文部科学省委託事業

東海・東南海・南海地震の連動性評価研究

地震に強い社会をめざして。防災分野が連携して、東海・東南海・南海地震の連動発生を評価します。

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南海トラフにおける海底地殻変動観測結果と海底基準点の増設

海上保安庁海洋情報部では、東京大学生産技術研究所の技術協力の下、GPS /音響結合方式による海底 地殻変動観測の技術開発及び海底基準点の展開を行っており、主に日本海溝及び南海トラフ沿いの陸側に 海底基準点を十数点設置し、測量船による繰り返し観測を行ってきた。

これまでに、宮城県沖、福島県沖等において海洋プレートの沈み込みに伴う定常的な地殻変動や、2005 年の宮城県沖の地震(M7.2)の地震発生からひずみの蓄積開始に至るまでの過程を海底の動きとして捉え ることに成功したほか、2011 年東北地方太平洋沖地震(M9.0)では、震央近傍の海底基準点において最大 24m の水平変動を検出した(Sato et al., 2011 など)。

2008 年には、中型測量船「明洋」(550 トン) の 船底に音響トランスデューサ(送受波器)を常設 し、船底トランスデューサによる航走観測を開始 した。さらに、2010 年には大型測量船「拓洋」、 2012 年には中型測量船「海洋」にも海底地殻変 動観測装置を常設し、3 隻体制での観測が可能と なった。

本発表では、これまでに得られた南海トラフ沿 いに設置している海底基準点における観測結果と 2011 年度に増設した海底基準点について報告する。

海底地殻変動観測の概要
海底地殻変動観測の概要
海底に設置された海底局
海底に設置された海底局
(JAMSTEC 撮影)

解析手法

局位置解析では、エポック間で4 台の海底局の 相対位置関係が不変であるとして、海底局間の相 対位置関係と、エポックごとの海底局の重心位置 (海底基準点の位置)の変動量を求めた(藤田ほか, 2005; 松本ほか, 2008)。

この地域では、2004 年の紀伊半島南東沖地震 (M7.4, M6.9) 及び2011 年の東北地方太平洋沖地震 (M9.0) の影響を受けているため、2006 年から2011 年3 月までのデータを用いて移動速度を求めた。

海底局位置の推定パラメータの模式図
海底局位置の推定パラメータの模式図

観測結果(ユーラシアプレートに対する動き)

 

南海トラフにおける海底地殻変動観測結果
南海トラフにおける海底地殻変動観測結果
各海底基準点における観測結果プロット(東海沖1・東海沖2・熊野灘1)
各海底基準点における観測結果プロット(東海沖1・東海沖2・熊野灘1)
各海底基準点における観測結果プロット(熊野灘3・潮岬沖・室戸沖2)
各海底基準点における観測結果プロット(熊野灘3・潮岬沖・室戸沖2)

他のデータとの比較

紀伊半島先端部および熊野灘のカップリングが弱い領域と、海底地殻変動観測から 求められた移動速度が小さい領域が一致している傾向がある。

一方、室戸岬沖での高カップリング率・すべり欠損分布は海底地殻変動観測からは説明できない。 
→ 陸上のGPSによる地殻変動観測のみでは、海域のシミュレーションには不十分であり、海域における地殻変動観測のデータをシミュレーションに入れることにより結果が変化する可能性

また、浅部超低周波地震領域と移動速度が小さい領域、および推定アスペリティ領域と移動速度が大きい領域とが一致している。

1998-2000 年のGEONET データ等からもとめたすべり欠損速度分布から推定したプレートカップリング率分布
1998-2000 年のGEONET データ等からもとめたすべり欠損速度分布から推定したプレートカップリング率分布 (小林・橋本・田部井、2006)に加筆
海底地殻変動観測結果と、 過去の東海・南海地震の短周期地震波発生域から推定される アスペリティ分布(
海底地殻変動観測結果と、 過去の東海・南海地震の短周期地震波発生域から推定される アスペリティ分布(武村・神田、2006)
1996-2000 年のGEONET データからもとめたすべり欠損速度、 深部低周波微動、南海・東南海地震の津波波源域
1996-2000 年のGEONET データからもとめたすべり欠損速度、 深部低周波微動、南海・東南海地震の津波波源域 (橋本・鷺谷・田部井、2009)に加筆

海底基準点の増設

海上保安庁では、南海トラフに新たに2011 年11 月に1 か所、2012 年 1 月に8 か所、海底基準点を増設した。これにより、想定される" 南海 トラフの巨大地震" の震源域全域がカバーされ、今後の海底地殻変動観 測により、プレート間の固着状況についての知見が得られると期待される。

増設された海底基準点
増設された海底基準点