコラム

どうして海で地震は起こるの?

マンタマリア号の近くで見かける地球深部探査船「ちきゅう」やオクトエクスパンションの地下世界に潜航中の「しんかい6500」は、いったい何をカガクしているのでしょうか。現実の世界では、深海の特異な生物環境や海溝とよばれる深い海の底で引き起こされる地震について研究しています。今回は、日本に暮らすみんなに知ってほしい海底で起きる地震について一緒に学んでみなイカ?

日本ではマグニチュード3以上の地震は、仮に1日に平均すると13回も起きていることになります。日本の面積は地球上の陸地の0.3%しかありませんが、そこに世界の地震の1/10が起きていることになります。なぜ日本ではこんなに地震が多いのでしょうか。その原因のほとんどはプレートの動きによるものです。
前回のコラムで、地球の表面は何枚ものプレートに覆われ、それぞれがゆっくり動いていることを学びました。日本はちょうど4枚のプレート「北アメリカプレート」「ユーラシアプレート」「太平洋プレート」「フィリピン海プレート」の境界に位置しており、プレートの交差点だと言えます。

日本列島周辺のプレートの配置


日本列島の北半分は北アメリカプレートの上に、南半分はユーラシアプレートの上に乗っています。これらのプレートの下に太平洋プレートが東側から、フィリピン海プレートが南東方向から沈み込んでいます。このように陸地を作る北アメリカプレートとユーラシアプレートを「大陸プレート」、海底を作る太平洋プレートやフィリピン海プレートを「海洋プレート」とも呼びます。日本で多発する多くの地震は、大陸プレートに海洋プレートが沈み込むことが原因で起こるのです。

地震はどうやって起きる?

プレートの沈み込みによって起こる地震と津波のメカニズム


ここで、大陸プレートの下に、ゆっくりと海洋プレートが沈み続けるモデルを考えます。海洋プレートの動きに引っ張られて、大陸プレートも下方向にゆがみます。岩石でできているプレートは硬く、少ししか変形しないので、大陸プレートのゆがみがある程度たまると、一気に上に跳ね返ります。この時プレートの一部が壊れます。この時地震が起きるのです。跳ね返りの様子は、プラスチックの板を両手で折れる直前まで曲げて、パッと手を離すとまっすぐに戻るのと似ています。
このように海で起きる大きな地震では、津波も引き起こされます。これは、大陸プレートの端が急に持ち上がることで、その上の海水も持ち上げられるためです。お風呂の水で例えてみましょう。両手で水を勢いよく持ち上げようとすると水が盛り上がります。これが津波です。ちなみに、水の表面に強く息を吹きかけると波ができますが、これが台風の時に発生する高潮です。

大地震後、深海底に見つかったもの

2011年に発生した東北地方太平洋沖地震は、太平洋プレートが北アメリカプレートの下に沈み込むことで引き起こされた地震で、日本の観測史上最大のものでした。この地震にともない、大規模な津波も発生したことは、みなさんの記憶に新しいと思います。

東北地方太平洋沖地震で起きた地形の変化


この地震によって海底がどう変化したのか、JAMSTECの深海調査研究船「かいれい」で音波を使って海底地形を調べたところ、地震が起きる前に比べて、海底が横に約50メートル(学校のプールの縦に2個分)、上に7~10メートル(ビル3階分)も動いたことがわかりました。また、有人潜水調査船「しんかい6500」で、震源地近くの水深3,200〜5,350mの場所に潜って調べたところ、北アメリカプレート側(陸地側)に広い範囲にわたって何本も亀裂ができていることが分かりました。地震によって、硬い巨大な岩盤をバキバキと割るほどの、とてつもない力がかかったのだと想像できます。


水深3,218mで見つかった海底の亀裂。幅約20cm、長さは少なくとも数10mは超える。底は深く深さは確認できない。有人潜水調査船「しんかい6500」が撮影。


地震はなくならない?

プレートの動きは、地球が活動している証拠であり、今も休むことなく続いています。これはつまり、これからも日本では地震が起き続けることを意味します。
近い将来、大規模な地震が起きると予想される南海トラフは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む場所です。2018年1月、地球深部探査船「ちきゅう」が南海トラフを掘削し、地震計や温度センサーなどを設置しました。これによってプレートの動きを細かく観測することができるようになります。さらに、海底下5,000メートルもの深い場所にあるプレート境界断層(断層は岩盤がずれているところ)を、直接掘って調べようという、壮大な研究が計画されています。これまで誰も手にしたことのない、プレート境界断層の地層を詳しく調べることで、南海トラフ地震発生のカギをにぎる事実が明らかになるかもしれません。
地震を止めることはできません。しかし地震が起こる場所を調査することで、どのように起きるのかをもっと詳しく知ろうという科学の挑戦が、今まさに行われているのです。

文 田端萌子&JAMSTEC
(2018年8月1日掲載)

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