平成11年7月24日 
                             科 学 技 術 庁 
                             海洋科学技術センター

                             運   輸   省
 

         「ナホトカ号」沈没部再調査の結果について
 科学技術庁、海洋科学技術センター及び運輸省は、平成9年1月2日に島根県隠岐諸
島の北東約140km、水深約2500mの海域(北緯
37度14.4分、東経134度24.9分)
に沈没したロシア船籍タンカー「ナホトカ号」の船尾側沈没部について、昨年3月の潜
航調査時、沈没部船体近傍に設置した鋼材試験片の回収及び事故後約2年半が経過した
沈没部船体からの重油漏出状況を把握することを目的に、海洋科学技術センターの深海
探査機「ドルフィン-3K」及び支援母船「なつしま」を用いて、7月21日(水)〜
22日(木)に潜航調査を実施いたしました。


 今回の潜航調査の結果、鋼材試験片については、回収できました(写真1)。回収後 は、運輸省船舶技術研究所にて腐食速度を測定し、今後のナホトカ号船体鋼板腐食の進 行を予測することとしています。
 また、重油の漏出状況については、前々回(平成9年2月)、前回(平成10年3月) の調査時に油の付着・漏出が確認された部分において漏出が確認されたものの、漏出量 全体としては、昨年に比べてもかなり減少していることが確認されました。
 なお、「ナホトカ号」沈没部船体の位置、姿勢、形状については、特段の変化はあり ませんでした。

本件問い合わせ先:
科学技術庁海洋地球課 田村、稲田
電話 03 - 3580 - 6561 海洋科学技術センター 研究業務部海務課 段野
    電話 0468 - 67 - 5522
総務部普及・広報課 他谷池川     電話 0468 - 67 - 3700
      運輸省運輸政策局技術安全課 長太     電話 03 - 3580 - 5120      詳細は以下の通りです。
 今回の潜航においても、昨年の調査と同様に沈没部船体の右舷側手すりに沿って、右
舷側の3番、4番タンク及び中央の6番、7番、8番、9番タンクの甲板面の調査を行
いました。(図1:1、2回目調査コース 図2:タンク位置及び撮影箇所)

 今回の調査では、船体の状況をより明瞭に把握することができ、特に今まで観測され
ていなかった中央6、7番タンク・マンホールを調査することができました。

 その結果、重油の漏出量については、昨年に比べてもかなり減少していることが観察
されました。以下に、各々の漏出箇所の状況を示します。

1.前回の調査箇所の状況
(1) 右舷4番タンク手すり下亀裂部からの漏出については、引き続き漏出認められた。
  しかし、漏出は昨年と比較して相当減少していた。(写真2
-1)
   なお、その下部近傍における破断部分においても微量の油漏出が確認された。
(2) 右舷4番タンク・マンホールからの漏出については、ハッチのすきまにわずかな
  油の付着を前回も確認しているが、漏出は見られなかった。(写真3
-1)
(3) 船体中央付近の手すり部の油の付着については、新たな油の付着は見られず、過
  去の付着は消滅しつつあった。(写真4
-1)
(4) 船橋下部の中央9番タンク部付近の油の付着については、新たな油の付着は見ら
  れず、過去の付着は消滅しつつあった。(写真5
-1)
(5) 中央8番タンク・マンホールについては、ハッチのすきまにわずかな油の付着が
  確認されたが、漏出は見られなかった。

(6) 右舷3番タンク・マンホール及びその付近については、ハッチのすきまにわずか
  な油の付着を前回も確認しているが、漏出は見られなかった。また、マンホールハッ
  チ近辺からは、ごく微量ではあるが油の漏出を確認した。(写真6
-1)
(7) 船体外板の数カ所に前回も見られた防蝕亜鉛の腐食後の化合物と思われる白い析
  出物が確認された。(写真7
-1)

2.今回新たに観察されたもの   中央6番タンク及び中央7番タンクについては、ハッチの周面に沿って油漏出の
 痕跡と見られる古い油の付着が確認された。また、わずかながら油の付着が確認で
 きたが、漏出は見られなかった。(写真8)


3.船体の状況
  船体の位置、姿勢、形状については、特段の変化は観察されなかった。また今   回初めて船尾から左舷側の状況を見たところ、船体左舷及び船橋左舷部分が海底に   接地していることが判り、静止状態で安定しているものと推定された。(写真9  -1)
4.その他
船上からの監視により、船舶周辺海域において銀白色の薄い油膜が点在している
ことが確認された。