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イカ研究所 & JAMSTEC 共同研究

  • 2018.8.8

    共同研究30「地球を語る“有孔虫”」

    海には、プランクトンやマリンスノーなど、さまざまなものが浮遊している。
    スプラトゥーン2オクト・エキスパンションのロード画面をご確認いただきたい。さまざまな形をした浮遊物が確認される。我々はこの浮遊物の採取に成功し、調べたところ、有孔虫(ゆうこうちゅう)のような生物であることが判明した。

    スプラトゥーン2オクト・エキスパンションのロード画面(拡大図)

    有孔虫とは、炭酸カルシウムの殻をもつ単細胞生物(たんさいぼうせいぶつ)である。つまり、貝殻のような殻を持つが、貝ではなく、もっと原始的な、ひとつの細胞しか持たない生物である。
    孔(あな)の有る虫、と書いて有孔虫。その名のとおり、殻にはたくさんの孔があいている。

    有孔虫の一種、Ammonia beccarii (アンモニア・ベッカリ)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真。小さな孔(あな)がたくさんあいているのがわかる。スケールバーは100マイクロメートル(0.1ミリメートル)。写真提供:長井裕季子(JAMSTEC)

    海中をただよいながら生活するもの(浮遊性有孔虫:ふゆうせいゆうこうちゅう)と、海底にすむもの(底生有孔虫:ていせいゆうこうちゅう)がいる。沖縄のお土産で有名な「星の砂」も底生有孔虫の一種である。

    海中をただよいながら生活する浮遊性有孔虫(ふゆうせいゆうこうちゅう)のGlobigerinoides ruber (グロビゲリノイデス・ルーバ)。周りにのびている糸のようなものは仮足(かそく)と呼ばれ、これでエサをつかまえたりする。写真提供:木元克典(JAMSTEC)

    浅い海の海藻の上にいる底生有孔虫(ていせいゆうこうちゅう)、Elphidium cripsum (エルフィディウム クリスパム)(写真中央。ピンクのものは海藻)。写真提供:豊福高志、長井裕季子(JAMSTEC)

    有孔虫は5億年以上も昔の先カンブリア紀からいて、世界中の深海にも浅い海にも生息している。地層の中に化石となって残っており、それを調べることで過去の地球環境がわかるため、多くの研究がなされている。この小さな生物から、その有孔虫が生きた時代がどのような環境だったかという、地球の歴史を読み解くヒントとなるのだ。

    有孔虫の化石。小笠原諸島の母島で見ることができる大型の有孔虫、「貨幣石(かへいせき)」。

    また、本来は弱いアルカリ性の海水が、酸性側に傾いていく海洋酸性化が問題になっており、殻を持つ生物が大きな影響を受けると考えられているが、この研究にも有孔虫は使われている。JAMSTECでは、生きた有孔虫を飼育して、どのように殻をつくるのか、そして酸性化が進んだ海を再現し、その中で飼育したらどのような影響を受けるのかを調べている。

    多くの有孔虫は、1ミリメートルに満たないほど小さいが、壮大な地球の歴史や、環境の変動を語る生物なのである。
    イカ世界の環境変動も、この有孔虫のような生物を調べることで明らかになると期待される。

    殻を作る底生有孔虫、Ammonia beccarii (アンモニア・ベッカリ)。有孔虫の殻はたくさんの「部屋」が連なっているような形をしている。右側の透明に見える部分が新しくできた「部屋」。詳しくは、【JAMSTEC×niconico深海研究部】“有孔虫”を観察しよう~顕微鏡の中の小宇宙~顕微鏡をのぞいてみよう編

    映像提供:豊福高志、長井裕季子(JAMSTEC)

  • 2018.7.25

    共同研究29「鯨骨生物群集」

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンションの海底に動物の骨のような物が確認された。しかも「しんかい6500」によく似た潜水調査船が、調査を行っているようだ。もしかしたら、これは鯨骨(げいこつ)かもしれない。

    鯨骨とは、文字通り、死んだ鯨(くじら)が海底に沈んで骨になったもの。肉は深海の貴重な栄養源であり、サメやアナゴの類に食べつくされてしまうが、実は骨だけになった鯨の遺骸にも、鯨骨生物群集(げいこつせいぶつぐんしゅう)と呼ばれる特殊な生態系がはぐくまれることが確認されている。

    相模湾の水深924メートルの鯨の遺骸。骨になってなお、特殊な生態系をはぐくんでいる。

    鯨が骨だけになると、骨に含まれる有機物を栄養源とするホネクイハナムシの仲間などが現れる。通称ゾンビワームとも呼ばれるホネクイハナムシは、鯨骨の内部に「根」をはって、赤い花のようなエラを外に出している。口も肛門も持たない彼らは、微生物を体内に共生させていて、その微生物が取り込んだ鯨骨の有機物を利用して生きている。鯨の骨にすんでいるということ自体、ちょっと変わっているが、その生き方も外見もかなり変わっている。

    相模湾の水深491メートルの海底に設置した鯨骨に群がるホネクイハナムシ類。

    やがて骨に含まれる有機物が分解されると硫化水素が発生する。人間にとっては毒となるガスである。これを利用して栄養分をつくりだすことができる微生物がいる。さらに、そのような微生物と共生する二枚貝、ヒラノマクラなどが鯨骨の周りに集まって来る。
    このように、鯨の遺骸には、入れ替わり立ち代わり、時間の経過とともに、異なる生物をはぐくむのである。

    鹿児島県野間岬沖、水深228メートルの海底に設置された鯨骨に群がるヒラノマクラ。

    ところで、いつどこで鯨の遺骸が現れるかわからないのに、鯨骨生物群集のメンバーはどこからともなく現れる。彼らはどこからどのようにしてたどり着くのであろうか。さらに興味深いことに、太古の昔、鯨が現れる以前の、首長竜の化石からホネクイハナムシが発見されたことがあるという。

    オクト・エキスパンションでも、この未知の骨から、今後、新種の生物が見つかるかもしれない。

  • 2018.7.17

    共同研究28「深海での道案内、しんかい2000」

    オクトの地下施設の探索にはかかせないNAMACO端末。深海メトロ車内では路線図を表示し、選択した駅へ連れて行ってくれる夢のような端末だ。
    このNAMACO端末、かつて活躍していたJAMSTEC(ジャムステック)の有人潜水調査船「しんかい2000」に似ていると思っタコとはないだろうか。
    1つ目の共通点はその見た目だ。NAMACO端末上部の赤いスティックは潜水船への乗り込み口にも見えるし、路線図などを投影するレンズは潜水船の観察窓と同じ位置に備えられている。しかもどちらも電池駆動のようだ。下記に「しんかい2000」の構造を図示する。

