WCRP-JSC報告

2010年3月19日
中島 映至  
JSC委員・東京大学気候システム研究センター


世界気候計画の第31回合同科学委員会(WCRP-JSC)が2010年2月15日から19日、トルコ・アンタリアで開催された。・WCRPの目的は、気候予測と人間活動の気候影響把握の推進と振興である。日本からは中島が委員として参加。また気象庁から高野清治氏が参加した。詳細なJSC報告文書は、「WCRP JSC-31」ウェブサイトで公開されている。


1.枠組みの議論

  • 本会議の目的は、2013年以降のWCRPの長期の機能と体制に関する議論と、世界の気候サービスシステムの中における研究(特にWCRP)の役割の検討である。
  • 2005-2015年期の戦略枠組み(WCRP Strategic Framework, Coordinated Observation and Prediction of the Earth System (COPES))実施のために、2010年から2015年の実行計画書が作成されている。
  • 2013年以降の枠組みを30回委員会での議論をもとに、さらに議論した。4つのコアプロジェクト(横糸)(大気ー海洋、陸域ー大気、雪氷圏、成層圏ー対流圏)を確認。重要な縦糸として、観測と解析、モデル開発・評価・実験、プロセスと理解、応用とサービス、キャパシティー・ビルディングが設定される。
  • さらにコアプロジェクトを結びつける3-6年程度の重点課題(Grand Challenges)を設定することになった。
  • 今後のWCRPの重点課題と体制を検討するために2011年秋(2010.10.24-28)に「WCRP Open Science Conference: Climate Research in Service to Society」がデンバーで開かれる。1500名規模を想定している。

2.できごと

  • WCC-3では気候サービスの役割とそれへの気候研究コミュニティーの支援、ユーザー・インターフェースの確立、キャパシティー・ビルディングが大きく取り上げられた。OceanObs'09では、持続的な海洋観測と情報システムの構築が話題になった。
  • ICSUによるWCRPの活動に関するレビューが行われた。
  • 第5期結合モデル相互比較実験(CMIP5)や2つの領域スケールモデリング(Task Force on Regional Climate Downscaling (TFRCD), Coordinated Regional Climate Downscaling Experiment (CORDEX))などの重要な活動が行われた。
  • WGNE-26会合が2010年11月、東京で開かれる。

3.活動の議論

  • GCOSを始めとする統合的地球観測システムの必要性や、それを背景とした観測グループとモデルグループのより緊密な連携の必要性が指摘された。
  • COSPなどのSimulatorが使われるようになり、より高度なモデル診断、データ解釈が可能になった。
  • 地球化学、大気質、植生、氷河研究とそのモデリングとの気候研究の間の相互作用が増えてきた。
  • 各国で気候サービスに関する投資や組織化が行われている。例えば、ドイツ・ハンブグルにClimate Service Center (CSC)ができた。
  • 気象庁の気候サービスや東京気候センターからアジアの気象機関への気候データの提供、同化プロジェクト(JRA55, 2010-2013)が紹介された。中島からは、革新プロジェクト、環境省S5プロジェクト、ペタコン・プロジェクト、気象庁・環境省の地球観測連携拠点(温暖化分野)、GEOSSのためのDIASプロジェクト、JAXAの衛星計画を紹介した。
  • ICSUのEarth System Visioning白書(http://www.icsu-visioning.org/)「Grand Challenges in Global Sustainability Research: A Systems Approach to Research Priorities for the Decade」における重点課題のパブリックコメント募集が行われた(21 December - 21 February)。WCRPがすでに行っている活動がかなり重複していることが指摘された。

4.その他

  • IPCCへの批判 (climategate)問題への対処を議論した。特に、イギリス、ドイツの委員から対応の必要性が指摘された。しかし、同時に当事者でもあることもあり、何を訴えるべきかについて長い議論があった。結論として、WCRPがより一層の努力を表明する旨のレターをIPCCに送ることになった。