防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト

防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト

研究成果

2.地震防災情報創成研究
(d) 臨時情報発表時の人々の行動意思決定に資する情報の提供

《トピック紹介》
[研究1]『逃げトレView』の開発

突如起こる大地震。その後やって来る津波から自分たちは逃げきることができるのか。海岸部にお住まいの方を中心に不安に思っている方も多いでしょう。こうした思いに少しでもお応えするため、私たちの研究チームは、今から5年度前、住民一人一人について、津波からの避難がどの程度容易か困難かを評価・診断するためのツールとして、避難訓練支援アプリ『逃げトレ』(図1)を開発しました。

図1 津波避難訓練支援ルーツ「逃げトレ」の概要

本プロジェクトでは、南海トラフ地震に関する臨時情報をより有効に活用することを意識して、自治体や地域コミュニティで、より現実的かつ効果的に避難戦略を検討するために、個人単位の「点」としての分析だけではなく(図2)、自治体や地域という「面」を意識して(図3)、避難の可能性を評価・診断するための新たなツール『逃げトレView』を開発しています。『逃げトレView』により、『逃げトレ』を用いて実施した実際の避難訓練データを用いて、「面」に関する現状分析を行うことができます。さらに、訓練で得られたデータを基礎データとして活用しながら、そこに複数の津波想定と複数の避難行動パターンを組み合わせて、「こう逃げれば、うまくいきそうか」、「より大きな津波が来ても今の逃げ方で大丈夫か」といったシミュレーションを行うことも可能です。

図2 避難訓練の結果を「逃げトレView」で個人ごとに表示した画面(イメージ)
図3 避難訓練の結果をもとに「逃げトレView」で地域ごとの避難の可能性を表示した画面(イメージ)

なお、『逃げトレView』を含む研究開発の全体構想を図4として示しておきます。

図4 「逃げトレView」を含む「逃げトレ」サービスの全体構想
[研究2]避難可能なまちをつくる

避難困難区域における避難を可能にするまちづくり方策を明らかにするため、以下の取り組みをおこなっています。

1)津波防災まちづくりのツールとして開発された「逃げ地図」を用いた「避難可能なまち」の検討
「逃げ地図ワークショップ」の試行とワークショップ開催支援システムの構築
2)臨時情報発令時の行政対応についての検討
南海トラフ地震臨時情報とは?-串本町職員として知っておくべきことー

南海トラフ地震臨時情報とは?:南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合に発表される情報

南海トラフ沿いでの異常な現象
  • 南海トラフ地震の想定震源域・その周辺でM6.8以上の地震<可能性大>
  • プレート境界内でゆっくりすべり
例えば、令和4年1月22日の日向灘の地震(M6.6)
発表される情報
南海トラフ地震臨時情報(調査中): 30分後
「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」
M8
M7、ゆっくりすべり
南海トラフ地震 臨時情報(巨大地震警戒)
南海トラフ地震 臨時情報(巨大地震警戒)
南海トラフ地震 臨時情報(巨大地震警戒)

そもそも、なぜこういった情報が出されるのか

  • 東海地震予知の取り組みがあった<東海地震に関連する調査情報(臨時)→ 東海地震注意情報 → 東海地震予知情報> →「現在の科学的知見からは、確度の高い地震の予測は難しい」南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性について(報告)(平成29年8月25日公表)
  • 時間差発生→東南海地震が発生したらどうする? 安政南海(1854) 32時間後、昭和南海(1944、1946)2年後
中央防災会議 防災対策実行会議南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキングループ
平成29年9月