Leg 5 その1
 あけましておめでとうございます。
 「Beagle2003」レグ5研究航海では、南アフリカのケープタウンを出港し、マダガスカルのタマタブ、モーリシャスのポートルイスを経由し、オーストラリアのフリーマントルまでの約37日間のインド洋横断を行います。これまでの航海と同様に、CTD観測、化学成分の採水・分析を24時間体制で行い、合計145測点の観測を実施する計画です。今航でも日本人研究者・観測技術員をはじめ、ドイツ、モザンビーク、イタリア、オーストラリア、チリ、南アフリカ、ケニヤ、モーリシャス、マダガスカル、タンザニア、フランスからの研究者が参加し、国際色豊かな面々で観測を続けています。
 レグ4のその2で「CTD観測・採水」について紹介しましたので、今回は化学成分分析の「分析チーム」を紹介します。
 「分析チーム」の仕事は、採水した海水を各種成分ごとに化学分析し、データを取得することで、「CTD観測・採水チーム」と同じく24時間体制で作業を行います。船上で直ちに行う分析は、溶存酸素・フロン・塩分・pH・全炭酸・アルカリ度・栄養塩に関する7項目です。そのほかにも日本に持ち帰って行う項目として、放射性炭素・有機炭素・ヘリウムなどの分析があります。 船上で行う分析作業は、1測点で数時間から10時間近く掛かります。そのために多くの測定装置は2台ずつ搭載し、同時並行で分析作業を進めてます。24時間ほとんど全ての装置が動いており、その周りで観測技術員が試料の測定準備、分析データの整理に追われています。どの実験室も人がいなくなることはありません。
 分析装置は精密でしかも繊細なため、長期間分析を続けていると故障することが多々あります。そのような時は担当する装置の観測技術員は必死になってその場で装置の修理を行うことになりますが、分解や組み立て、調整などについて勉強していますので、たいていの故障については直すことができます。部品が壊れて代わりがないときは、「みらい」の機関部や甲板部に部品を製作してもらい、修理も手伝ってもらいます。装置が壊れないように分析作業の合間に行うメンテナンスは欠かすことができません。
 「分析チーム」は海水の化学成分を測定するだけではなく、分析データの処理も行います。分析値に異常なものがないか、観測海域のデータはどのようになっているか常に確認をします。これも「分析チーム」の大事な仕事の一つです。「分析チーム」の悩みは外に出て太陽の光を浴びる機会があまりないことです。ワッチ時間は海水試料の分析に追われるので実験室で過ごさざるを得ず、結果として甲板に出ることがほとんどなくなるのです。たまに甲板に出ると、目がくらんでしっかりと目を開けることができません。まるでドラキュラのような生活です。
 このように我々「分析チーム」は、世界一周のゴールであるフリーマントルに向けて、日々海水分析を続けています。

 「Beagle2003」研究航海では、観測技術員の補助として多くの学生が乗船しています。その学生から感想が寄せられましたので紹介します。
○ 揺れる船での採水等は大変だったが、陸にいてはできない経験をさせてもらった。
○ 海と空と月と星と太陽と雲と風と波と私を「みらい」がつなげる。
○ 今回の「みらい」乗船でこれだけ大規模な計画に参加でき、地球温暖化という問題に携われたことを光栄に思います。今後この観測の成果が役立っていくことを望んでいます。
○ 1/10,000の値まで分析値を出す塩分分析はとても神経を使い大変ですが、いい経験になりました。オートサル 寝てもさめても オートサル。
○ 時がすすむ毎に海から昇る太陽、海に沈む夕日、青い空や雲、そして虹に見たことのない数々の星、見えるものすべてがそのときこの船に乗った人しか見ることのできない、二度とありえない貴重な風景。それがオレの優越感です。
(株)マリン・ワーク・ジャパン 佐藤 憲一郎
生化分析室1
第2甲板にある実験室。 ここでは塩分・栄養塩・全炭酸の分析を行います。実験室には窓がないため、分析担当者は外が晴れているのかも分からないのです。
生化処理室1
同じく第2甲板にある実験室。ここでは溶存酸素の分析を行います。奥では採水に使われた大量のサンプルビンを洗浄しています。
セミドライラボ
上甲板にある実験室。ここではフロン・pH・アルカリ度の分析を行います。多くの装置を持ち込んでいるため、実験室の中が分析装置で一杯になっています。