    有人潜水調査船「しんかい2000」システム

    「しんかい2000」は、その名の通り、水深2,000メートルまで潜ることができる日本で初めての本格的な深海の有人潜水調査船であった。1981年に完成し、1411回もの潜航調査を行った。「しんかい2000」の開発と運用によって培われた技術と経験は、その後の「しんかい6500」や無人探査機「かいこう」などの深海調査機器に活かされている。

    深海を目指し潜っていく「しんかい2000」

    さて、もうひとつの大事な共通点は、「行きたいところへ連れて行ってくれる」ことだ。NAMACO端末は、深海メトロの行きたい駅へ、そして「しんかい2000」は研究者を調査したい深海へ連れて行ってくれる。日本の海域で初めて、特殊な生態系を構成するシロウリガイの群集や、真っ黒い煙のように熱水が噴き出すブラックスモーカーを発見するなど、深海研究の進展に大きく貢献した。

    ちなみに、現在、「しんかい2000」は、神奈川県にある新江ノ島水族館で引退後の余生を過ごしており、間近で実物に会うことができる。

    「しんかい2000」がオクトの地下世界を案内してくれると思うと、なんだか心強くなイカ?

  • 2018.7.10

    共同研究27「深海を潜航調査、「しんかい6500」」

    オクトエキスパンションの地下世界で、「しんかい6500」らしき潜水調査船が確認された。「しんかい6500」とは、水深6,500メートルまで潜航することが可能なJAMSTEC(ジャムステック)の有人潜水調査船である。

    潜航調査中の「しんかい6500」。南西諸島 鳩間海丘、水深1,485mにて。
    (相変わらずロボットボムに似ている;共同研究第5報を参照)。

    操縦士と研究者の全3名が直径2メートルの球形のキャビンに乗り込み、生物や地球内部の活動、環境などさまざまな調査を行う。小さなのぞき窓が三つあり、乗り込んだ研究者は顔をくっつけるようにして深海を観察する。ちなみに窓の厚さは約14センチメートルもある。深海の高い水圧に耐えるためである。船内には、操船に必要な機器・計器や、呼吸などの生命維持装置が、びっしりと搭載されている。1回の潜航時間は約8時間。なお、海上の母船とは、音波を使って通信することができる(共同研究第19報)。

    船体は空中重量26.7トンもあるが、海で浮くようにできている。船体にたくさんの浮力材(ふりょくざい)を搭載しており、潜航する時は、鉄のおもり(バラスト)を積んで潜っていく。万が一、海中で故障しても、重りを外せば浮上できる。安全対策は万全である。
    さらに詳しい性能を知りたい諸君は、この参考文献もご覧いただきたい。

    「しんかい6500」船内の様子。

    それにしても、オクトの地下世界に潜航し、何を調査しているのだろうか。JAMSTEC(ジャムステック)において、現実の「しんかい6500」の潜航調査計画を確認したところ、ちょうど先週まで太平洋の深海に潜航していた。「しんかい6500」の研究ミッションのひとつは、海底地形や深海の岩石から、46億年の地球の歴史の中で起きた現象を調べあげ、地球の成り立ちを研究することである。深海の奥深くには、過去に起きた自然現象が記録されている。

    オクトの地下世界にも、懐かしいゲーム機などのアイテムがたくさん隠れていることが確認されており、まるで過去の世界を見ているようである。ブラックスモーカーのような熱水が噴き出す深海メトロの駅舎(共同研究第10報)があり、また、独自に進化した住人たち(共同研究第11報他)も多く確認されていることから、「しんかい6500」は、オクトの地下世界を調査ターゲットに定め、1万2千年の間に起きた急激な海面変動や海洋生物の劇的な進化を明らかにしようとしているのではないかと推察される。スプラトゥーンの世界でも深海での科学調査は欠かせないようだ。

    ところで、オクトの「しんかい6500」には、いったい誰が乗り込んで深海を調査しているのだろうか。

  • 2018.6.19

    共同研究26「深海の住人 ヒカリキンメダイ」

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンション、深海メトロにいる、女子学生風の乗客。目元のキラキラのラインがおしゃれだが、こんな深海魚がいたはずだ。そう、ヒカリキンメダイに似ている。

    ヒカリキンメダイに近縁なオオヒカリキンメの標本。眼の下の白い部分が発光器。(横須賀市自然・人文博物館にて撮影)

    暗い深海では9割もの生物が発光するとも言われている。みずからの体内で化学反応を起こし光る方法もあるが、ヒカリキンメダイの場合は、発光するバクテリア(細菌)を共生させて光る。また、発光器は回転させることができ、光っている側を外側にすれば光って見えるが、そうでない側を外側にして光を消すこともできる。これにより点滅させることができるのだ。真偽のほどは不明であるが仲間同士のコミュニケーションに光を使うという仮説もある。

    深海魚として有名なチョウチンアンコウの仲間も、エスカ(いわゆるチョウチンの部分)に発光バクテリアを共生させて光り、これでエサをおびき寄せていると言われている。

    深海生物たちがなぜ光るのか、まだ解明されていないことも多いが、先に述べた、仲間同士の連絡手段やエサをおびきよせるほか、光にまぎれて身をかくすためや、敵を驚かすため、サーチライトのように使う、など、いろいろな用途があると考えられている。
    深海メトロの乗客にも、生活の中で光をたくみに使う者がいるのだろうか。

    深海生物の発光については「共同研究03 深海のイカ」でも解説しているので参照してほしい。

    チョウチンアンコウの仲間。伊豆大島の東方沖、水深1,103メートルで撮影。誘因突起(イシリウム)先端の擬餌状体(エスカ)が時折発光しているように見える。

  • 2018.6.15

    共同研究25「クリオネと北極の生態系」

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンション、深海メトロにいる、体格のいい乗客。よく見ると、クリオネに似てはいないだろうか。

    「クリオネ」とは、研究者の間で使われる世界共通の名前、学名からきている。和名では、ハダカカメガイと言い、その名が示すように貝殻を持たない、巻貝(まきがい)の仲間であり、北極海など冷たい海にすむ。

