JAMSTEC
平成10年7月10日
海洋科学技術センター


無人探査機「かいこう」の復旧について


  1. 経緯(別紙-1別紙-2

    海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)の無人探査機「かいこう」は、マリアナ 海溝チャレンジャー海淵を調査中、平成10年5月16日、23日及び25日に、ビ ークル油圧系統の圧力低下、一次ケーブルの巻上げ速度低下、及び光通信機能の低下 がそれぞれ発生した。油圧及び光通信機能については、現場における応急措置により 機能を回復したが、一次ケーブル巻上げ速度低下については、25日に応急処置を施 して行った潜航で確認したが機能を回復することができなかったため、作業を中止し 帰港した。

  2. 原因及び対策

    各々のトラブルについての原因と再発防止対策は、以下のとおりである。

    (1)ビークル油圧系統の圧力低下(別紙-3

      事象発生直後に圧力調整弁ユニット内のアンロード弁用の水中コネクターを予備品と 交換したところ正常に復帰した。また、帰港後、交換前のコネクターの加圧試験を実 施したところ接触不良を起こした。このため、原因は、深海という高圧下で水中コネ クターが接触不良を起こしたためであると判明した。なお、故障したコネクターは今 回が初潜航であった。
      したがって、当面の対策としては、水中コネクターを製造メーカーから受領する際に は加圧試験中に電気的確認(接触不良の有無)(試験圧力:1220kgf/cm2≒最大使用深 度相当圧力:1160kgf/cm2×1.05)を行う。また、恒久的な対策としては均圧型コネク タ付き油漬け電線による信頼性の向上を目指した対策を図る。

    (2)一次ケーブルの巻上げ速度低下(別紙-4

      巻上げ速度低下は、船上への「かいこう」揚収装置であるトラクションウインチの押 えローラが破損し、一次ケーブルがスリップを起こしたものである。また、押えロー ラが破損した原因は、繰り返し荷重による疲労であることが、破損したローラの断面 形状から明らかとなった。なお、当該押えローラのこれまでのケーブル通過距離は 420kmであった。したがって、当面の対策としては、押えローラの材料を疲労に強いも のに変更するとともに、予備品を用意してケーブル通過距離150km毎に交換を行う。 また、恒久的な対策としては、押えローラの複数化による信頼性の向上を目指した対 策を図る。

    (3)光通信機能の低下(別紙-5,別紙-6

      低下の原因は、事象発生直後の船上での調査により、ケーブルストアウインチと一 次ケーブルを接続している光ロータリージョイントのケーブルコネクターが緩んでい たためであることが確認された。
      したがって、今後の対策としては、外力の影響を受ける箇所にテーピングによる緩み 止めを施すとともに、整備時の光コネクター取扱要領を見直し、コネクターの締め付 け確認を徹底する。

  3. 今後の予定

    「かいこう」は、上記処置の状況を確認するため、平成10年7月13日〜7月18 日の期間で房総南東沖伊豆・小笠原海溝(9,200m海域)にて確認潜航を実施する予 定である。
    その後、8月9日までの期間、三陸沖日本海溝(6,000〜7,500m)にて調査活動を行う。