平成11年6月28日
海洋科学技術センター
流動撹拌システムの性能評価試験開始に伴う
報道関係者への公開について
海洋科学技術センター(理事長 平野 拓也)は、平成9年度より長崎県と共同で「大村湾の貧酸素水塊発生抑制技術の研究開発」を進めてまいりました。これまで大村湾の海域特性を把握するための基礎調査を実施し、また貧酸素水塊の発生を抑制する基礎技術として流動撹拌システムの研究開発を行ってまいりました。このたび流動撹拌システムの性能評価試験を7月8日(木)より開始するに当たり、関係者各位にこの研究開発の目的と意義、また本システムの概要をご理解いただくために、現地説明会を開催いたします。
つきましては、下記により報道関係者へ本システムを公開いたしますのでお知らせいたします。
記
1.流動撹拌システムの説明及び公開
(1)日 時 :平成11年7月8日(木)午後1時〜 2時30分
(なお、午後2時30分から旅館浜荘(別添地図参照)にて地元関係者への現地説明会を行います。)
(2)集合場所:調査基地(別添地図参照:注)、午後1時集合
住所 長崎県西彼杵郡琴海町役場裏
池田倉庫前
(3)取材内容:大村湾に設置している流動撹拌システム
(4)その他
a.取材希望者が多数の場合には、調査基地のスペースや同装置までの移動に小型船を使う都合上、取材者をグループ分けさ せていただき、グループごとに取材をしていただくこともありますので、予めご了承ください。
b.移動に使用する船および同装置内ではライフジャケットとヘルメットを用意していますので必ず着用願います。
c.ただし、「流動撹拌システム」の取材は海の状況等により中止する場合がございます。
注)調査基地においては計測機器の整備及び保管を行います。
2.案内先
科学技術記者クラブ、長崎県政記者クラブ、横須賀市政記者クラブ
地域共同研究
「大村湾の貧酸素水塊発生抑制技術の研究開発」について
1.研究目的
大村湾は外海からは二重に閉鎖された内湾であること、また近年、大村湾奥部の都市化が進んだことにより、貧酸素水塊や赤潮の発生が恒常化しており、この地域共同研究では、大村湾における貧酸素水塊の発生メカニズムを解明するとともに、その発生を抑制する技術を研究開発し、大村湾浄化戦略構築の基礎とすることを目的としました。
この研究開発では高温・低塩・富酸素・貧栄養の上層海水と低温・高塩・貧酸素・富栄養の底層海水を十分混合させる流動撹拌システムを研究開発しています。
2.研究内容
大村湾全体の海域特性の調査研究およびプロセス研究を実施するとともに、流動撹拌システム研究開発の基礎データを得るため性能評価試験を実施する予定です。なお、調査研究は長崎県工業技術センター、長崎県総合水産試験場、長崎県衛生公害研究所、長崎大学、および大村湾南部漁業協同組合などの協力により進めます。
2.1 大村湾海域特性調査
(1)大村湾富栄養化実態調査
貧酸素水塊形成による栄養塩類の溶出および富栄養化の状況を解明するため、大村湾の水質現況および貧酸素水塊の発生状況を調査研究します。
(2)大村湾貧酸素水塊の広域分布調査
貧酸素水塊の発生メカニズムを解明するため、大村湾全域において溶存酸素量を調査します。
(3)大村湾の水質汚濁モデリング研究
栄養塩の溶出速度と沈降有機物量を評価するための、湾央部の定点 (Stn
C:別図参照)において調査研究します。
(4)環境モニタリング
流動撹拌システムを設置している定点(Stn S)において、気象(風向風速、気温、日射量)、水温分布、海底における水温、塩分、溶存酸素量、流向流速を連続的にモニタリングします。なお、この計測データは長崎県工業技術センターに転送され、収録・解析されます。
2.2 流動撹拌システム性能評価試験
流動撹拌システムは夏季の成層化によって分離された表層と底層の海水を効果的に撹拌混合させ、密度躍層付近における水平拡 散により基礎生産を促進させるとともに、底層海水の流動化により底質改善を図ることを目標としています。このため流動撹拌シ ステムによる表層・底層海水の混合拡散と底層海水の流動による底質改善に関する調査研究を実施します。
(1)流動撹拌装置近傍の流動場調査
・流動撹拌装置を設置後、表層海水のポンプ送水量、底層海水の吸引量、海水の吐出量を計測します。なお、吸入口と吐出口で はダイバーが直読式流向流速計にて流速分布を計測します。
・混合海水の移流拡散状況を流向流速計および多項目水質計により計測します。
・流動撹拌装置は表層海水をポンプにより3㎥/分で送水し、6本のノズルから噴出させることにより底層海水を15〜30㎥/分 で吸引し、混合した海水を吐出させる装置です。従って、装置近傍の海底直上水を流動させ、貧酸素水化を抑制することが期 待できます。
(2)流動撹拌システムの環境影響調査
・混合海水の移流拡散による水質の変化を多項目水質計(水温、塩分、溶存酸素量、クロロフィルa、濁度、光合成有効放射、 pH)により計測します。また、プランクトン組成の変化を採水分析します。
・流動撹拌システムの海水流動による密度躍層や鉛直混合など海域構造への影響を調査する。多項目水質計による随時計測およ びミニ海中エレベータによる連続計測を行います。
・海底直上水の吸引流動による底質の変化を調査します。海底直上水を採水し、栄養塩、化学的酸素要求量、浮游物質を分析し ます。また底泥の酸化還元電位および硫化水素を計測します。
・流動撹拌システムが海底堆積物の酸素消費に及ぼす影響をみるため、各季節に採泥し、酸素消費量を計測するとともに、マク ロベントスや大型底生生物の生物相に及ぼす影響を調査します。また、流動撹拌システム近傍の海底にベンシックチャンバー (500Lパンライト、非透過光性)を設置し、溶存酸素の消費速度と栄養塩の溶出を計測します。