    天使の羽のようにも見える翼足(よくそく)をはばたかせるようにして泳ぎ、「流氷の天使」とも呼ばれる。確かにそう言われると愛らしくも見えるが、肉食で、同じ翼足類(よくそくるい。翼足をもつ巻貝の仲間)の、ミジンウキマイマイを、頭の先端にあるバッカルコーンを伸ばしてとらえ、食べる。バッカルコーンをのばした姿は、天使とは言いがたく、どうもうな肉食性の動物である。

    2017年、富山湾の深海から新種のクリオネの仲間が発見された。富山湾の深海は一年を通して特に冷たいので、生息が可能なのだろうか。

    クリオネのすむ北極海は、地球全体で進行しつつある地球温暖化や海洋酸性化の影響が表れやすいという。海洋酸性化が進むと、ミジンウキマイマイのように殻を持つ生物が生息しづらくなり、それを食べるクリオネにも影響が出る可能性が高い。JAMSTECでは、地球環境の変動により、生態系がどのように影響を受けるのか、継続的に調査を行っている。

    「流氷の天使」とも呼ばれるクリオネ(写真提供:JAMSTEC 木元克典主任技術研究員)

    バッカルコーンを開いたクリオネ(写真提供:JAMSTEC 木元克典主任技術研究員)

    クリオネのエサとなるミジンウキマイマイ(写真提供:JAMSTEC 木元克典主任技術研究員)

  • 2018.6.6

    共同研究24「深海の住人 ヒノオビクラゲ」

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンション、深海メトロに、個人客なのか?それとも団体客なのか?ちょっと変わった乗客を発見した。たくさんの個体が連なった「群体(ぐんたい)」のように見える。ヒノオビクラゲだろうか。

    ヒノオビクラゲの「一匹」とは、丸い部分のひとつひとつであり、触手(しょくしゅ)のように見える部分もたくさんの「一匹」(個体)が集まってできている。つまり、何匹もの個体が合わさって、一匹のようにふるまう長いヒノオビクラゲとなるのだ。これを「群体」という。

    それぞれの個体は、まるで一匹の体の器官のように役割分担をしている。丸っこい個体がたくさん集まっているところは、「泳鐘部(えいしょうぶ)」と呼ばれ、泳ぎを担当する。それに連なる部分は「栄養体(えいようたい)」と呼ばれ、えさをつかまえて消化する。そのほか、浮きの役割をする「気泡体(きほうたい)」、個体同士をつなぐ「幹(みき)」など、もともとはヒノオビクラゲという同じクラゲなのに、まったく異なる形と機能を担うようになった個体がたくさん集まってそれぞれの部位をつくっているのだ。

    しかも彼らは、役割分担が進んでいるので、もはや自分だけでは泳ぐことしかできなかったり、えものをつかまえることしかできなかったりと、一人で生きていくことはできないのである。

    相模湾の水深758メートルで「しんかい2000」によって撮影。

  • 2018.5.30

    共同研究23「深海の住人 フクロウナギ」

    フクロウナギに似た深海メトロの乗客。生きたフクロウナギの画像は、残念ながら、JAMSTECの潜水調査船などではとらえられたことがない。

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンション、深海メトロにフクロウナギにそっくりの生物が乗車しているとの報告を受けた。スリムな体に似合わず食いしん坊らしい。食べ物のことばかり考えていたら、口が大きくなってしまったようだ。
    なるほど、大きく開く特徴的な口、小さな目がそっくりである。フクロウナギはエサの少ない深海で確実にえものをとるために、大きくあけることのできる口を発達させたと考えられている。がばっと、袋のような口を開け、海水と一緒に小さなえものを飲み込むというのだ。また、光の届かない深い海にすんでおり、目は小さくなってしまったようである。

    深海には、他にも大きな口をもつ深海魚がいる。するどい歯のある大きな口をもつホウライエソ、口が閉まらないほど長い歯をもつオニキンメ、えものをおそう時に大きなあごを突き出すミツクリザメなど、深海で数少ないえものに出会うチャンスを逃さない工夫だと考えられている。

    はたまた、ちょっと大きすぎるものでも飲み込んでしまう魚もいる。駿河湾の水深644メートルで撮影されたホラアナゴ。ちょっと奇妙な形をしているのが確認された。普段はスマートなまっすぐの体をしているのに、かなり大きなエサを飲み込んだのか、胃袋がエサの形に波打っているようだ。

    エサの少ない深海では生存競争が激しいのだろう。

    ホラアナゴの仲間(駿河湾の水深644メートルで撮影)

    通常時のホラアナゴの仲間。

  • 2018.5.23

    共同研究22「深海の住人 ヘラツノザメ」

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンション、深海メトロでヘラツノザメに似ている生物が確認された。ヘラツノザメは、くちばしのような長い吻(ふん)がヘラのように平べったくなっているのが特徴で、深海域にすむ。

    深海には、体長7メートルにも達するオンデンザメや、生きた化石と呼ばれるラブカ、漆黒の体と大きな目が特徴のユメザメなど、サメの仲間がいくつか確認されている。ちなみに多くの魚は眼をとじることはないが、ユメザメは眼をとじることができる。目を閉じた姿が夢を見ているようだ、というのが名前の由来らしい。

    ところで、サメというと強くて、大きなえものをおそって食べるというイメージがあるかもしれないが、これら深海のサメは深海の世界でどのような存在なのだろうか。たとえば、陸のサバンナでは、草をシマウマなどの草食動物が食べ、それをライオンが食べる。サバンナの生態系のトップには、ライオンなどが君臨していることがわかっている。では、深海ではどうか。サメが生態系のトップだろうか。確かにサメなどの大型の魚類は、生態系のトップに近いところにいると考えられるが、どの生物がどの生物に食べられ、どのような食物連鎖が成り立っているのか、実はまだわかっていないのである。JAMSTECでは、深海における生態系ピラミッドの頂点の生物は誰であるのか、という研究を行っている。生態系の頂点の生物は、生態系のバランスを保つはたらきがあると考えられている。頂点に君臨する生物を明らかにし、深海の生態系を解明することが期待される。

