Leg 3  第7日目(10月25日)
 今回はチリのバルパライソからブラジルのサントスまで乗船することになりました海洋科学技術センターのむつ研究所の原田尚美さん(レグ3の調査主任)および横須賀本部の向後 毅さん(OD推進室)、金井知明さん(普及・広報課)の3名からの乗船報告を掲載します。
 

10月25日(土) 快晴
 マゼラン海峡の中間点に到着。左岸(西方向)にチリ南端の町プンタアレナスが見えてくる。人口10万人ほどの町でこれより南には小さな村が一つあるだけとのこと。右側(東方向)にはフエゴ島(火の島)が見える。マゼランがここを通過した時に明かり(焚火)が見えたことからこの名前がついたと言われているが、現在は夜になると灯台の明かりが見えるだけ。
今日は風が強く、甲板に立っているのが厳しい寒さではあるが、天気は快晴で心地よい。予定を多少変更してプンタアレナスの沖にて3回(3種類)の採泥作業を行う。この海域では堆積速度も非常に速いと考えられ、採泥管一杯20mの採取ができる。迷路のように狭いフィヨルドを航行した後の採泥作業だけに乗組員の疲労もかなり蓄積しており、連日冷え込みの厳しい中、夜遅くまでデッキで作業をしている観測技術員もまた同じ。研究者はしっかりと研究成果を出すことで報いることになる。この航海での堆積物採取はこれで全て終了。研究者は1年以上も前からこの航海の準備をしてきたが、本番の採泥はたったの1週間である。しかし、この1年が凝縮した実りある1週間であった。
 後部デッキでは使用したクレーン等を片付ける作業が始まる。
今回の航海にはチリ、アルゼンチンをはじめとする各国の研究者も乗船しており、調査に一区切りがついたとあって彼らもほっとした様子。この日は深夜おそくまで彼らは音楽をかけ、のんびりお疲れパーティーを開催していた。ラテンのノリで。
 夜9時過ぎに完全に日が暮れると、外は満天の星空。南十字星はじめ幾万の星が輝き、水平線や地平線まで星が見え、灯台の明かりも一緒になる。海上にはタンカー、観光船等の船外灯が交差し合い、非常に美しい光景。チリ海軍退役軍人のマゼランパイロット2名がプンタアレナスのそばで下船。19日にバルパライソを出航して以来、船長、機関長とともにほとんど部屋に帰らず寝ずに働いていた。複雑なチリ沿岸の水先案内だけでなく、詳細な気象情報の提供やたびたび変わる採取地点についてもチリ海軍にすぐに連絡をとり許可をとってくれた。この航海中、チリ沖、フィヨルド内における気象や海流の状況、航行に関するアドバイスもしてもらい、堆積物採取にとても役立った。今回の研究航海の成功は、彼等なしではありえなかった。
 深夜1時、アルゼンチン海軍との交信。入国の許可をとる。午前1時30分アルゼンチン領海に入り、大西洋に出る。一路次の寄港地ブラジルのサントスへ向かう。


マゼランパイロットと赤嶺みらい船長
プンタアレナス近くのマゼラン海峡両岸の山上は雪で覆われている。
深夜下船するマゼランパイロット。