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深海観測装置「ディープ・トウ」

「ディープ・トウ」は、最大4,000mの深度までの海底の地形調査や海底面の 観察の概略調査のため、ケーブルの先端にソーナー(音波を用いた探査機器) 又はカメラを搭載したものを取り付け、船舶により低速で曳航して使用する ものであり、本体自身は動力源を持たない観測機器である。


「カメラ曳航体」調査概念図

深海観測装置「ディープ・トウ」の特徴

  • 深海観測装置「ディープ・トウ」 とは、カメラやソーナーを装備した曳航体を船から 吊り降ろし、海底に近づけたまま1〜2ノット(0.5〜1m/s)の低速で曳航し て海底の調査を行うシステムです。このディープ・トウによって、ある限られた範囲 の深海底の地形や底質の変化や生物などの本格的調査である前段階の概査を行う システムです。

  • 現在、観測を主とした深海域の探査手法には、潜水調査船( 「しんかい2000」 「しんかい6500」)、深海探査機( 「ドルフィン−3K」や 「かいこう」)、 そしてディープ・トウなどがあります。ディープ・トウは広い意味では 深海探査機ですが、 細くて軽量のケーブルを使用しているため、 調査可能海域が大きく広域調査に適しています。海洋科学技術センターでは、 1977年からディープ・トウの開発をすすめ大きな成果を上げています。 その主な特徴は、直径17m/m、全長4,500mの鉄線鎧装された曳航ケーブルを 通じてソーナー曳航の時は、海底の底質や地形の状況などの概査を行うことができます。 また、カメラ曳航の時は、深海底のカラービデオ画像、写真撮影などができます。

  • 今回、ナホトカ号の沈没船尾部の調査に際しては、海上保安庁水路部の測量船「海洋」 による調査結果及び海面の油湧出海域の情報等を総合的に検討し、まず、 ディープ・トウの ソーナー曳航体 を用いて沈没した船尾部の位置を探索すること になりました。今回のように探索対象物の 位置が確定していない場合は、テレビカメラのように、深海で 視認出来る距離が短く、また視野もせまい装置を最初から用いるのではなく、 長い距離から広範囲の調査が可能な音波探査機器の一種であるソーナーによる 広域調査を実施して、得られた音響画像を解析することにより、 音響反応の大きなポイントすなわち、目標である沈没船と疑わしい候補地点をいくつかに 絞り込む必要があります。 ソナー探査装置を有する深海調査機器の一日の調査距離を考えた場合、 ソーナーを用いた広域調査 にはソーナー曳航体を用いることが最も適しています。

  • 次に沈船であるかどうかの確認は音響画像からは判断が難しいので、候補地点に テレビカメラを降ろして視認により沈船かどうかの確認をする必要があります。 その場合、 沈船の視認調査にはカメラ 曳航体を用いることが最も適しています。

  • 以上のことから、海洋科学技術センターでは、ナホトカ号の沈没船尾部の 調査については、まずは深海観測装置「ディープ・トウ」 を用いて 探索することになりました。


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