    ヘラツノザメ。相模湾 初島沖 水深580メートルで撮影。

  • 2018.5.11

    共同研究21「深海の住人 カイメン」

    オクト・エキスパンションに出てくる深海の住人の中にちょっと変わった風貌をしている者を発見した。透明な球をたくさん、四方八方にのばしている。ピンポンツリースポンジと呼ばれる深海にすむ生物に良く似ている。「ツリー」と呼ばれるだけあって植物のように見えるが、太陽の光の届かない深海で植物は育たない。ほとんど動かないように見えるが、れっきとした動物で、カイメンという生物の仲間である。カイメンは英語で「スポンジ」。そう、体や食器を洗うアレは、もともとはある種のカイメンから作られていたのである。

    ピンポンツリースポンジは、小さな動物を食べる肉食性のカイメンである。この形態でどのようにエサをとらえるのか。大変興味深いところである。

    ピンポンツリースポンジと呼ばれるカイメンの仲間。有人潜水調査船「しんかい6500」にて、釧路海底谷の1,512mにて撮影。

    一方、多くのカイメンは、海中を漂うマリンスノーなどを、体の表面に無数にあいた小さな孔(あな)から海水とともに取りこみ、こしとって食べる。体の中には、水路をはりめぐらせており、そこを通る海水からエサをとりこみ、また、呼吸もしている。カイメンは原始的な動物で、脳(のう)がない。全体を統括して指令を出す器官がないにもかかわらず、いかにして、環境に合わせて効率的に、体のすみずみまで海水を循環させる水路を形成しているのか。興味深い研究がなされている。そのメカニズムには、たとえば道路や鉄道などの交通網や、水道管のネットワークなど、モノを効率よく運ぶためのヒントが隠されているかもしれないという。

    深海には他にも、ガラス繊維でできたカゴのような形のカイロウドウケツ(写真左上。カイロウドウケツモドキ)や、仏具の払子(ほっす)のような形をしているホッスガイ(写真上段中央)など、様々な形をしたカイメンが知られている。その形は時に芸術品のようである。

    「深海にすむさまざまなカイメンの仲間

  • 2018.4.25

    共同研究20「深海の住人 オオグチボヤ」

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンション、深海メトロでオオグチボヤのような生物を発見したという報告があった。ここでは、オオグチボヤとはどのような生物かを報告したい。

    名前のとおり、「大口」をあけたような「ホヤ」である。口のように見えるのは入水孔(にゅうすいこう)という。流れに向かって入水孔を大きくあけて海水を取り込み、入って来るプランクトンなどをこしとって食べる。通常、ホヤの入水孔は開いたままであるが、オオグチボヤは、小さなエビなどが入って来た時に入水孔を閉じて丸のみにするようすも観察されている。

    日本では、富山湾で群生していることが確認されている他、相模湾などでも見つかっている。

    オオグチボヤ(富山湾、水深707メートル)
    口のように見える入水孔をあけたり閉じたりする

  • 2018.4.21

    共同研究19「音響通信技術」

    インクリングたちは音楽の流行にも敏感なようだ。フェス開催当日のハイカラスクウェアではイカした音楽が流れているのが確認できる。ところで、海の調査をするにも、音が重要である。調査のための長い航海中に研究者のモチベーションを高め、また、リラックスするために音楽が一役買っている―――当然、そういうこともあるだろうが、ここで報告するのは、海の調査手法として使用される「音」のことである。

    陸上の通信には主に電波が用いられている。携帯電話にテレビにラジオ。電波を使って、地球の裏側、いや、宇宙とも交信ができる。しかし、海中では電波はほとんど伝わらないため、長距離の通信には使えない。代わりに音波を使うのだ。クジラの歌が何キロメートルも離れた仲間に届くという話をきいたことがあるだろうか。音波は水中で、空気中よりも速く伝わり、遠くまで届く。

    例えば、有人潜水調査船「しんかい6500」は、音波を使って母船と通信を行う。電波ではなく音波を使った無線電話、水中通話機を使って船の上と「しんかい6500」に乗っているパイロットや研究者は会話ができるのだ。さらに、「しんかい6500」が撮影した画像を、音波を使って母船に送ることができる。「しんかい6500」には3人しか乗れないが、船上で待機している研究チームのメンバーも約10秒に1回送られてくる深海の画像を見ながら、どのような調査が深海で行われているのか知ることができる。

    「しんかい6500」キャビン(耐圧殻)内で水中通話機を使って母船「よこすか」と通話する。

    また、海底の地図や海底下の地層などを調べるときにも音波が使われる。船や海中探査ロボットから、海底に向けて音波を発信し、海底やさらにその下の地層の境界で反射した音波を受信して解析することで、海底の地形や海底下の地層の構造がわかるのだ。地図がなければ、どこを調査したら良いのかわからない。海洋調査のもっとも基本的で重要な情報を得るためにも音波は使われている。

    このように音は海洋調査の現場で、通信手段として、観測手段として、主役を担っているのである。

    海底下の構造を調べる、マルチチャンネル反射法探査システム。
    船に搭載したエアガンという装置から音波を発信し、海底面や海底下の地層の境界で反射した音波を、船の後ろから海面に展開したストリーマーケーブル(マイクを内蔵したケーブル)で受信する。このデータを解析すると、地層の様子や断層の入り方などの海底下、十数キロメートルまでの構造がわかる。

  • 2018.4.20

    共同研究18「地球を掘る船、地球深部探査船「ちきゅう」」

    2018年4月21日~22日に開催されるスプラトゥーン2フェスのお題は「どっちにロマンを感じる?未知の生物vs先進の技術」である。このニュースの中で、テンタクルズのイイダ氏が「ダイナミックポジショニングシステムという制御方式で、波や風でも船が動かされずに位置を保てるんですよ~♪」とのコメントを述べていた。イカ世界の「ちきゅう」にもダイナミックポジショニングシステムが備わっているようである。なお、「ちきゅう」はマンタマリア号の近くに来航していることが確認されている。

    さて、今回は地球の深部を探る「先進の技術」を報告する。船の真ん中にそびえるやぐらが特徴的であるが、この船は海底を掘って地層(コアサンプルという)をとって研究する科学掘削船である。やぐらから、先端にドリルがついたパイプを何百本もつなぎながら下ろし、海底下数キロメートルを掘るという、気の遠くなりそうなことをやってのけるのだ。海底と船はパイプでつながっているので、場合によっては数か月間、船は掘削地点の洋上にとどまっていなければならない。この間、人や物資はヘリコプターで運搬するため、「ちきゅう」にはヘリデッキがあるのだ。
    上述のダイナミックポジショニングシステムとは、船を洋上で定位置に保持する、つまり同じ場所にとどまるためのシステムである。衛星を利用したGPSの情報と海底に設置する音響測位装置からの情報に基づいて、船底に6つあるプロペラの方向を360度、自動で制御し、流れの強い場所でも強い風が吹いても、船の位置を一定に保つことができる。

