Chikyu Report
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「ちきゅう」のライザー掘削に用いる噴出防止装置(BOP)2012年08月08日

「ライザー掘削システム」は、地球深部探査船「ちきゅう」の大きな特徴の一つと言えるでしょう。ライザー掘削を行うにあたり、BOPと呼ばれる噴出防止装置は非常に重要な機能的役割を果たす装置で、掘削に用いる循環泥水の輸送ポンプや掘削孔の中の圧力の制御、そして万が一の深部流体やガスの噴出を防ぐ機能を持っています。


「ちきゅう」船上のムーンプールから海底に向けて降下をはじめる
ライザー掘削用の噴出防止装置(BOP)


BOPの重さは約380トン、高さは14.5メートルもあります(写真をご覧ください)。BOPはライザー掘削専用の複数のパイプ(ライザーパイプ)に連結されるのですが、そのライザーパイプも非常に大きく、一つの長さが約27メートル、直径が50 cmもあります。そのライザーパイプを一本ずつ船上のドリルフロアで連結させ、水深1180メートルの海底に設置された掘削孔の入り口(ウェルヘッド)にBOPをランディングさせます。BOPとライザーパイプを1180メートルの海底まで届かせると、その総重量は1000トンを超えるでしょう。それは、それだけ「ちきゅう」が大きく、それを支える機能が備わっているということでもあります。

八戸港を出航してから現在まで、「ちきゅう」の掘削チームはBOPの設置および稼働にむけた準備に大忙しです。BOPを海底に運ぶ前に、安全性や圧力制御などの機能テストを行わなければなりません。これらの準備は、この航海で実施予定の全てのオペレーションに関わる重要な部分です。これらの作業を深海底でやるのは大変難しいことなので、掘削を始める前に全ての準備を船上で行う必要があるのです。今日、ほぼ全てのBOPテストが終了し、ボトムのライザーパイプが連結されたBOPがムーンプールに運ばれました。


「ちきゅう」のムーンプールから深海底に向けて降下


これらの準備のために、今のところ当初のオペレーションプランから6日程度遅れています。しかし、10-5/8インチのドリルビットを使って海底下1220メートルまで掘削する計画を、17-1/2インチと大きめのドリルビットに変更することで、掘削スピードを早め、数日間の遅れを取り戻せる予定です。
(全掘削工程はこちらをhttp://www.jamstec.go.jp/chikyu/exp337/j/schedule.html



乗船研究チームの準備も万全で、船上にサンプルがあがってくるのを、今か今かと待ちわびています。海底下1220メートルまでの最初の掘削フェーズでは、新しく導入されたガスの化学分析ラボを使って、ライザー掘削に用いられる循環泥水中の天然ガスの詳細なオンタイム・オンライン地球化学分析を計画しています。さらに、ライザー掘削の循環泥水や泥水に含まれるカッティングスを用いて、堆積学・微化石による古環境学・古生物・地球化学・微生物学などの様々な分野の研究が展開されます。ライザー掘削に関係するこれらの多くの分析は、1960年代から半世紀続く海洋科学掘削においても実は初めての試みなのです。

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研究者がヘリで「ちきゅう」に乗船2012年07月31日

遂にExpedition 337の乗船研究者が世界各地から八戸市に集結しました。「ちきゅう」は完全な「ドライシップ」なので、一度乗船すると、2ヶ月後に下船するまでアルコールは飲めません。昨夜は、いろいろと夢や家族のことなどを語りながら、地元の新鮮なシーフードやビール/日本酒などを楽しみました。乗船前のひととき、八戸市の暖かい歓迎と期待、サポートに感謝します。

今日7月31日の天気は快晴、絶好のヘリのフライト日和でした。多くの研究者にとってヘリコプターでの「ちきゅう」乗船は初めての経験ということもあり、この航海でエキサイティングなイベントの一つでした。乗船して改めて「ちきゅう」の巨大さに驚いているようですが、驚くのはまだまだこれからです。

船上では、ライザー掘削の準備が比較的順調に進んでいます。掘削チームは、既に海底下の掘削孔からキャップを回収し、海上での定点保持のための音響測位装置(トランスポンダ)の設置を終えました。本日から、研究チームも、さっそくキックオフミーティングを行い、最初のコア試料があがってくるのに備えて準備をはじめたいと思います。

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出港2012年07月26日

地球深部探査船「ちきゅう」は、本日八戸港を出港し、約80キロメートル沖合の調査サイトに向かいました。多くの乗船研究者は、7月31日にヘリコプターで「ちきゅう」に乗船することになっています。船上では、掘削チームが、すでにライザー掘削のために噴出防止装置(BOP)や無人探査機(ROV)、音響測位装置(トランスポンダ)やライザーパイプなど様々な準備を進めています。船上ラボの技術支援員も分析機器などの準備に余念がありません。

わたしとKai-Uwe Hinrichsの共同首席研究者、研究支援統括(EPM)の久保さん、そしてキュレーターは、乗船研究者や陸上研究者からの多くのサンプル・分析リクエストに目を通し、「ちきゅう」船上のサンプル採取の方法や掘削コア試料の分析の流れについて計画を練っています。数日後に、研究者チームのメンバーと共に「ちきゅう」に乗船するのが大変楽しみです。

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