faq
Q. なぜ南海トラフを掘るのですか?
A.

巨大地震・津波が発生する場所は世界各地にありますが、南海トラフは他の場所にはない大きな利点があります。それは、1000年以上にわたる巨大地震の記録が古文書により残されていること。そして、様々な事前調査によって、巨大地震が発生してきた地震断層が、掘削によって到達可能な深度に存在すると考えられていること。巨大地震が繰り返し発生するメカニズムを解明するために、これまでに発生した地震の年代が明確になっていることと、その地震が発生した岩石の直接採取が可能であることの2点を兼ね備えた場所は他にありません。さらに、都市部からのアクセスが良いこと。数ヶ月におよぶライザー掘削プロジェクトでは、物資の補給や人員交代などの輸送計画も大きな問題になってきます。その点、南海トラフはヘリコプターや補給船のアクセスが良く補給計画が比較的容易となります。

Q. 南海トラフ地震発生帯掘削計画(NanTroSEIZEプロジェクト)とはどんなプロジェクトですか?
A.

南海トラフ地震発生帯掘削計画は国際深海科学掘削の一環として、2003年に提出された掘削提案書から始まった国際プロジェクトです。大陸プレートに海洋プレートが沈み込むこの海域で、沈み込み帯の浅部から深部までの測線に沿って多数の掘削を行い、地質試料の採取と検層データの取得、および長期孔内計測機器の設置を行う壮大なプロジェクトです。

Q. なぜ掘らなければならないのですか?他の方法はないのですか?
A.

海底下の地層の様子を観測するには、音波探査などの方法があります。こういった手法は、広範囲の概要を掴むためには有効ですが、詳細な検討のためには実際の試料による裏付けが不可欠となります。また、陸上露頭での地震研究は、実際の地層の構造を目視でき、試料採取も容易である点で重要です。しかしながら、その多くは、”かつて”動いた地震の化石といえるもので、今現在活動している地震帯ではありません。その点で、海底下を掘削し、現在の地震発生帯である地層の直接採取・検層は、地震発生メカニズムの解明のために必要不可欠であると言えます。

Q. 研究者は海に潜るのですか?船上では何やってるのですか?
A.

いいえ。研究者は海に潜りません。掘削地点の水深は約2000 mで、海底面や海底に設置する掘削機器の状態は無人水中ロボットをつかって、技術者が確認します(水中カメラの映像は、船内のCATVで乗船中の誰もがみることができます)。「ちきゅう」では掘削によって様々なデータや地質試料が得られます。「ちきゅう」にはそのデータや試料を分析するための様々な機器を備えた実験室があり、また、分析などを支援するラボテクニシャンが乗船しています。研究者たちは12時間交代の24時間シフトを組み、次々に上がってくるデータや試料を分析し、持ち帰り試料の採取を行います。こうした作業を通じてお互いに情報交換しながら一次結果をまとめ、航海終了後の詳細研究に向けた計画を練ったり、共同研究などの計画を立てたりします。

Q. 今回の航海のオペレーションにはどのくらいの時間がかかりますか?
A.

現在深度の海底下3000mから掘進を開始し、5ヶ月ちょっとかかる見込みです。このオペレーションの科学目標を達成するための深度はライザー掘削システムを用いる必要があります。そのため、実際に掘り進める前に、高さ14.5m、重さ約380トンの暴噴防止装置を海底面の掘削孔に設置し、ライザーパイプで船と海底面を接続する必要があります。この作業に1ヶ月ほどかかります。掘削が始まると、良好な孔内状況では、掘削同時検層で1日でだいたい200-300m掘り進んでいけます。しかし、このままどんどん掘っていくわけには行きません。掘った後の孔内はそのままにしていくと周囲の地層圧力によって崩れてしまうので、ある程度掘り進んだら保護用のケーシングパイプを設置します。今回はこれを3回繰り返して最終目標深度を狙います。そのほか、荒天等による作業の延期も必要日数に見込んでいます。この海域は、黒潮流軸であり、夏から秋は台風の通り道、冬は寒冷前線の通り道にあたる、オペレーションにとっては厳しい環境です。オペレーションの計画はこれらを全てを見積もってたてられています。