    「ちきゅう」の船底についているプロペラ(アジマススラスター)。

    「ちきゅう」には、とってきた海底のコアサンプルをすぐに分析できるように、CTスキャナーや地層中の微生物を培養する装置、磁気シールドルームなどさまざまな分析装置、設備を備えた、充実した実験室もある。洋上に浮かんだまま動かない「ちきゅう」は、まさに「海の上の研究所」である。

    「先進の技術」について熱く語るイイダ氏。

  • 2018.4.18

    共同研究17「極限環境に生きるメタン菌」

    2018年4月21日~22日開催のスプラトゥーン2フェスのお題は「どっちにロマンを感じる?未知の生物vs先進の技術」である。
    ところで、「未知の生物」チームのイラストの背景に描かれている、青い物体。これは単なる背景の飾りなどではない。「未知の中の未知の生物」であるが、いったいなんだかお分かりだろうか。

    そう、この生物は「メタン菌」というミクロな生き物なのである。今から約38億年前、地球上の生命は深海の熱水噴出孔で生まれたという説が有力である。そして、我々人類も含む、地球上のすべての生命の祖先は、水素と二酸化炭素を食べてメタンを作り出すメタン菌などの超好熱細菌であると考えられている。
    インド洋の熱水噴出孔から見つかったメタン菌は、122℃でも増えることができる。これは生命が生育できる最高温度の記録を更新した研究成果である。生命は一体、どれくらい高温まで耐えることができるのか。生命の限界を探る研究は続いている。

    さらに、海底のさらに下の地層を形成する岩盤や泥の中には、目に見えない小さな生き物の世界である微生物ワールドが広がっていることがわかってきた。青森県八戸市沖の海底を地球深部探査船「ちきゅう」で、約2キロメートルも掘り、地層のサンプルを採取することに成功した。深海底のさらに下、超高圧の極限環境である地層の中には、それまで考えられていたよりもはるかにたくさんの微生物が存在することがわかり、その中からメタン菌を分離することに成功した。水素と二酸化炭素を食べてメタンを生成する、メタン菌の働きが天然ガスの生成に関係していることもわかってきたのだ。

    地球の奥深くで、我々人間の日常を超えた世界で静かにゆっくりと生きている小さな生き物にこそ、ロマンを感じなイカ?

    海底下約2,000メートルから分離したメタン生成菌の蛍光顕微鏡写真。紫外線に波長の近い光を当てると青白く光って見える。右下の白線は10マイクロメートル(10/1000ミリメートル)。小さくてもちゃんと生きている生物である。(写真提供:井町 寛之)

    極秘入手したイラスト制作途中の監修メモ。左上に「メタン菌要素がほしい」とのコメントが入っている。

  • 2018.4.17

    共同研究16「マリンスノー」

    深海の映像を見ていると雪のようなものが降っていることに気づくだろうか。これはマリンスノーという、プランクトンの死がいや動物のフンなどが集まって粒子となったものである。浅い海では、太陽の光を受けて植物プランクトンが光合成を行い、有機物(栄養分)を合成する。植物プランクトンを食べる動物プランクトンがいて、それらを食べる魚がいる。浅い海の食物連鎖である。

    深海には太陽光が届かず、植物プランクトンは生息できないが、浅い海でつくられた有機物がマリンスノーとなって降り注ぎ、深海生物の重要な栄養源となっていると考えられる。

    スプラトゥーン2、オクト・エキスパンションの深海をよく観察すると、マリンスノーのようなものが認められた。深海メトロの乗客の中には、これを栄養源としているものもいる可能性が高い。

    オクト・エキスパンションの深海底。マリンスノー様の浮遊物が観察された。

  • 2018.4.16

    共同研究15「深海の住人 ニュウドウカジカ」

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンションに、ニュウドウカジカに似た乗客が出てくる。体形は丸く、鼻が大きく垂れているのが観察される。
    ニュウドウカジカは、カサゴ目ウラナイカジカ科の魚類で、大きく丸い頭に短い皮弁(ひべん)が一面についており、無精ひげのはえた入道(丸坊主)のように見えるというのが和名の由来らしい。

    ある協会が、世界で最もみにくい生物に選んだとして話題になったブロブフィッシュのことである。その時に紹介された画像では、全体的に体が垂れ下がり、特に頭部の中央部は大きく垂れ下がった鼻のように見える。しかし、生息環境下ではこのようなものは観察されない。

    ニュウドウカジカは、高圧低温、エサの少ない深海で生きていくために、あまり動かずじっとしていることが多く、機敏に泳ぐ魚類のように筋肉が発達していない。省エネルギーな生き方をしているのだ。体には水分を多く含み、皮ふはやわらかくウロコも持たないために、陸上に引き上げられてしまうと本来の形を維持できないのである。

    ちなみに、インクリングは2つの形態に変形できるように進化した影響で表皮が極めて薄くなり、水に入ると体液が表皮の外に流れ出し、体の形を保てなくなってしまうようである。

    みにくいなどというレッテルはさておき、生き物の形や機能には生き抜くためのしたたかな戦略があると思わなイカ?

