JAMSTEC
平成9年8月28日
海洋科学技術センター

「大村湾の貧酸素水塊発生制御技術の研究開発」の開始について


海洋科学技術センター(理事長 平野 拓也)はこの程長崎県と標記研究開発について共同研究を開始することとした。

1.共同研究の理由および目的

大村湾は長崎県の中で水産、観光および周辺産業に大きな関わりを持っているため、大村湾を常に正常に保つことは長崎県の強い要望であった。 近年、大村湾奥部の都市化が進んだことにより、水質汚濁が環境基準(COD注1)で2ppm)を越える状況(4から5ppm)が継続し、夏期には貧酸素水塊注2)の発生が恒常化している。 貧酸素水塊は、水産魚介類の生息を阻害し、また、赤潮を引き起こすもとになる栄養分を海底部から溶出・供給させる原因ともなる。
このような状況において、長崎県はかねてより、大村湾水質管理計画によりCOD負荷量の総量抑制に努め、貧酸素水塊や赤潮の被害を軽減するための技術開発を進めてきたが、湾全体の総合的浄化戦略の構築が緊急課題となっている。 このため、長崎県から、流動と撹拌を利用した新しい貧酸素水塊制御技術について、海洋科学技術センターと共同でその研究開発を行いたいとの提案があり、海洋科学技術センターは、これまで内湾環境改良技術や海底クリーンシステムの技術開発を実施してきており、海水流動・環境のモニタリングや応用研究の蓄積があることから、共同で研究を進めることとした。
本研究では、大村湾における貧酸素水塊の発生メカニズムを解明するとともに、その発生を制御する技術を開発し、大村湾浄化戦略構築の基礎を確立することを目的とする。

2.共同研究先

    長崎県
    (研究機関)
      長崎県工業技術センター
      長崎県衛生公害研究所
      長崎県総合水産試験場

3.研究内容

本研究は平成9年8月から平成11年度にかけて実施する予定である。 平成9年度から10年度にかけては、大村湾の浄化に係わる環境の実体把握のために、大村湾に流れ込む汚濁物質の流入量を把握し、貧酸素水塊の調査を行いそこでの海底堆積物の酸素消費量のメカニズムおよび貧酸素水塊の挙動についての調査を行う。あわせて、流動・撹拌装置の設置予定海域での環境モニタリングを行う。
また、海底直上の貧酸素水塊を中層に湧昇させて混合する流動・撹拌装置のプロトタイプを開発し、水槽試験、海域試験を経て実機モデルを作成、最終年度に実海域試験を実施し、貧酸素水塊の発生制御に関する性能評価を行う。
さらに大村湾の生態系および水質汚濁のモデルを研究開発し、大村湾浄化戦略の総合評価を行う。

注1)COD:
Chemical Oxygen Demand 化学的酸素要求量(水中有機物を化学的に酸化するのに必要な酸素量で水質汚濁の指標となる。)
注2)貧酸素水塊:
水中の溶存酸素量が2.5ppm以下となった海水の塊(通常魚介類が生息するためには6から7ppm)で、水温や河川水等の影響により海水の密度差が大きいとき、底層部に発生しやすい。

[本件に係わる問い合わせ先]

    海洋科学技術センター
    企画部 計画管理課 古山 TEL: 0468-67-3824
    総務部 普及・広報室 杉山 TEL: 0468-67-5502


大村湾地図へ:星印は流動・撹拌装置設置予定位置