Leg 2 (その3)
エンジンルームって?

 皆さん、「私の職場はエンジンルームです」と言われて、すぐに「あぁ!あそこのことか」と思い浮ぶ人は少ないのではないでしょうか。テレビや映画でもブリッジ(操舵室)の映像はあっても、エンジンルームのものはあまりないと思います。今回はそんな『エンジンルーム(機関室)』について簡単に紹介します。
 「みらい」(以下本船)も他に漏れず鉄と機械の集合体ですが、そのなかでも船の運航や船内で生活するために必要な機械の密集した部屋がエンジンルームです。
 エンジンルームの中を見回してみると、特にその存在感を発しているのが、やはりメインエンジン(主機関)でしょう。本船の場合、4基で10,000馬力と普通乗用車約70台分とほぼ同じパワーのエンジンが約4.1mのプロペラ2組を1分間に136回転させることにより、海上を時速約30 kmで走ることができます。
 その次にエンジンルームを占領しているのが、ディーゼルジェネレータ(発電機)です。前にも書きましたように、船には多くの機器があり、その殆どが電気を必要とするため、ディーゼルジェネレータで発電して船内に供給しています。本船のすべての発電機を運転すると、約600万ワットの電力を作ることができます。これは一般家庭の消費電力量の1年数ヶ月分にあたります。皆さんの家で消費している電力量と比べると、その大きさがわかると思います。
 さらに、蒸気を作り各部に供給している補助ボイラや、機械の制御や掃除、汽笛を鳴らすために使う圧縮空気を作るエアコンプレッサ(空気圧縮機)、海水から毎日40トン以上の生活用水を作る造水器(飲料水には使いません)、約1,000℃まで温度を上げ、プラスチックもダイオキシンを出さずに燃やすことができるゴミ廃油焼却炉などもあります。
 その他に、数々の工作機械をそろえ、その時のニーズにそったものを作ることの出来る機関工作室や、エンジンルーム内ではありませんが、各部屋の温度管理をする空調機、乗船している80人の約1〜2ヵ月分の食料を貯蔵するための冷凍・冷蔵庫、研究試料保管庫などを冷やすための冷凍機などがあります。

 このようにエンジンルームは、船の運航や、その中で働く人たちのくらしを支える場所です。本船では、機関長以下10〜11人のメンバーでこの機器の面倒をみていますが、現在外気温度18℃に対しエンジンルーム内温度30℃、この温度差をみても分かるように、寒冷地ではすごしやすく、熱帯地域では45℃をこえ、汗をかきダイエットするのに最適な場所となります。

みらい」三等機関士 橋本



本船の主機関
 タイプ:ダイハツ6DK-28(2,500馬力) 
これは4号機です。 ちなみに、主発電機も原動機のタイプは同じです。
 入渠時に撮影しました本船後部およびプロペラ全景です。
蒸発式造水器
 海水を蒸発させ水と塩分を分離します。水の出来る量は1日15トン程度ですが、かなり純度の高い水ができます。
R.O.式造水装置
 逆浸透膜フィルターに海水を通すことにより、水と塩分を分離します。水の純度は低いですが、1日30トン以上の水ができます。
ゴミ廃油焼却炉
 1日で家庭用ゴミ袋約60袋分のゴミを焼却することができます。
工作室
 甲板部より依頼された品物を製作しているところです。
エンジンコントロールルーム(機関制御室)
  機器の状態を監視するとともに操作する場所。機関士および操機手が4時間毎に交代しながら、24時間当直を行っています。これは、交代時の引継ぎ風景です。
 毎朝ミーティングで注意事項等の伝達を行い、観測および整備作業が円滑に行えるようにしています。