    ニュウドウカジカ(相模湾 初島南東沖 1,229m)

  • 2018.4.13

    共同研究14「特製フェスTシャツの観察結果」

    4月21日と22日にスプラトゥーン2で開催される「フェス」に参加登録をすると特製のTシャツが入手できるという報告を受け、さっそく現場に赴いて採取に成功した。
    このフェスTのデザインは、我々JAMSTEC(ジャムステック)の地球深部探査船「ちきゅう」の乗船者が着用する赤い作業着と、有人潜水調査船「しんかい6500」の搭乗者が着用する青い潜航服と同系色になっている。そのカラーリングは、太陽光が少しずつ届かなくなっていく海の深さと同じように特製のグラデーションボディになっている。

    海が青く見えるのは、太陽から届く赤色の光が海の中ではすぐに届かなくなり、青色の光がたくさん届くためである。海の中に太陽の光の届く割合は、海水のにごり具合にもよるが、水深1メートル地点で半分以下の45パーセントに、水深100メートル付近では、わずか1パーセントにまでに減ってしまう。一番深いところで水深1万メートルもある深海は、暗黒の世界なのだ。

    ところで、背中には、大きく我々JAMSTECの正式名称である「国立研究開発法人海洋研究開発機構」の漢字とロゴが、また右肩にはJAMSTEC地球深部探査センター(CDEX)のロゴが、そのままあしらわれていることが確認できた。

    まさにイカしたJAMSTECスタッフTシャツである。諸君も、我々JAMSTECの一員として、イカ世界のために活躍してくれることを心から期待している。

    海から見た地球と生物の世界

  • 2018.4.12

    共同研究13「イカ世界のJAMSTEC」

    マンタマリア号付近で確認された地球深部探査船「ちきゅう」。JAMSTECとよく似たロゴ。

    スプラトゥーン2に、我々JAMSTEC(ジャムステック)のヘルメットとそっくりな「オーシャンズヘルム」を入手したイカたちが歩き回っているらしい。さらに、マンタマリア号の近くに地球深部探査船「ちきゅう」が来航し、その船体には、我々JAMSTECとよく似たロゴを掲げていることも確認されている。

    その文字は解読できないが、どうやらイカ世界にも我々と同じ海洋研究機関が存在している可能性が高いと推察される。

    我々JAMSTECは、「海洋・地球・生命の統合的理解への挑戦」を目標に掲げた海と地球の研究機関である。水深が1万メートルもある世界最深部の海底や冬は氷に閉ざされてしまう北極海、さらには人類未踏の地球深部マントルまでの調査技術を開発することによって、地球の環境と多様な生命の進化を、この広大な海から明らかにしようと、日夜、研究と開発を進めている。
    諸君も、イカ世界で「海と地球と生命」を研究する彼らを応援してほしい。

    こちらは我々JAMSTEC(ジャムステック)のロゴマーク。上部のライトブルーは「空」を、下部のダークブルーは「海」を表している。

  • 2018.4.11

    共同研究12「ダイオウグソクムシ」

    オクト・エキスパンションに登場するダイオウグソクムシ近似種。

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンションには、ダイオウグソクムシによく似たキャラクターが登場するようだ。ダイオウグソクムシとは、メキシコ湾や大西洋、インド洋の深海に生息する、世界最大のダンゴムシの仲間である。成長すると体長は50センチメートルにも達し、体重は1.5キログラムを超える。

    日本最大のダンゴムシの仲間は、ダイオウグソクムシによく似たオオグソクムシ。福島県以南から台湾にかけての太平洋の深海に生息し、体長は12センチメートル程度である。ダンゴムシのように完全にではないが、丸くなることができる。

    名前の由来は、日本の甲冑や鎧・兜を指す具足(ぐそく)であり、まさに甲冑のような硬い甲羅をもつ。腹側には7対(=14本)の歩脚のほかに、板のような形をした脚をもち、これをバタバタさせて泳ぐことができる。死んだ動物などの肉を食べ、「海の掃除屋」と呼ばれる。大きな複眼がイカつい印象を与える。スプラトゥーン2の世界の近似種とは、歩脚の数などから区別できると推察される。

    エサ(トリ肉)に近づいてきたオオグソクムシ(潜航海域:駿河湾、水深:782.6 - 783.0メートル)

  • 2018.4.10

    共同研究11「センジュナマコ」

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンションに出てくるという深海メトロの車掌、「ナマコ車掌」のモデルになったのは、深海にすむセンジュナマコと考えられる。
    まるっこい体形から、英語では「海の豚」とも呼ばれるらしい。和名の由来は千手観音。そう、たくさんはえている「足」が特徴的である。

    ナマコやヒトデ、ウニは棘皮動物門(きょくひどうぶつもん)という同じグループに属する生物であるが、これらには管足(かんそく)という移動や感覚にかかわる器官がある。センジュナマコの腹側にある足のようなものも管足である。浅い海のナマコよりだいぶ大きいように思われるが、理由はわからない。さらに背中の突起も、足である。疣足(いぼあし)と呼ばれる。なお、体の前の方(映像の手前)に見えるのは触手で、泥の中のエサを探すと考えられている。
    「ナマコ車掌」はしゃべるようだが、センジュナマコがしゃべっている姿はこれまでに観察例がない。

    三陸沖の水深900メートルで撮影されたセンジュナマコ

    JAMSTECの「深海映像・画像アーカイブス(J-EDI:ジェダイ)」の「スタッフのお気に入り深海映像」では、選りすぐりの様々な深海の映像が視聴できるためオススメである。

  • 2018.4.9

    共同研究10「ブラックスモーカー」

    深海の駅舎のような建物から煙が噴き出している。

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンションの深海底にあるらしい駅舎のような建物には煙突があり、モクモクと煙のようなものを吐き出している。この煙は現実世界の深海底でも見られる。「熱水噴出孔(ねっすいふんしゅつこう)」と呼ばれ、海底の割れ目からしみ込んだ海水が、地下のマグマの熱で温められ高温となった「熱水(ねっすい)」が噴き出す場所である。

    深海は高い水圧がかかる世界なので、水がふっとうする温度が摂氏100度よりもかなり高く、時には摂氏400度にも達することもあるという。熱水には、海底下のさまざまな金属成分や化学物質が溶けており、それが海底から噴き出した時に沈殿してチムニー(英語で煙突の意味)と呼ばれる構造を作ることがある。

    チムニーは、大きいものでは数十メートルもの高さに成長する。貴金属を多く含み、将来、鉱物資源として利用できるのではないかと注目されている。熱水は、無色透明なこともあるが、含まれる成分によって黒い煙のようなブラックスモーカー、白っぽいホワイトスモーカーなどになる。

    チムニーのまわりには、おびただしい数のエビやカニなどが、密集していることがあるが、これは、暗黒の深海に形成される特殊な生態系である。熱水に含まれる化学物質をエネルギー源にして有機物(栄養)を作り出す、目に見えないほど小さな微生物がいる。ちょうど陸上の植物が太陽の光エネルギーを使って光合成を行い、有機物を作り出すのと同じである。熱水域の微生物を食べたり、体内に共生させたりして、エビやカニ、貝など大きな生物が生きている。熱水さえあれば、いくらでも栄養が作れるので、チムニーは深海のオアシスのような場所なのだ。

    インド洋の中央海嶺(海底がつくられる活発な場所)、水深2,451メートルのブラックスモーカー。「しんかい6500」が撮影。

  • 2018.4.6

    共同研究09「超深海の住人」

    超深海とは水深6,000メートルより深い海のことを指し、ふつうの深海とは異なる生態系が形成されているという。特に魚類は、高い水圧でタンパク質が変化してしまうため、水深8,200メートルより深い海にはすむことができないと考えられている。
    2017年にマリアナ海溝の水深8,178メートルで、マリアナスネイルフィッシュと思われるシンカイクサウオの仲間が撮影された。これまで、1970年にデンマークの船が水深8,370メートルでヨミノアシロという魚を捕らえたという記録があるが、精密な深さの測定や映像は得られておらず、魚類の世界最深映像記録となった。

    深海の生き物についてもっと知りたいキミは「海と地球を学んじゃうコラム01」もチェックしてほしい。

    マリアナ海溝の水深8,178mにおいて魚類の撮影に成功(JAMSTEC/NHK)

    This research cruise was conducted under a Special Use Permit (#12541-17001) issued by the Mariana Trench National Wildlife Refuge, U.S. Fish and Wildlife Service, Department of the Interior.

  • 2018.4.6

    共同研究08「深海のタコたち」

    泳ぐオオメンダコ(岩手県釜石沖)

    深海にはイカもいればタコもいる。タコは頭が良く器用で、8本の足をたくみに使いビンのフタを開けることもできるなどと言うが、深海にすむメンダコは少し様子が異なる。8本の足は短く、足と足の間は傘膜で連結し、あまり自由がきかない。危険を察知すると耳のようなヒレをぱたぱたと動かして泳ぐのだが、やや動きは緩慢である。タコといえばスミ(スプラトゥーンではインク)だが、暗い深海で暮らしているせいかスミを持たない。

    タコの祖先に近いコウモリダコ(小笠原諸島、水深850メートル)

    変わったすがたのコウモリダコ。研究者が使う世界共通の名前(学名)は「吸血鬼のイカ」という意味である。イカなのかタコなのか。実は、タコの祖先に近い原始的な生物である。インパクトのある名前とはうらはらに、マリンスノーを食べていると言われている。発光器を持ち、腕の先端にある発光器からは光る粘液のようなものを出す。スミの代わりであろうか。

    現実世界の深海にすむタコには、これらのようなちょっと変わり者も観察されている。

  • 2018.4.5

    共同研究07「海と地球を探るファッション」

    今回は、スプラトゥーン2のガールとボーイがカッコよく着こなしている服に注目したい。

    まず、ガールが着こなしているのはJAMSTEC(ジャムステック)の有人潜水調査船「しんかい6500」の潜航服にそっくりである。
    深海の超高圧の世界に地上の我々が行くためには直径が2メートルしかない耐圧殻(たいあつこく)と呼ばれる球形のキャビンに乗り込み調査をしなければならない。潜水船内には酸素が供給され、呼吸で吐き出す二酸化炭素を薬剤で吸収することで、居住環境を維持している。燃えやすい酸素が供給される潜水船内は火気厳禁。ライターやマッチはもちろん、口紅などの化粧品もダメ。発火性、揮発性のものは一切持ち込めない。
    加えて、深海は海水温が摂氏数度しかなく冷たい。深く潜るほど潜水船内は寒くなるが、静電気が発生しやすい化学繊維の衣類も持ち込めない。そこで、防寒と防火用に乗船者には専用の潜航服が用意されている。

    一方、ボーイが着こなしているのはJAMSTEC(ジャムステック)の地球深部探査船「ちきゅう」の乗船者たちが着用しているカバーオールにそっくりである。
    水深が数千メートルもある海底から地球の内部を奥深くまで掘削調査するためには、巨大な装置や数百トンもある機械を揺れる海の上で操らなければならない。さらに、海底下の地下世界は高い圧力がかかっており、地層からガスなどが大噴出する恐ろしいアクシデントを防ぐことも必須である。
    未知の世界を探る「ちきゅう」の乗船者たちは、常にセイフティー・ファーストの大原則にのっとり、リスク管理を怠らない。もちろん作業着も目立つ色のカバーオールを着用し、頭にはヘルメット、顔にはゴーグルを装着し、手にはグローブ、足元は鉄板が入った安全靴が必須である。

    今回は、ガールとボーイがカッコよく着こなしている服から、未踏のフロンティアを研究する現場のファッションをレポートした。キミたちもJAMSTECと一緒に海と地球を探検してほしい。

    「しんかい6500」キャビンの様子。専用の潜航服を着用する。

    地球深部探査船「ちきゅう」の乗船者たち。人類未踏の地球を探っている。

  • 2018.4.4

    共同研究06「深海の世界」

    スプラトゥーン2のオクト・エキスパンションは深海の世界が舞台となる。本レポートでは、現実世界の深海とはどのような世界であるかを報告する。

    さて、深海とは水深何メートルより深い海を指すのか。実はひとつの決まった定義はない。海洋生物学的には水深200メートルより深い海を深海と呼ぶ。ちなみに世界の海の平均水深は3,800メートルであり、海の容積の93%は深海である。水深が深くなると太陽の光がだんだんと届かなくなり、場所によっても異なるが、水深200メートルにもなると植物プランクトンはもはや光合成ができず生きていくことができない。浅い海には海藻や植物プランクトンがいるが、深海に植物はいないのである。

    一般的に、深海の住人の主な食べ物は、浅い海からもたらされるわずかなもの。深海はエサの少ない環境であると言える。そして水温は2度ほどでとても冷たい。活発に動きたくない気持ちもよくわかる。さらに地上の世界と異なるのは圧力である。水深が10メートル深くなるごとに水圧は1気圧ずつ増していく。例えば水深1,000メートルでは地上の約100倍もの高圧の世界になるのである。

    駿河湾の砂漠のような深海底。水深976メートル。

    深海底には、熱水噴出孔とよばれる海底温泉のような場所がある。地上では水は100度で沸騰するが、高圧の深海では沸騰せず、数百度にもなる熱水が勢いよく噴き出している。そこには、おびただしい数のエビやカニや貝がびっしりとひしめきあい、「化学合成生態系」を形成している。それらの栄養源は、熱水に含まれる化学物質。太陽の光には頼らず、地球の内部からわいてくるエネルギーに頼る、暗黒の生態系が形成されているのだ。

    水深約2,500メートルのインド洋の海底にある熱水噴出域にも独自の「化学合成生態系」が発見されている。

  • 2018.4.2

    共同研究05「ロボットボム・「しんかい6500」仮説」

    スプラトゥーン2に登場するロボットボムとJAMSTEC(ジャムステック)の有人潜水調査船「しんかい6500」。なんだか似ていなイカ!?見た目はキミの判断に任せるとして、それぞれの性能が似ているのか考察してみる。

    JAMSTECの有人潜水調査船「しんかい6500」は、人を3人乗せて水深6,500メートルの深海まで潜り、海底を探査できる。深海の狙ったポイントへはパイロットが操縦し、海底の岩などを避けながら進むことができる。

    一方で、ロボットボムは、敵を追いかけインクをまき散らす自動追尾が搭載されたサブウェポンで、自分で使うと大変便利なようだが、相手が使うと追いかけまわされて大変厄介な代物である。しかし、追尾の途中で壁を避け、段差を上がれないという弱点がある。

    もしかしたら、見た目は似ているかもしれないが、それぞれの目的や性能は全く違うようだ。世界の深海を調査する「しんかい6500」の性能に興味がある諸君はコチラを見て欲しい。

  • 2018.4.1

    共同研究04「オーシャンズヘルムは実在した!」

    JAMSTEC(ジャムステック)は、海洋と地球をカガクする実在の研究所である。研究者は、海洋調査のために研究船に乗って大海原に繰り出し、生物や岩石などのサンプルを深海などから採取し、様々なデータを観測する。研究調査船の甲板での作業は、安全第一。甲板作業では、ヘルメットと安全靴は必須である。

    スプラトゥーン2の4月のサーモンランでもらえるギア「オーシャンズヘルム」は、JAMSTECのヘルメットをモデルにしているようで、青いマークはJAMSTECのロゴとそっくりである。

  • 2018.4.1

    共同研究03「深海のイカ」

    ハワイヒカリダンゴイカ 残念ながら光る煙幕を吐いている写真はJAMSTECではとらえられていない。

    深海のイカと言えばダイオウイカが有名だが、他にもイカしたヤツが生息している。たとえばヒカリダンゴイカ。イカといえばスミ(スプラトゥーンではインク)だが、暗い深海でインクを吐いたって見えやしない。だからヒカリダンゴイカなどは光る煙幕を吐くことが知られている。光をたくみに使うのは、富山湾で有名なホタルイカ。日中、おなか側(泳いでいる時に下になる方)にある発光器をうすぼんやりと光らせ、上からわずかに降り注ぐ光の中に紛れカムフラージュすると考えられている。ホタルイカは、他に触腕(腕の中でも長い2本)の先端に別のタイプの発光器があり、強い光を発して目くらましとして使うようである。さらにもう一種類、眼にも発光器を持っているが、この役割は良く分かっていない。

    クラゲイカ。左眼が右眼の2倍ほどもある。

    さらにウワテな進化をとげたのはクラゲイカという、クラゲなのかイカなのかわかりづらい名称を持つイカだ。深海魚の中には、ホタルイカのように、身体のおなか側を光らせて敵に見つかりづらくするものが知られている。クラゲイカの左眼は右眼の2倍ほどの大きさがあり、特殊な構造で魚の発光を見破ることができるという。左目で自分の上方を見上げ、魚がいたら捕食する。魚としては、発光によって隠れているつもりだからさぞ、くやしいことであろう。深海は太陽光がほとんど届かない暗闇の世界である。今回の共同研究レポートでは、光をたくみに使い生きるイカたちのイカした進化を報告した。

  • 2018.4.1

    共同研究02「フェス 先進の技術とは?」

    2018年4月21日~22日開催のスプラトゥーン2フェスのお題は「どっちにロマンを感じる?未知の生物vs先進の技術」である。では、先進の技術に感じるロマンとはどのようなものであろうか。図に示されているのは、JAMSTEC(ジャムステック)の有人潜水調査船「しんかい6500」と地球深部探査船「ちきゅう」である。「しんかい6500」はその名の通り、水深6,500メートルまで潜ることができる3人乗りの潜水調査船である。6,500メートルの深海では、地上の680倍の高い水圧がかかる。さらに暗黒で、冷たく、電波も使えない、機械にとっても人間にとっても過酷な世界である。一方、「ちきゅう」は、水深数キロメートルの海底をさらに数キロメートル下まで掘って、陸上のボーリング調査のように、地層のサンプルを取って来る船である。究極の目標は、人類がまだ手にしたことのない地球内部の“マントル”を実際に取って来ること。しかし、深い海のさらに海底下を掘削するためには、海中の流れ、地層の圧力や高温などたくさんの障壁があり、容易ではない。
    先進の技術は、過酷な環境での調査を可能にし、海と地球の壮大な謎を解くカギを見つけることを可能にしてきた。しかし、深海、そして地球はまだまだわからないことだらけ。これからもその謎に挑むため、新たな技術開発が期待されているのだ。

  • 2018.4.1

    共同研究01「フェス 未知の生物とは?」

    2018年4月21日~22日開催のフェスのお題は「どっちにロマンを感じる?未知の生物vs先進の技術」である。では、未知の生物に感じるロマンとはどのようなものであろうか。図に示されているのは、右上から順に、リュウグウノツカイ、ニュウドウカジカ、ダイオウグソクムシ、ラブカ、デメニギス、マリアナスネイルフィッシュ(シンカイクサウオの一種)。いずれも深海生物である。海には、すでに発見されているものだけで25万種もの生物が生息していると言われているが、まだ発見されていない生物がたくさんおり、その正確な数すらわかっていないのである。特に深海は調査するのが難しく、未知の生物の宝庫であるといえる。さらに、海や海底のさらに下には、目には見えない微生物が、途方もないほど多様で多量にいると考えられている。海と言っても暖かい海、冷たい海、浅い海、深海、岩礁帯、砂地などなど、多様な環境があり、それぞれに適応した多様な生命が暮らしている。どのような未知の生物がいるのか。ロマンあふれる世界ではないか。

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